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世界最大級の家電見本市であるCES 2022の開催中に発表となったGalaxy S21 FE。

ロシアのような先行販売されている例外はあるものの、多くの国は11日からの発売となっています。

S20 FEは秋ごろに発表されているため、例年よりも大幅に遅れての発売となりました。なおかつ来月2月にはS22シリーズの発表が控えているとされています。

次期Sシリーズがまもなく発表されるということは多くの消費者が気付いているはずであり、この時期の発売は良い判断であるようには見えません。

何故ここまでして今更S21 FEを発売したのかについて、筆者なりの考えをまとめます。

一度は発表のキャンセルも検討されたか

S21 FEは元々1月に発売するつもりではなかったと考えられます。

本来は例年通り秋ごろの発売を予定していた様子で、秋ごろに公式ページにモデル番号が公開されたりと、かなり前から発表への準備とみられる動きが見られました。

S21 FEのレンダリング画像とされるものも、2021年6月には既にリークされていました。2022年1月発表の割には早すぎます。

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出典:Evan Blass

つまり半導体不足や製造拠点ベトナムのロックダウンにより、予定されていた秋ごろのスケジュールに生産や開発が間に合わず、発表の予定を1月に延期したと考えられます。

なお一度は「発売しない」という検討もされていたという噂も浮上しました。モデル番号が記載された公式ページも一度非公開になっていました(現在は公開されています)。

開発にかかった費用を回収したい

とはいえ、なぜここまで遅れてもなお発売に踏み切ったのか、ということについては疑問が残ります。


FEシリーズのような「性能は高いが価格を安価に抑えたモデル」は、価格が比較的安価なことから市場規模がSシリーズのフラグシップよりも大きく、潜在的な顧客が多く存在していると考えられます。

そのためS21 FEも例に漏れず、当初はある程度開発に投資を行っても十分に費用を回収できる、という判断だったのでしょう。

しかしパンデミックによる生産困難という予想外のイベントに直面し、予定通りの次期に発売できない状態になりました。ここで発売しない選択肢を選ぶと、S21 FEに投じた開発費は一切回収できず、これに投じた費用は無駄になります。

そのため少しでもこの開発費用を回収するため、大幅に遅れてでも発売にこぎ着けたとみられます。

このような状態をコンコルド効果といいますが、こういった側面があるのではないかと筆者は考えています。

S22シリーズで足りない分を補う目的?

この半導体不足は未だに解消せず、2022年も引き続き需要が供給を上回ると予想されています。サムスンはこの問題を見越しているためか、S22シリーズではSnapdragon搭載地域を従来より増やす見込みです。

このような対策の一環として、敢えて今S21 FEを発売する選択肢を取った可能性があります

S22シリーズに搭載されると言われているSnapdragon 8 Gen 1とExynos 2200(仮称)は、どちらも同じサムスンの4LPE(4nm)という最先端の微細化プロセスで製造されます。

つまりこの2種のシステム・オン・チップの供給割合を変更したとしても、これが十分な対処であるとは言えません。

そこで前世代のプロセス5LPP(5nm)で製造されるSnapdragon 888またはExynos 2100搭載のS21 FEを”S22シリーズの代替“として販売することで、供給不足による顧客の買い控え、つまり機会損失を減らす目的があるのではないかと考えられます。

一周回って半導体不足が追い風に

もしこられの噂や推測が正しいとすれば、Galaxy S21 FEは「半導体不足によって一旦キャンセルされたものの、半導体不足により再び販売されることになった」という、良くも悪くも終始半導体不足の影響をもろに受けた機種となります。

真相はサムスンしか分かりませんが、こういった物語を想像するということも悪くないでしょう。


画像:Samsung US