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自動車業界における半導体不足への最善の対策は、もっとチップを作ることではないとしたらどうだろう?代わりに「機能過多(feature bloat)」と呼ばれる現象を、何とかすることを考えてはどうだろうか。激化する販売競争に押されて、新車にできる限り多くのテクノロジーを詰め込む傾向のことだ。

調査によると、消費者が欲している(そして期待している)のは、次の新車が眼を見張るような機能で埋め尽くされていることのようで、それが機能膨張の要因だ。先週終わったCES 2022では、これからのクルマがどうなっていくかを垣間見ることができた。Bosch(ボッシュ)は自動車用ソフトウェアは2030年まで2桁成長が続くと予測していると語った。Panasonic(パナソニック)は視線追跡付き拡張現実ヘッドアップディスプレイと、出力1000ワット、スピーカー25基を要するELS Studio 3Dオーディオシステムを披露した。BMW(ビー・エム・ダブリュー)はクルマの外装色と社内のデジタルアートをユーザーが変えられる未来技術を紹介し、後部座席の31インチシアタースクリーンにはAmazon Fire TV(アマゾン・ファイアーティービー)が内蔵されていた。

そしてこれらは、CES 2022で披露されたカーテックのごく一部にすぎない。

しかし、もしそのテクノロジーが信頼できないとしたら(実際いくつかはそのことが証明されている)、消費者の勝利とはいえない。一方、現実の市場では、現場の購入者をある災難が待ち受けている。最も欲しい機能のいくつかは、価格が高いだけでなく入手が困難であることだ。

「半導体不足ではありません、起きているのはソフトウェアの肥大化です」と、多くの自動車メーカーにグラフィカル(GUI)のデザインとツールを供給しているAltia(アルティア)のCEOで共同ファウンダーであるMike Juran(マイク・ジュラン)氏はいう。

たとえばChevrolet Volt(シボレー・ボルト)を見てみよう。このプラグインハイブリッド車の2011年モデルが登場した時、1000万行のコードが使われていた。現在の中・高級車に入っているコードは1億行前後だとAltiaのエンジニアリング担当副社長Michael Hill(マイケル・ヒル)氏はいう。

「これは10年か15年前のジェット戦闘機で見るレベルです」とヒル氏はTechCrunchに語った。「そして、バグのないソフトウェアは存在しません」。

消費者にとって悪い知らせがある。機能過多は不可避であり、悪化していく。

「今日のクルマは、消費者が必ずしも望んだり要求したりしていない機能を背負い込んでいます」とConsumer Reports(コンシューマー・レポート)の自動車テスト担当シニアディレクターJake Fisher(ジェイク・フィッシャー)氏はTechCrunchに話した。

フィッシャー氏によると、同誌の2021 Auto Reliability Report(2021年自動車信頼性レポート)は、ハイエンドの電動SUV(スポーツ用多目的車)は最も信頼性の低いクルマだと評価している。

「そしてそれは、パワートレインに問題があるからではありません」とフィッシャー氏はいう。「問題はそうではなく、自動車メーカーがEVのアーリーアダプターにあらん限りのテクノロジーを載せたクルマを販売しようとしていることです。商品を差別化し、高い価格を正当化しようとしています。その結果生まれているのが、非常に信頼性の低いクルマです」。

効率の悪さとコーディングの問題によって起きるバグのあるソフトウェアを生み出しているのは、自動車開発サイクルのシフト、もっと正確にいえば、加速だとAltiaのマーケティング担当副社長Jason Williamson(ジェイソン・ウィリアムソン)氏はいう。

「みんな毎年新しいスマートフォンが出てくることに慣れているので、自動車メーカーは消費者家電に追いつこうと必死です」とウィリアムソン氏は語った。「まったく新しいクルマを2年以内に開発するよう圧力をかけています。そしてそれは、必ずしも自動車アプリケーション用にカスタム製作された部品ではなく、ノートパソコン用に作られたかもしれない構成部品が使われていることを意味しています」。

テクノロジーで消費者を誘惑しているのは高価なEVだけではない。多くの中・高級製品ラインで起きている。

「ソフトウェア過多というより機能過多です」とGuidehouse Insights(ガイドハウス・インサイツ)のEモビリティ担当主任研究アナリストSam Abuelsamid(サム・アブエルサミド)氏は述べた。「ソフトウェアはあらゆる機能を働かせるためにあるだけです。それより、30種類に調整可能で5種類のマーサージオプションのついたシートが本当に必要ですか?あるいは、シーケンシャルテールランプやマルチゾーン完全自動エアコンやコンサートホールとスタジオ設定のあるオーディオシステムも。ライバルの一歩先を行こうとする果てしない欲求がこれを助長しています」。

