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 新型コロナの影響で、テレワークを余儀なくされている読者も多いだろう。かく言うINTERNET Watch編集部や著者たちにとってもそれは同じ。それぞれの住環境の中で、テレワーク環境をより改善すべく日々工夫を凝らしている。そこでこの連載では、実際に使ってオススメできると思ったテレワークグッズのレビューをリレー形式で紹介していく。今回は税金関連の執筆を多く手がけてもらっている奥川浩彦氏にレビューしてもらう。


 新型コロナウイルスの第5波のピークは過ぎたようだがまだまだ終息が見えない。多くの人はしばらくテレワークが続きそうだ。企業・職種によっては、新型コロナウイルス終息後も「オフィスの縮小=テレワークの継続」となるかもしれない。今以上に自宅の仕事環境をよくしたい人もいるだろう。

 筆者は2006年に起業したので在宅ワーク歴は15年。仕事に必用な機材やグッズは稟議書・申請書なしで購入できる。ただし自腹だ。そんな筆者は電動昇降式デスクの購入を過去にも検討していて、Amazonの「欲しいものリスト」を見ると2018年に数機種がリスト登録されていた。今回、ついに重い腰を上げて購入したので紹介したい。

 ちまたから聞こえる自宅で仕事をする場合の悩み・問題点は「自分の専用スペースがない」「仕事をする机がない」「ダイニングテーブルでは仕事がしづらい」「子どもの声が……」など枚挙にいとまがない。筆者は子どもは成人しているし、オフィス兼住居を借りているのでこれら“物理的”問題はない。

現在の仕事部屋。買い替え前の机が手前にある。この手の写真は掃除1時間、撮影1分。面倒なので4年前に撮ったものを流用

2014年に撮影した以前のオフィス。右側に買い替え前の机が写っている

 声に出して言いづらいテレワークの(本音の)悩みは「集中できない」「テレビを見てしまう」「趣味に気が取られる」「寝てしまう」など“精神的”な問題ではなかろうか。筆者が自宅で仕事をするうえで最大の敵は「睡魔」だ。コーヒーを飲んでも眠気解消は難しく、現状は仕事を継続しつつ眠気防止効果があるのはバランスボール。オフィスチェアをバランスボールに替えるとそこそこ効果はある(あくまで個人的感想です)。それ以上の効果が期待できそうなのが、立って仕事ができる「電動昇降式デスク」だ。はたして……。

未体験の製品なので真剣に機種選択

 特段の理由はないが、重い腰を上げて電動昇降式デスクを購入することを決心、1人だけ使用している知り合いがいたので電話でヒアリング、ネットで各社の製品などを比較した。

 まずはディスプレイなどデバイスの重さを確認。27インチのディスプレイは2台で13kgくらい。スピーカーは原稿書きで自作し、その後PCスピーカーとして転用したもので2台で3kgくらい。サブウーファーは4kg弱。モニターアームを改造したスピーカー台は重量は不明だがそこそこ重い。そのほか諸々を合計すると机の上に載っているものの重さは25kgくらいだろう。

 筆者のディスプレイ環境を考慮すると幅120cm以上の机が対象となる。昇降式デスクには手動と電動があり、手動はハンドルを回す方式とガス圧レバー式がある。低価格な昇降式デスクは手動式の製品が多く、電動式になると価格が高くなる。

 未体験なので手動式か電動式か判断が難しい。ディスプレイなどデバイスの合計重量がそこそこ重いことや、買った後に後悔しないことを考慮すると電動式が無難な選択に思えた。そもそも1日に何度も昇降するのか数日に一度昇降するのかも使ってみないと分からない。120cm幅、電動式の相場は5万円前後から。オフィス機器の有名ブランドでは10~20万円のものもあるが、今回は4~7万円の製品から機種を絞っていった。

 未体験の製品なので複数の製品のレビューコメントを読んだが決定打となるものは少なかった。筆者は人の意見をあまり信じないので、良いコメントも悪いコメントもバイアスをかけながらチェックした。その中で「27インチの液晶モニタ2枚……」という、筆者と近いデバイス環境の人のコメントが背中を押すことになった。

 話がそれるが、ユーザーレビューをどう見るかは悩ましく、1人が「すぐに壊れた」と書いているとビビってしまうことがある。例えばINTERNET Watchの読者に近いマルチギガビットLAN製品の多くに熱を持って“熱い”というコメントがあるが、実際に購入してみると暖かい程度で拍子抜けすることもある。

 筆者のネット上のコメントの見方はこうだ。仮に1000台の製品が売れ、100人が不満で900人は不満がなかったとしよう。不満があるとレビューを書きたくなる人が多く、100人のうち10%の人が批判的なレビューを書くと10人。一方、購入した製品が問題なく使えればコメントを書く人は少ない。900人のうち1%の人が肯定的なレビューを書くと9人。この10対9をどう見るか。

