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Vol.105-3

 

本連載では、ジャーナリスト・西田宗千佳氏がデジタル業界の最新動向をレポートする。今回のテーマは6年ぶりに刷新するOS、Windows 11。果たして、どんな特徴があるのだろうか。

 

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↑「マイクロソフト Windows 11」(価格未定/2021年末一般公開)

 

Windows 11は、技術的に見るとWindows 10の延長線上にある。実のところ、多くの機能は「Windows 10のアップデートで実装する」とされてきた部分が多く、「まったく新しいハードウエアの能力を必要とするもの」はない。だから、「別に11という名前にする必要はなかったのでは」という声もあるのだが。マイクロソフトとしては、マーケティング的な理由でも、サポート的な理由でも「変えたかった」のであり、そこを否定しても仕方がないところがある。

 

前回解説したように、セキュリティ強化のためにTPM 2.0とセキュアブートを有効にしておく必要はあるものの、それ以外だと、Windows 10が快適に動作しているのであれば、Windows 11も問題なく動くだろう。メモリー容量が2GB・4GB、ストレージが32GBといった低スペックなPCの場合、そもそもWindows 10が快適に動作しない。Windows 11の動作条件を満たさなくなるものもあるだろうし、無理にWindows 11にするべきでもない。

 

機能アップという面で、はっきりと「Windows 11の方が有利になる」ことがわかっている部分もある。それはゲームだ。特に、ゲームの読み込み時間を短くする技術である「DirectStorage」がそれに当たる。

 

この技術は、グラフィック表示を司るGPUが、CPUを介さずに直接データを読み込むための機能。今まではCPUで読み込んでからGPUに転送していた関係で管理が複雑化し、読み込み速度を遅くする原因になっていた。DirectStorageはその解消を目指す。

 

実のところ、DirectStorageはWindows 10でも使えるようになるのだが、Windows 11は内部構造をより最適化しているので、さらに効果が上がる。特にこの機能は、高性能GPUと高速なSSDをセットで搭載したゲーミングPCで有効なものであり、Windows 11では「高性能なPCがより性能を生かせるようになる」と考えればいいだろう。

 

タッチ操作の改善も、Windows 10からの強化点と言って良い。Windows 10のタッチ操作は、2012年発表の「Windows 8」をベースに改善してきたものだった。スタートメニューの「タイル表示」などはその最たるものだ。

 

Windows 11ではUIデザインを刷新するとともに、タッチ操作のための専用モードを無くしている。とはいえ、それはタッチ操作から一歩後退したのではなく、「通常のWindowsの画面のまま、タッチ操作をより快適に行えるようにする」改善が行われている。例えばウインドウを動かすときなどは、タッチすると周辺に薄く「ここはタッチして操作できる領域」が表示され、指が画面から離れると消える。マウスとタッチで2つの操作を覚えるのがWindows 8スタイルだったとすれば、Windows 11では「マウス操作と同じ手法のまま、ちょっとタッチも使いやすくする」ようなやり方になった、といえば良いだろうか。

 

また、マルチディスプレイ対応も強化された。

 

Windows 10ではディスプレイを取り外すと設定がリセットされるため、「ノートPCに外部ディスプレイをつないで2画面で使う」場合、毎回ウインドウを並べ直すのが面倒だった。だが、Windows 11では設定を覚えるようになった。ディスプレイをつなぎ直すだけでウインドウの並びなどが再現されるので、かなり快適になった印象がある。

 

だが、どれも「小幅な変化」といえばそれまでかもしれない。Windows 11のもっとも大きな進化面は「アプリを配布するMicrosoft Storeの進化」である、と言っていい。どう変わったのかは、次回のウェブ版で解説する。

 

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