兵庫県姫路市立城陽小学校(同市北条)の特別支援学級で、担任の教諭(懲戒免職)による暴言や体罰が繰り返された問題について、発達障害がある3人の子どもを育てた姫路市の清瀬幸枝さん(48)に今の思いを聞いた。「姫路の母ちゃん」と親しまれ、介護福祉士の資格を持つ清瀬さんは「私も接し方が分からず、心を閉ざそうとした時期があった。同じ『自閉症』の診断でも、それぞれ個性は違う。その子に合った接し方を忍耐強く知ろうとすることが大切」と話す。(安藤真子)
今回の問題で一番心に引っ掛かったのは「お前にはどんな説明をしても通じひんな。ここまで言うても、まだ分からんというか」という言葉。特別支援学級に通う児童は、程度に差はあるが理解力に課題のある子が多い。「なんで分からないのか」と発言していることに「障害のことを理解していない」と感じた。
「同じ障害でも、10人いれば10人とも個性はばらばら」「声の掛け方や大きさ、目線の高さを、その子ごとに考えていかないと指導は難しい」。わが子3人に合った接し方を探ってきたからこそ、その大切さを訴える。
「差別的な発言や暴力は絶対あってはならない」。そう強調する一方で「先生1人だけの問題じゃない。これは社会全体の問題」とする。「助けを求め、一緒に子どものことを考えていく地盤がないのでは」
清瀬さんの3人の息子は、いずれも対人関係が苦手でこだわりも強かった。小学校は長男真也さん(20)が普通学級に通い、次男竜也さん(19)と三男朋也さん(17)は特別支援学級で学んだ。
一番障害の重い竜也さんは、3歳のころに自閉症と診断された。言葉を発するのが遅く、部屋の中をぐるぐると歩き回るなどの行動があった。保育園では「竜也くんにかまれた」「引っかかれた」と言われることもあり「竜也を家から出さんとこう」と考えたこともあったという。
しかし、保育園として初めて発達障害のある子を受け入れた園長は「一緒に乗り越え、成長しよう」と言ってくれた。小学校の特別支援学級でも、決して経験豊富な担任ではなかったが、保護者と一緒に対応しようという姿勢があり、信頼関係が生まれたという。「城陽小の先生は保護者と良い関係を築けていただろうか」と気になっている。
「1人を育てるのも大変。複数人を見るのはもっともっと大変だということも分かる」と清瀬さん。だからこそ「お互いの悩みを共有し、先生と保護者、子どもたちみんなで成長しようとする気持ちを持つことが大事」と力を込める。