 買う前から怪しさ満点の海外製品は別として、国産製品で1割が不満を感じるものは少なく、数千台売れた中の数人が批判的なレビューを書いているケースもあるだろう。「すぐに壊れた」は1万台のうちの1台かも知れない。サイレントマジョリティ=声なき肯定が存在するので、ネット上のユーザーレビューは一定のバイアスをかけて見るようにしている。

 話を戻そう。購入したのは幅120cm、奥行き73cm、タンスのゲンの「電動スタンディングデスク 2モーター昇降 高さメモリ機能付き〔69100001〕」となった。購入時の価格は4万2800円。同じメーカーで奥行き60cmの製品もあったが73cmのものを選択。天板のやや後方にスマホやタブレットを立て掛けるデバイススタンドという溝が用意されている製品だが、それが便利なのかは使ってみないと分からない。なお、Amazonでは奥行き60cmのモデル(69100000)のみ販売していて、奥行き73cmのモデルは楽天市場のタンスのゲン直販サイトで販売している。

 気になる耐荷重は天板を含め100kgなので天板の14.3kgを差し引くと85.7kg。昇降可能耐荷重は80kgで天板を差し引くと65.7kgとなっている。念のためメーカーに問い合わせたところ即日返信があり、いずれも“等分布荷重”との回答。モニターアームなどで点荷重となる場合は注意したい。

メーカー提供の寸法図

組み立ては1人で30分ほど

 発送元は九州だったが、注文した翌日には川崎市のオフィスに届いた。そこそこデカイ。そして重い。重量は電動式の脚部が23kg、天板が14.3kgで合計37.3kgと書かれている。大きさと重さを考慮すると、他の部屋で組んで運ぶことは困難なので、仕事部屋のソファなどをどけて組み立てを開始した。

 開梱した写真と完成した写真の撮影時刻を確認すると、撮影の時間を加えて組み立て時間は1人で34分。説明書は一部で分かりにくいところがあるが、あわてずに作業すれば難しくはないだろう。付属のネジを付属の工具で取り付けるだけなので、間違ってもやり直すことは可能だ。一通りの手順を撮影したので、購入する人は見ていただきたい。

動作音は静か、振動もなく昇降する

 組み立てた机を移動して試運転。動作音は静か。隣の部屋に人がいても聞こえないレベルなので、深夜に昇降しても問題はなさそうだ。振動もなく飲み物をコップやマグカップに入れた状態でも気にせず高さを変えることができる。コインを立てて動かしてみようと思ったが、不器用な筆者はコインを立てることができなかった。

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試運転。動作音は静か、振動もなく上下する(iPhoneの録音がイマイチで申し訳ない)

 高さは73.5cmから120.5cmまで1cm単位で変更ができる。表示は0.5が省かれ高さ73.5cmのときは73と表示される。筆者は座ったときは73.5cm、立ったときは103.5cmで使用することにした。1、2、3とSボタンがあり、任意の高さで数字とSボタンを同時に押すとその高さがメモリーされる。筆者の場合1を押すと73.5cm、3を押すと103.5cmとなるようにプリセットした。動画のようにボタンを少し長押しすると指定した高さに移動する。SボタンはセットとストップのSと思われ、例えば1から3へ動作する途中でSボタンを押すと停止する。停止状態でコンセントを抜いても天板の高さが変わることはない。

設置物の取捨選択

 必要なものから設置を開始した。モニターアームを改造したスピーカー台とスピーカー。液晶ディスプレイ2台。キーボードとマウス。タブレット。右側のディスプレイをメインとしているので左側ディスプレイの手前は必要に応じて書類やノートPCを置くフリースペース。ここまで設置すると残りスペースはわずかとなった。

 今さらだが、前の机と新しい机の面積を計算してみた。新しい電動昇降式デスクは120cm×73cm=0.88m 2 。前の机は120cmの正方形から半径60cmの扇形を切り取った形状なので1.27m 2 。前の机の方が1.45倍も広かった。

 実際に机を前にすると手前のスペースが左右120cmある新しい電動昇降式デスクの方が広く感じるが、ディスプレイ後方のスペースはほとんどなくなっている。前の変形5角形の机はディスプレイ後方に広いスペースがあった。最後に撮った写真を見ると、NURO光のルーター、ケーブルボックス、仮置きした2.5Gbps×5ポートスイッチ、サブウーファー、Google Home mini、USBオーディオ(DAコンバータ)など様々なものが置かれていた。

ディスプレイの後方に色々置かれていた。壁際にケーブルボックス、その上に導入したばかりの2.5Gbps×5ポートスイッチ。その手前のAVケーブルが刺さっているのはサブウーファー。その上にGoogle Home mini、その横はUSBオーディオ(DAコンバータ)