自動車メーカーの十字架

あらゆるテクノロジーは良いテクノロージー、という考えの自動車メーカーは、扱いにくいが最終的にはより賢いアプローチを避ける。

「最も難しいのは、あるべき機能セットを見極めてそれを追究することです」とLucid Group(ルシード・グループ)のデジタル担当上級副社長Mike Bell(マイク・ベル)氏はいう。「『よくわからないから、何でもかんでも載せよう』というほうが簡単しもしれません。しかし賢いアプローチは、顧客が本当にやりたいことを知り、どうすれば最高の体験を与えられるかを見つけ出すことです。何かをするための方法が7つもあるなどいけません」。

ベル氏はApple(アップル)で17年近く過ごし、自ら率いるLucidの技術チームの何人かもそこで勧誘した。問題の原因の1つは、テック企業の規範とは異なり、自動車メーカーはソフトウェア業務の大部分を外部調達していることだと彼はいう。「外注してよい体験を期待することはできません」と彼は語る。「Lucidでは、どこかで買ってくるのではなく、自分たちでソフトウェアを作り、自分たちで統合しています」。

自動車メーカーも新しいテクノロージーの重要性を認識し始めている。

「クルマを販売することは、もはやハードウェアだけの問題ではなく、ソフトウェアも重要になっています」とPolestar(ポールスター)CEOのThomas Ingenlath(トーマス・インゲンラス)氏はいう。同氏はインタビューで、ソフトウェアの無線アップデート(OTA)ができるかどうかで「消費者満足度に大きな違いがでます。問題が起きた時に迅速に対応ができます」と付け加えた。

大きな期待

大きな要素の1つが消費者の期待だ。自動車購入者がさまざまな機能を必要としていないのは事実だが、表面的にはそれを欲しがっているように見える。データドリブンの自動車購入アプリCoPilot(コパイロット)が2021年11月に行った調査によると、自動車メーカーは人々の要求に答えているだけだという。現在のリース利用者の65.7%が、次の乗用車やトラックに今よりも良い機能を期待しており、56%以上が、現在のクルマに支払っているのと同じかそれ以下しか払うつもりがない。

同様に、9月に1000人以上の自動車オーナーを対象に行ったCarMax(カーマックス)の調査では、50%近くが「今の車にもっとテック機能があればよかった」と思っていると答えた。

20代と30代という自動車メーカーにとって期待度の高い世代は、ほとんどがテック機能を購入検討する上で「極めて重要」だと答えた。全体では、15.9%がテック機能を極めて重要と考え、3.7%が非常に重要、31.8%が「ある程度重要」と回答した。「まったく重要でない」と答えたのはわずか3.9%だった。

半導体不足の現状を踏まえると、テックへの期待が満たされている可能性は低い。

CoPilotのCEOでファウンダーであるPat Ryan(パット・ライアン)氏は、消費者は3つの分野で困難必須の状況にあるという。「第一に、クルマを手に入れるまでに3~6カ月かかり、みんなそのことに慣れていません」とライアン氏はいう。「二番目の問題は、新車には下取りに出そうとしているクルマよりも少ない機能しかないかもしれないことです」。

高級サウンドシステム、ワイヤレス充電、暖房付きシートさえも半導体不足のために入手できないかもしれない。そして、おそらく表示価格の95%を払っていた人たちは、表示価格で買うことになるかもしれない。

それでもハイテクカーへの欲求がなくなることはない。Edmunds(エドモンド)のInsights(インサイツ)担当エグゼクティブディレクターであるJessica Caldwell(ジェシカ・コールドウェル)氏は、自動車メーカーは自社の乗用車やトラックを走る多目的オフィス兼住居空間だと宣伝していて、購入者は喜んでいる、とTechCrunchに語った。

「消費者は増え続ける機能と快適性を楽しんでいます。なによりも重要なのはそういう高度に満ち足りたクルマにお金を払う意思が彼らにあることです」と彼女はいう。「半導体不足によってオプションや機能を増やしたモデルを作ることが困難になりましたが、消費者の関心は続いています。そして、そこに消費者の欲求がある限り、自動車メーカーは自分たちの利益と市場シェアのために、答える方法を見つけるでしょう」。

画像クレジット:Getty Images

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(文:Jim Motavalli、翻訳:Nob Takahashi / facebook