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通称「ねじれタワー」で知られ、立方体をひねったようなデザインが印象的な、ドバイのカヤンタワー(高さ307メートル)。下階より上階の方が幅広で逆三角形のシルエットが印象的なバンクーバーハウス(高さ151メートル)——。

 

世界には、建築技術の発展を背景に斬新なアイデアで生まれた、度肝を抜くようなデザインの高層ビルがあります。これから建設される高層ビルはどんな形になっていくのでしょうか? 米国の建築雑誌「eVolo Magazine」が主催する超高層ビルのデザインコンテスト「2021 Skyscraper Competition」で、492の応募作品の中から入賞した上位3つのデザインを見ながら、未来の建物について考えてみましょう。

 

1位: 木と融合した「生きた高層ビル」

↑生きた高層ビル(画像提供/eVolo Magazine)

 

灰色に見える高層ビル群の中で、木製でひときわ目立つのが、1位に選ばれたこちらの作品。ウクライナのチームのデザインで、生きている樹木を取り入れたアイデアです。使用するのは、成長が早く背の高い広葉樹に遺伝子組み換えを行ったもの。木は根から水分や養分を吸収し、成長途中に接ぎ木が行われ、立方体のように建物の構造を形成するようになります。成長とともに木は太くなり、建物の強度が増していくそう。さらに建築完成図には、飛び交う鳥が描かれ、生物たちも共存する場所になっていくことをイメージさせます。

 

一般的な住宅やビルの建設に使われる建材は、伐採した木を加工して作られます。しかしこの高層ビルでは、生きた木をそのまま使っているため、まさにこれは「生きた高層ビル」。これからの時代は近代世界を彷彿させるデザインではなく、環境に寄り添ったサステナブルな建物がますます増えていくのかもしれません。

 

2位: 沈むメキシコ市で水を守る

↑雨水をためるための斬新なアイデア(画像提供/eVolo Magazine)

 

もともと湖の上に建てられたことに加え、地下水の汲み上げなどによって地盤沈下が進むメキシコ市。そこで地下水補充のために雨水を貯める機能をビルに持たせたのが、2位に選ばれた作品です。

 

この作品はメキシコ市の洪水危険地域に建設する構想で、高さは400メートル。建物の外壁は10枚のウイングで覆われ、花のつぼみが開くように、このウイングが開きます。パラボラアンテナのように放物曲線を描いた大型のお椀状の傘が、高さ100メートルの地点で開き、雨水を貯めることができるのです。集められた雨水は、一部は地中の帯水層(地下水が貯えられる地層)に送られ、そのほかは家庭用の貯水タンクに送られていきます。これによって洪水のような被害を防ぐ狙いがあります。

 

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3位: 未来版の「長屋」

↑長屋が縦に積み重なっているようだ(画像提供/eVolo Magazine)

 

中国の雲南省には、独自の言葉やライフスタイルを持つモン族がいます。しかし、その文化は現代文明に飲み込まれ、さらに中国政府が、少数民族が暮らす都市への移住を支援していることで多数民族・漢族の流入が続き、モン族の住居の多くが取り壊されてきているそう。コンテストの3位に選ばれたのは、そんなモン族のライフスタイルに沿ったビルの構想です。

 

高層ビルの木の骨格部分に、クレーンで高床式住居を繋げ、いくつもの家を増やしていくアイデア。ビル1棟の中に公園、店舗、ジムのスペースなどが作られ、まるで1つの村ができるようなイメージです。また、ビル内の移動にはエレベーターではなく、モン族が制作を得意とする鳥かごの形をモチーフにした乗り物が作られるとか。

 

無機質な雰囲気が漂う現代的な住居ではなく、モン族の昔ながらのライフスタイルを尊重しながら造られるこのビルでは、江戸時代の日本にあった集合住宅の長屋を彷彿させる暮らしが生まれるかもしれません。

 

コンテストの上位作品はどれも、単に建物の高さを追い求めたビルや、見た目が優れただけのビルではなく、プラスアルファの価値が付いたものばかり。未来には、従来の概念を覆す新しい高層ビルができるのかもしれません。