雑菌が繁殖しやすく臭いのこもりやすいトイレ。油断していると、便器の中に黒ずみの輪っかができたり、床や壁にアンモニア臭が染み付いてしまったりしますよね。トイレをキレイにするためには、強力な洗浄力をもつ化学薬品入りの洗剤を使って、ゴシゴシと念入りな掃除が欠かせない、と感じている人は多いようです。
ところが、ナチュラルクリーニング講師の本橋ひろえさんは、「トイレの掃除は毎日の3分ケアができれば、汚れも臭いも溜まらないし、ナチュラル洗剤すらも少量で十分」と力説します。汚れや臭いから解放されて、化学洗剤不要のトイレ掃除とはどのようなものなのでしょうか? 詳しく解説していただきます。
トイレの汚れ落としは3種の「ナチュラル洗剤」でOK!
トイレ掃除に必要な洗剤は、アルコール、クエン酸、過炭酸ナトリウムの、3種のナチュラル洗剤で十分という本橋さん。
「トイレは狭い空間で、汚れの種類が多いわけではありません。洗剤を多用する必要はなく、でもこまめなケアが大事な空間です。尿や排泄物による汚れは、その日のうちに掃除しておけば、臭いや黄ばみ、黒ずみなどにはなりません。アルコール水を使った3分掃除を毎日の日課にすれば、トイレ掃除の負担が激減します。毎日のケアとなると大変そうに感じるかもしれませんが、慣れてしまえば、歯磨きをするようなレベルの習慣になります。
ほかの2種のナチュラル洗剤は、必要に応じて使います。尿の汚れは酸性ですが、1週間以上放置するとアルカリ性に変わり、アンモニア臭がしてきます。このような汚れは、酸性のクエン酸を使って落とします。過炭酸ナトリウムは弱アルカリ性で、発泡することで汚れを浮かび上がらせ、除菌効果もあります。朝出かける前に便器の中に過炭酸ナトリウムを大さじ1程度振り入れ、便器の蓋をしておけば、便器全体の除菌が進み、トイレの輪っか汚れや黒ずみが防げます」(ナチュラルクリーニング講師・本橋ひろえさん、以下同)
トイレブラシは不要! 古いフェイスタオルを有効活用
本橋さんはトイレ掃除にトイレブラシを使いません。一体どうやって掃除をするのでしょうか?
「雑菌の付いたトイレブラシで掃除をしていては、汚れを落としながら雑菌を広げているという、非効率な掃除になってしまいます。トイレブラシを清潔に保つためには、トイレブラシを使う度に念入りに洗って汚れを落とし、しっかりと乾かさなくてはなりません。こんな面倒なこと、できませんよね。
わたしが普段のトイレ掃除に使っているのは、使い古しのフェイスタオルです。これはおうち全体の掃除でも使っていて、使い古しタオルを8等分にしたものをカゴにストックしています。毎日のトイレ掃除には、8等分したものをさらに1/4にカットして使っています。Tシャツや肌着なども使えますよ。3分でも毎日続ければ、汚れは溜まらないので、トイレブラシによるゴシゴシ磨きはほとんど不要になります。もし、ブラシでこすらないと落とせないようなガンコ汚れが発生したときは、100円ショップの3本入りのミニブラシやメラミンスポンジを使っています」
【アルコール使用】トイレ掃除を劇的にラクにする、毎日の3分ケア
トイレ専用の洗剤も、トイレブラシも使わずに清潔さがキープできる、毎日の3分ケアとはどのようなものなのでしょうか? 具体的に見ていきましょう。
「使うのは消毒用エタノール(エチルアルコール)に水を加えた『アルコール水』と使い古しタオル、使い捨てのビニール手袋の3つです。アルコールには溶解作用があり、プラスチックボトルを傷めてしまうことがあるので、ボトルを購入する際には『アルコール使用可』と表記されているものを選ぶようにしてください。アルコール水をつくる際には、先に水をボトルに入れ、アルコールを上から注ぐようにしましょう」
「アルコール水」の作り方
1. アルコール使用可能なスプレーボトルに水を65ml入れる。
2. 無水エタノールを35ml入れる。
