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 改良とみるか、改悪とみるか……。

 マツコ・デラックスが出演するTBS系人気バラエティ『マツコの知らない世界』について、今年春から「テコ入れが始まった」と話題になっている。

 『マツコの知らない世界』は2011年にスタートしたトーク番組。タイトルの通り、マツコの知らなかったディープな世界をその道のスペシャリストと1対1でトークするという内容。この番組に登場するスペシャリストは、芸能人や学術系の研究家が主ではなく、趣味が高じてその道にどっぷりつかってしまったいわゆる「素人」がメインだ。

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 テレビ慣れしていないゲストが多く、マツコの軽快なツッコミとイジリによって成立している番組なのだが、2021年4月前後にテコ入れが行われたのか俳優や歌手など芸能人のスペシャリストが登場するケースが増えた。

 3月23日の放送では「歌姫の世界」と題し、歌手の森山直太朗が出演。5月25日には「ナポリタンの世界」と題し、俳優の及川光博が登場。それ以降も「サメ動画の世界」ではココリコ・田中直樹、「消しゴムの世界」では楠田枝里子と芸能人のスペシャリストが多数出演しているのだ。

 以前はスペシャルや一部の回を除き、芸能人の出演は控える傾向にあったのだが、ここ半年は多数の芸能人がゲスト出演している。

 この番組の魅力は、前述の通りマツコと素人との絶妙な関係だ。10年間にわたり人気を博していたこともあり、ネットでは相次ぐ芸能人ゲストに対し「最近、芸能人出し過ぎでは?」「芸能人相手だとマツコも遠慮しちゃうので魅力半減」「もっと素人を出してほしい」といったネガティブな声が相次いでいる。

 だが、芸能人を出すメリットも大きいようだ。

 事前に告知することでゲストのファンにも積極的にアピールできるほか芸能人はテレビ慣れしているため、スムーズに番組が進み、見やすさがアップすることが多い。

 また及川が登場した「ナポリタンの世界」では俳優ならではの視点で、ナポリタンが美しく見えるよう映像にもこだわるなど、芸能人の武器をふんだんに使うこともできる。芸能人ゲストの起用は番組にとってもメリットがあるのだ。 番組開始から10年。素人を起用し「番組らしさ」を重視するか、それとも芸能人を起用し「安定」をめざすか。『マツコの知らない世界』は今、瀬戸際に立たされている。