大手IT関連機器メーカーのレノボが2021年9月8日開催のプライベートショー『Lenovo Tech World 2021』に合わせて、Windows 11搭載ノートPCの第一陣となる製品を海外向けに発表しました。
その中でも最大の注目モデルが、14インチ/2880×1800解像度/16:10仕様の有機EL(OLED)画面を搭載し、本体重量1.1kgからのモバイルノートPC『Yoga Slim 7 Carbon』。
日本では“白いカーボン”などのキャッチコピーで知られる13.3インチ機『Yoga Slim 750i Carbon』の大画面+AMD CPU版モデルとも呼べる位置づけです。
発売はWindows 11のリリースとほぼ同時となる2021年10月から、米国での価格は1289.99ドルから。
「世界最軽量の14インチ有機EL画面搭載ノートPC」を謳うこのモデルの特徴は、ノートPC用としては新世代となるアスペクト比16:10の有機ELパネル(これまでは、PC用としては16:9のみでした)をはじめ、CPUには8コア16スレッド対応のAMD『Ryzen 7 5800U』を、単体GPUとしてNVIDIA『GeForce MX 450』を搭載可能など、2021年末のモバイルノートPCとしてヘビーユーザーが欲しい機能を満載した“欲張りセット”的な仕様という点。
本体重量は現行13.3インチ版の約966gから140gほど増し1kgをオーバーしてしまいますが、仕様の充実度は間違いなくそれ以上と呼べるレベルです。
・参考記事:レノボ「白いカーボン」は966g高級モバイル。2560×1600液晶のYoga Slim 750i Carbon発表(2020年12月)
本体色は、13.3インチ版のホワイトとは一転し、シルバーとグレーの中間的な『クラウドグレー』。本体外装は現行モデルに引き続き、カーボンファイバーとマグネシウム合金を採用。本体重量は公称1.1kg、薄さは14.9mmからとなります。
第一の注目点は、搭載される有機ELパネルです。上述したように、ノートPC用としてはアスペクト比16:10の有機EL、という時点で目新しいもの。
さらに解像度はQHD+(2880×1800)、最高リフレッシュレートはモバイルノートでありながら90Hz、さらに総合的な画質ではVESAの『DisplayHDR TrueBlack 500』認証をパスするなど、モバイルノートPCとしては驚異的な数値が並びます。
HDR映像ソースではドルビービジョンに対応し、最高輝度はHDR映像ソースによって上げられるタイプ(iPhone 12系などと似た仕様です)となっており、通常時は400nitながら、HDR映像ソースなどでのピーク値は600nitとなる仕様に。
色域はデジタルシネマ仕様であるDCI-P3を100%カバー、出荷時カラーキャリブレーション(色較正)済みで色差(ΔE)は2以下、さらに4辺ナローベゼル設計……など、最新世代だけあり、モバイルノートPCとしては(現行の有機ELパネルを含めてさえも)ちょっと驚くような仕様です。
なお隠れた特徴として、レノボのプレスリリースではパネルメーカーに関してSamsung Display製を明示しています。
加えて視力保護の観点では、第三者認証機関であるTUV Rheinland(テュフ ラインランド)のEye Comfort認証を得ている点も特徴。これは同社のディスプレイ認証で一般的なブルーライトカットに関してのみならず、反射防止処理やフリッカーフリーの効果についても規定された、より上位的な認証となっています。
さらにタッチ対応もオプションで選択可能。その場合の表面ガラスは、おなじみコーニングのゴリラガラスを採用します(ただし世代は非公開)。
この超強力な液晶パネルに応じて、基幹パーツも現状のモバイルノートとしては最も強力、と言っても過言ではない布陣が敷かれます。
CPUはAMDのノートPC用Ryzen 5000Uシリーズ。モバイルノートだけありTDP(性能と発熱、消費電力の目安となる数値)は15W版となりますが、最上位には“Zen 3”世代のCPUを8コア搭載し、16スレッドの同時実行が可能な『Ryzen 7 5800U』を搭載可能です。
さらにグラフィックス部オプションとして、単体GPUのNVIDIA『GeForceMX 450』も搭載可能。Ryzen 5000Uシリーズは内蔵GPUも比較的強力ですが、これをさらに強化できる仕様。昨今のモバイルノートで単体GPUが搭載可能という時点で、非常に珍しい仕様です。
RAMはノートPC用Ryzenでは最速となるLPDDR4Xタイプで、最大16GB。ここまで充実の仕様で32GBオプションがないのは残念ですが、おそらく価格バランスも考慮されたものと想定されます。
ストレージは、最大1TBのNVMe(PCI Express接続)のM.2 SSDと、イマドキとしては標準的な仕様です。
これだけ強力な心臓部となるとバッテリー駆動時間が心配、という方もいるでしょうが、そちらもしっかりと強化。容量は61Whと、13.3インチ版の50Whより大幅増になりました。
これにより公称バッテリー駆動時間は最大14.5時間をキープ。強力な有機ELパネルやCPU、GPUを搭載しつつも、昨今のモバイルノートとしての水準を満たす仕様。また急速充電も「15分で約3時間分」とアピールする、かなりの速度です。
隠れた特徴はスピーカー。現行モデルと同じくドルビーアトモス対応ですが、搭載位置は大きく変更され、キーボード左右になりました。現行モデルでは底面側だったため、実際の音質や定位は改善が期待できます。
またこのスピーカーグリルは冷却孔も兼ねるシステム。強力な基幹パーツから発生する熱対策の手助けともなっています。
拡張端子は、USB Type-C×3基(速度は全て10Gbps、ただし電源入力とDisplayPort Alt Mode対応は内2基のみ)と、3.5mmヘッドホン/マイク兼用オーディオ入出力。さすがにCPUがRyzen系だけあってかThunderboltには非対応ですが、現行世代の水準と呼べそうです。
本体の堅牢性に関しても、現行モデルに引き続き9種の『MIL-STD 810H』テスト(米軍調達仕様)をパス。厳しい動作環境や物理的な衝撃にも強い点をアピールします。
使い勝手の面では、現行モデルから引き続き、のぞき見警告機能『プライバシー・アラート』機能を継承。Webカメラ部に搭載された赤外線カメラとTOFセンサーにより、離席時の自動画面ロックや復帰なども行えます。
このようにYoga Slim 7 Carbonは、モバイルノートPCのヘビーユーザーが欲しくなるようなディスプレイと基本性能をジャストで備えてきたかのような、非常に魅力あふれる意欲作。
重量こそ1kgの大台を上回るものの、高解像度かつ広色域な有機EL画面と快速処理という特徴を思い切り追求したかのような仕様に魅力を感じるEngadget読者も少なくないはずです。
昨今のレノボのYogaシリーズの製品展開から予想するに、日本での発売も期待できそうなモデルだけに、可能であれば早め、かつ内外価格差少なめでの発売を期待したいところでしょう。
(Source:レノボ ニュースリリース(英語版)。Engadget日本版より転載)