3. ボトルのキャップを締め、横に振って全体を混ぜれば完成。「アルコール分80%程度の消毒用エタノールやエチルアルコールで作る場合には、エタノール90mlに対して、水110mlを入れ、アルコール濃度が35%になるアルコール水にしてください。アルコール水は3か月以内に使い切りましょう」
【毎日の3分ケア】
1. 便座をすべて上に上げ、便器のフチと便座の便座裏にアルコール水を振りかける。
「便器周囲に飛び散った汚れになじむように、水が流れる部分以外のすべてにかけていきましょう」
2. 便座を下ろし、便座の上面全体と蓋裏にアルコール水を振りかける。
「便座の継ぎ目などに汚れが入り込んでいることもあります。便器全体にアルコール水が行き渡るように、まんべんなく振りかけてください」
3. 便器の蓋を閉じ、上からアルコール水を振りかける。タンクの表面や洗い場、床や壁なども掃除可能な範囲で振りかける。
「毎日のケアなので、便器以外の部分は日割りで考えるといいでしょう。今日は床、明日は壁、明後日はタンクの表面などと進めていけば、キレイな状態をキープできます」
4. ビニール手袋をした手に、乾いた使い古しタオルを持ち、タオルにアルコール水をスプレーして、ドアノブや金属製のペーパーホルダー上部を拭く。
「ペーパーホルダーがプラスチック製の場合は、乾燥した布で拭くと傷つけてしまうのでタオルを濡らしてから行います」
5. 使い古しタオルを水洗いし、よく絞る。
「トイレの蓋裏の注意書きに記載されているのですが、洋式トイレのプラスチック部分を乾いた布やトイレットペーパーで拭くと、細かい傷が付いてしまいます。細かい傷ができると劣化につながる上に、汚れが溝に入り込んでしまうので注意してください」
6. アルコール水を振りかけた部分を順番に拭いていけば完了。
「ペーパーカバー、便器の蓋上、座面、床や壁、タンクなど、汚れの少ない部分から順に拭いていきます。便座の座面裏の次は便器全体の表面、そして便器の陶器部分のフチからフチ裏、便器の中側の順番がいいでしょう。ビニール手袋をしている上に、タオルは使用後に捨てるので、便座の中も拭けます。汚れの少ない部分から順番に拭くことで、1切れの小さな使い古しタオルだけで、全体の拭き掃除が完了します。掃除後には、使い捨て手袋と使い古しタオルをビニール袋に入れて処分しましょう」
次のページでは、“クエン酸水”や“過炭酸ナトリウムパック”による集中的な掃除について解説していただきます。
提供元:心地よい暮らしをサポートするウェブマガジン「@Living」
【クエン酸・過炭酸ナトリウムを使用】週に一度のしっかりトイレ掃除
アルコール水と使い古しタオル、使い捨てのビニール手袋以外にトイレで使う掃除道具はこちら。
「クエン酸は『クエン酸水』にし、過炭酸ナトリウムは粉末のまま使います。100円ショップで買える3本入りのブラシは便器をこすりたいときに便利。そのほかに、換気扇用のハンディワイパーと、蛇口をピカピカにするマイクロファイバークロスがあると重宝します」(ナチュラルクリーニング講師・本橋ひろえさん、以下同)
クエン酸水の作り方
1. 計量カップに水200mlとクエン酸小さじ1/2を入れる。
2. スプレーボトルに流し入れ、ボトルのキャップをしたら、横に振って全体を混ぜれば完成。
※クエン酸水は2~3週間以内に使い切りましょう。
【蛇口の水垢】
クエン酸水を洗い場の蛇口に振りかけてマイクロファイバークロスで拭く
「『キッチンのナチュラル掃除』の回でも紹介しましたが、蛇口部分の水アカ落としには、クエン酸水が効果的です。クエン酸水を振りかけてマイクロファイバークロスで拭くだけでピカピカになります。このとき、クエン酸水がタンクの中に流れ込まないように注意してください。タンク内がサビつく要因になります」
【床や壁への尿ハネ】
アンモニア臭の原因となる尿のこびり付きは、使い古しタオルで包んだブラシのヘラでこすり落とす
