もっと詳しく

さまざまな分野でAI(人工知能)の活用が進む中、先日、アメリカ国防総省がAIの開発に乗り出すことが明らかになりました。開発するのは、未来を予測するAI。SF映画のようなことが現実の世界で起こりつつあるようです。

↑素晴らしい未来が見える?

 

アメリカ北方軍(NORTHCOM)と北アメリカ航空宇宙防衛司令部(NORAD)の司令官を務めるグレン・ヴァンヘルク氏は、7月末の記者会見で、「GIDE(Global Information Dominance Experiment)」と呼ばれる未来予測システムについて説明を行いました。

 

GIDEは、軍事用センサーや世界で入手可能なさまざまなセンサーを集め、AIや機械学習を利用して、数日単位で未来を予測するそう。例えば、駐車場にとまるクルマの台数が急激に増えたり減ったり、駐車場で何らかの変化が起きたりしたら、GIDEはアラートを米国防総省に送り、駐車場の衛星画像を注視する仕組みです。

 

記者会見では多くのことが明らかにされませんでしたが、ヴァンヘルク氏が強調していたのは、GIDEのポイントが最新テクノロジーの活用ではなく、大量の情報を処理するための新しいアプローチであるということ。同氏によると、これまで米軍は大量のデータに対して迅速に反応することができず、受け身にならざるを得なかったとのことです。しかしGIDEの導入により、それが能動的に変わり、日単位で未来を予測することができるようになると言います。

 

また、GIDEが重要なことに関して決断を下すことはなく、このシステムはあくまでも人間に選択肢の1つを提供するに過ぎない、とヴァンヘルク氏は述べています。

 

『マイノリティ・リポート』は予言していた

このAI開発のニュースと共に話題になっているのが、スティーブン・スピルバーグ監督と俳優のトム・クルーズ氏がタッグを組んだ、2002年公開のSF映画『マイノリティ・リポート』。そこで描かれているのは、予知能力者が未来を予測し、刑事がそれに基づき、事件が起きる前に犯罪者を逮捕するという監視・治安制度。この物語で登場する予知能力者が、GIDEというわけです。

 

20年近く前に作られた映画のストーリーが、形を変えて現実のものになっているように見えますが、このような取り組みが行われている背景には、アメリカで銃乱射事件やテロなどの凶悪事件が多いことがあるでしょう。もしかしたら米国防総省は国際的な安全保障を視野に入れているのかもしれません。

 

近くても遠くても、未来を予測するのは難しいことですが、AIがビッグデータ(膨大な量の情報)を解析すると、人間が気付かない、わずかな変化をいち早く察知し、何かが起きる可能性を警告することができるかもしれません。確率や精度は技術の進歩と共に高まっていくと考えられますが、はたして、このようなテクノロジーを使って、人間はより安全な社会を作ることができるのでしょうか?