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Vol.106-3

 

本連載では、ジャーナリスト・西田宗千佳氏がデジタル業界の最新動向をレポートする。今回のテーマは引き続き、Googleが日本で発売したセキュリティカメラ「Google Nest Cam」。本来、家の外をスマートに監視するカメラへの需要が日本にない中で、Googleはどう攻めるのかを解説していく。

 

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過去、IT機器は「世界的にニーズがあまり変わらない機器」だと思われてきた。PCにしろスマートフォンにしろ、細かな差異はあっても、本質的な使い方や要求は、どの国でも大差がない。アメリカで「ハイスペックで快適な製品」は、日本でもやはり「ハイスペックで快適な製品」であることに変わりはない。カメラの画質や音質についても、良し悪しの基準が国で違うわけでもない。

 

テレビやオーディオ機器も同様だ。家の広さや放送規格の違いなどで、まったく同じ製品がどの国でも売れるというわけではないものの、違いはそのくらい。良いものはどの国に持って行っても「良い」ものだ。

 

だが、いわゆる「白物家電」はそうではない。日本で人気の冷蔵庫は、アメリカに持って行けば小さくてニーズを満たさず、洗濯機も欧米では強力な乾燥機能が必須だが、日本では「いかに楽に干せるか」が大切にされることもある。

 

生活や文化基盤が違うので、より生活に密着した家電はニーズが国によって大きく違ってくるのだ。そして、スマートホーム関連機器も同じように、国によってニーズは変わってくる。

 

前回の本連載で解説したが、アメリカでは特に「ホームセキュリティ」へのニーズが強い関係で、家の外をスマートに監視するカメラと、それに連携する機器に大きな需要がある。だが、日本はそうではない。

 

しかし、今回Googleが日本市場に持ち込んだスマートカメラ「Google Nest Cam」は、機能面ではアメリカのものも日本のものもまったく同じになっている。

 

ではGoogleが日本のニーズを無視したのか? というと、それは違う。

 

Googleは日本市場をリサーチしたうえで、ある切り口を見つけている。それが「見守り」だ。

 

監視カメラ・セキュリティカメラというと「家の外を映像でチェックする」ものという印象が強い。だが、同じカメラを自宅内に向ければどうだろう? 家の中にいるペットの状況、小さな子どもや高齢の方の過ごし方などをチェックするカメラになりうる。

 

もちろん、Google Nest Camには「屋内を監視する機能」も元々あった。そこで、ドアの外につけるセキュリティカメラと同時に、家の中につけると見守りに使えるカメラをラインナップし、そちらをより強くアピールする戦略を採ったのだ。

 

見守り用カメラには昔から一定のニーズがあったが、スマートフォンやスマートスピーカー、ネットサービスとの連動に加えて、AIによる自動認識と、Googleが提供する最新の技術による使い勝手と同等のものを備えたものはあまりない。アメリカ市場でAmazonなどと激しい競争が起きた結果磨かれたことがプラスに働いている。

 

ただし、日本における「見守りカメラ」ニーズも、アメリカにおけるセキュリティカメラのニーズほどは大きくないかもしれない。それでも、未開拓である市場を機能で掘り起こそう……というのが、Googleの作戦であるといえる。

 

ではそれはどんなものなのか? そこは次回解説したい。

 

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