「尿ハネのこびり付きがある場合には、ブラシのヘラ部分を使い古しタオルで包み、クエン酸水を振りかけて擦ると落とせます。クエン酸水はアンモニア臭を中和する効果があるので、トイレが臭う場合は、壁や床にクエン酸水を振りかけ、水で濡らした使い古しタオルやマイクロファイバークロスで拭き掃除をしましょう」
【便器の輪っか汚れ】
大さじ1の過炭酸ナトリウムを便器の水たまりに入れ、トイレットペーパーをかぶせてパックする
「便器の水が溜まる部分に雑菌が繁殖すると、輪っか汚れが起きます。これはトイレを頻繁に使っていて、2~3時間に1度程度の高頻度で水が流れていれば起きません。しかし、出社して深夜まで留守にするひとり暮らしの自宅や、出張や旅行で長期間不在にする際に起きやすくなります。輪っか汚れを起こさない簡単な対策は、就寝前や出社前に便器の水たまり部分に過炭酸ナトリウムを大さじ1入れて、上からトイレットペーパーでパックをしておくことです。この過炭酸ナトリウムパックをすれば、できてしまった輪っか汚れを落とすこともできます。便器の蓋は必ず閉めて、便器内の水の蒸発を防ぎましょう」
過炭酸ナトリウムパックの仕方
1. 便器に過炭酸ナトリウムを大さじ1入れる。
2. 上からトイレットペーパーをかぶせて数時間放置する。
3. トイレを流せば完了。
【便器のフチ裏の尿石汚れ】
トイレットペーパーを貼り付けて上からクエン酸スプレーをたっぷりと振りかけ5分ほど放置する。
「何年も放置してしまった尿石は専用のヤスリで擦らないと落ちませんが、数週間ほどの間に蓄積された尿石ならば、クエン酸パックでゆるめることができます」
【換気扇表面のホコリ】
ハンディワイパーで換気扇の表面のホコリを取り除く
「ハンディワイパーはホコリをからめて取り除いてくれるので、換気扇の表面を軽くなでるように拭き取るだけでOK! 換気扇を取り外した掃除は、半年に一度くらいのペースで行うようにしてください」
尿ハネ自体を減らすための秘策
どれだけ掃除に精を出しても、尿ハネの原因の多くは男性が立って用を足すこと。最後に、本橋さんからトイレ掃除のやりがいアップにつながり、同居する男性に積極的に協力してもらう秘策を教えていただきました。
「尿ハネ汚れにブラックライトを当てると、青く光りますよ。もし、パートナーや息子さんに尿ハネ対策の協力をお願いしても座って用を足してくれないときは、この方法で、いかに尿ハネが起きているのかを見せてあげましょう。きっと、座ってくれるようになります(笑)。ブラックライトは1000円未満で購入できます。ただし、出張先のビジネスホテルのトイレなど外出先で軽はずみに使うと、青い光の広がりに後悔することがあるので注意してくださいね」
トイレに付着した汚れはその日のうちに掃除してしまえば、簡単に落とせることがわかりました。それさえやれば、ナチュラル洗剤だけでキレイをキープできるし、不衛生なトイレブラシを狭い空間に置く必要もなくなります。メリットの大きさを思えば、毎日の3分ケアのハードルがグンと下がるのではないでしょうか。
【プロフィール】
ナチュラルクリーニング講師 / 本橋ひろえ
北里大学衛生学部化学科(現・理学部化学科)卒業。化学系の企業に就職し、化学事業部で水処理、化学薬品、合成洗剤などの業務を担当。結婚退職後、専業主婦として家事を経験し、子どもがアトピー体質であったこともあり、ナチュラル洗剤を活用するように。その後、ナチュラルクリーニング講師としての活動を始動。著書に『ナチュラルおそうじ大全』『ナチュラル洗剤そうじ術』『ナチュラルおせんたく大全』『やることの「見える化」で掃除を劇的にラクにする方法 ー これなら家族で分担できる』 (主婦の友社)、『ナチュラル洗剤そうじ術』(ディスカヴァー・トゥエンティワン)など多数ある。
Blog=https://ameblo.jp/naturalcleaning/