 デバイス類以外にエアコンなどのリモコン類、ティッシュ、ウェットティッシュ、メモ帳、ハサミ、カッター、ボールペンなどもあったが一部を残して机の上からは一旦撤去した。

 最終的に机の上に残したものはNURO光のルーターとケーブルボックス。ケーブルボックスにはテーブルタップにディスプレイの電源、USB Type-A、Type-Cの電源アダプター、スピーカー用のACアダプターをつないで収納している。

机上に残ったケーブルボックスの内部。黒いケーブル2本はディスプレイ、pqiと書かれているのはUSB電源アダプターでスマホ、タブレット用。その左にチラッとスピーカーアンプ用ACアダプター、左端はノートPC用のType-C電源アダプター

 サブウーファーはサブPCの上、2.5GbpsのスイッチはメインPCの上、頻度の少なめなカードリーダーもUSB 3.0ケーブルの長さを考慮してメインPCの上。Google Home miniにいたっては別の部屋に移動した。しばらくこの状態で使用しているが特に支障はない。

ケーブルなどを追加購入

 購入前から気になっていたのがケーブル処理だ。天板を上げたときに届かないケーブルは新調した。キーボード(USB)切替器と2台のデスクトップPCをつなぐケーブルは短かったので2mを購入。1本をピンクにして色分けしたが太かったのがイマイチ。手元にあると便利なUSBメスケーブルも長いものを購入、いずれも数百円だ。

 おまけとしてはティッシュボックスを金属面に貼り付ける3本438円のマグネットバー。20年近く愛用していて現在もキッチンで使用中。昔記事を書いたときと比べると高くなったが大きな支出ではない。

 導入直後は昇降する度にケーブルの動きを注視、どこかに引っかからないか、ドキドキしながら見ていたが、今のところトラブルはなし。最初は下に置いていたNURO光のルーターは途中からディスプレイの背部に移動した。動きを見ながら天板下面にケーブルクランプを貼付て各ケーブルの固定を進めている。

支柱の内側にティッシュボックス。各ケーブルは徐々にクランプで固定を進めている

 床に設置したデスクトップPCと天板を上げたときの距離が離れるので、導入前にはデスクトップPCをかさ上げする台を自作しようかと考えていた。どうせならキャスター付きが便利かもと妄想をしていたところ、キャスター付きの台が売られていることを知りお試しで導入してみた。

 サイズが変えられる「ORICO 縦幅・横幅調節可能 CPUスタンド CPB4-BK-BP」とサイズ固定の「ORICO キャスター付CPUスタンド CPB1-BK-BP」の2種類を購入。使ってみるとサイズが変えられるタイプの方が剛性があり良い感じだ。

サイズが変えられるタイプのキャスター付きの台。剛性がありお勧め

キャスター台に載せたPC、その上はサブウーファー

少し安いサイズ固定タイプ

キャスター付きの台に載せたメインPC、2.5Gbps×5ポートスイッチとカードリーダーはメインPCの上とした

電動昇降式デスクは睡魔に勝てたか

 設置が完了し数週間が経った。朝一番や食事から戻ったときは座って仕事がしたいと感じるので、立って仕事する頻度はそれほど高くなく推定10~20%。それでも長いときは3時間くらい立った姿勢でパソコンに向かっている。

ほぼ設置完了。座ったときは天板高73.5cmで使用

立ったときは天板高103.5cm。綺麗なモデルが写っていなくて申し訳ない

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ディスプレイやスピーカーを設置完了。そこそこ荷重がかかった状態でも、静かに振動もなく上下する(これも録音がイマイチで申し訳ない)

 目的とした眠気防止効果はバランスボールを超えたと思っている。眠くなり始めたときにプリセットしたボタンを押すと天板が上昇する。若い人には理解できないと思うが、静かなモーター音で天板とディスプレイがグォー~っと上昇する瞬間、なぜかジジイはサンダーバードの秘密基地でサンダーバード1号、2号に乗り込む風景が頭をよぎる。特別なオペレーションが始まる高揚感、そう、心のスイッチも入るような感覚だ。何を言っているか分からない? 筆者もそう思う。

 昔、電車のつり革を持ったまま寝落ちして膝がガクッと落ちた記憶がある。立っていれば永久に眠気が来ないわけではないが一定の効果はありそうだ。一説によると運動不足解消、痩せるという効果もあるらしいが、立ち仕事時間をかなり長くしないと痩せそうな気はしない。万が一痩せたらいつか報告しよう。

 以前の変形5角形の机を買ったときも最初は満足していたので数年後のことは分からないが、現段階の満足度は高い。買って良かった、機種選択も間違っていなかったと感じている。集中力や眠気などは個人差があるので、会社でも自宅でも新幹線でもバリバリ仕事ができる人は関係ないと思うが、筆者のように睡魔に襲われがちな人は参考にしていただきたい。