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激励の言葉が欲しい気分のとき、いつも味方でいてくれる人脈の広い楽観的なメンターほど適切な人物はいない。頼りがいのあるその肩こそ書籍「Masters of Scale(スケールの達人)」が演じようとしている役どころだ。

LinkedIn(リンクトイン)の共同ファウンダーにしてGreylock(グレイロック)のパートナー、Reid Hoffman(リード・ホフマン)氏の人気ポッドキャストから生まれ、ホフマン氏が彼のポッドキャストの総括責任者であるJune Cohen(ジュン・コーエン)氏、Deron Triff(デロン・トリフ)氏の2人と共同執筆した新著が今週出版された。さまざまなエピソードとすぐに使えるヒントが散りばめられた本書の強みは、登場する起業家たちが実に多様であることだ。テック界のリーダーにとどまらず、本書はSpanx(スパンクス)のファウンダー、Sara Blakely(サラ・ブレイクリー)氏、Starbucks(スターバックス)のファンダー、Howard Schultz(ハワード・シュルツ)氏、およびUnion Square Hospital Group(ユニオンスクエア病院グループ)のCEO、Daniel Meyer(ダニエル・マイヤー)氏からも教訓を学ぶ。どのすぐれたメンターとも同じく、本書は現実的だ。著者はあなたがまだ、Bumble(バンブル)のWhitney Wolfe(ホイットニー・ウルフ)やAirbnb(エアビーアンドビー)のBrian Chesky(ブライアン・チェスキー)でないとわかっている。それでも、リーダーたちから広く適用できる教訓を引き出し、読者が共感を得られるようにすることができる。

メディアはこの本の主題ではないが、「Master of Scale」は、私がファンダーをインタビューする際の視点をすでに変えている。Tristan Walker(トリスタン・ウォーカー)氏は、私がファウンダーに質問する時、新しいラウンドで調達した資金の使い道よりも、彼ら自身のことや、彼らの最も物議を醸す信念について聞きたくなるように仕向けた。地理学者のAndrés Ruzo(アンドレス・ルゾ)氏の言葉からは、理に適ったスタートアップには読みやすい話にはなるかもしれないが、世界を破壊する大ヒットにはならないかもしれないことを気づかせてくれる。つまり、一見ばかばかしい野望ばかりのスタートアップを追いかけろ、ということだ。なぜなら最高の一歩や物語はそこで起きるから。そして私は、ファウンダーを見分ける最高のリトマス試験紙は、目の前にある苦難について彼らが誠実かつ謙虚に話そうとするかどうかである、という信念を本書で確認した。

心地よい物語を読むたびに、私はパンデミックへの言及を待った。パンデミックがスターアップに与える影響についてのアドバイスは、ピボットの技法に関する一章にほぼまとめられている。パンデミックへの対処方法のアドバイスを、ベンチャーキャピタル、資金調達、市場などさまざまな分野にちりばめる代わりに、本書はこの激変への言及を最小限に絞った。この選択によって、アドバイスの新鮮さは維持されるだろう。とはいえ、スタートアップ世界の醜い部分についてあまり語らない本書の選択には、一種のアンバランスさを感じた。もっと対立問題、たとえばWeWork(ウィワーク)のAdam Neumann(アダム・ニューマン)氏がビジョナリー・ファウンダーに対する我々の見方をどう変えたのか、あるいはBrian Armstrong(ブライアン・アームストロング)氏のCoinbase(コインベース)メモとスタートアップカルチャーに与える影響、さらには現在のテック出版の役割などについて直接的に書いてくれていれば、さらに得るものがあっただろう。ただしこの本は、自らジャーナリズム性を謳ったことはなく、演じようとしたのはチアリーディングするメンターであって皮肉なメンターではないということもしれない。

人気ポッドキャストに基づいて本を書くことは、簡単であるとは限らない。オーディオは文字とはまったく異なるメディアであり、音声による会話の強い個性や謙虚さを文字に変換するにはそれなりの手腕が必要だ。実際ホフマン氏と共著者の輝き具合は話によってまちまちで、繰り返し、しかし効果的に使われている物語のアーク(横糸)に強く依存している。問題を紹介し、なるほど!の瞬間を見せ、ソリューションを示して普遍的教訓を伝える、というやり方だ。

私はこの本を週末に読んだ。1冊手に取ろうとしている起業家志願者、技術者、ジャーナリストにも同じやり方をお勧めする。ホフマン氏と共著者が70人以上の起業家の話を見事にまとめた仕事はすばらしい。共鳴したファウンダーを検索するのか、自分のインタビュー・スタイルを変えるのか、はたまた、いつの日かブリッツスケーリングできるアイデアを実現し始めるのか。真のマジックは、読者が物語の合間にひと息ついたときに起きる。

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(文:Natasha Mascarenhas、翻訳:Nob Takahashi / facebook