岸田首相は11日午前、感染が拡大する新型コロナウイルスの変異株「オミクロン株」対策について、ワクチン3回目接種の前倒し拡大や、在宅療養の強化を柱とする新たな基本姿勢を発表した。オミクロン株の感染が急拡大する一方、重症化率が低い可能性を踏まえ、医療機関では重症者や中等症患者の治療に重点を置く。
首相は首相官邸で記者団の取材に応じ、オミクロン株について専門家から受けた報告として、「感染力が高い一方、重症化率は低い可能性が高い。一方で高齢者などで急速に感染が広がると重症者の割合が高くなる恐れがある」と述べた。
その上で、首相は、今後は「重症者や中等症患者、そのリスクの高い方々に的確に医療を提供することに主眼を置く」とした。軽症者や無症状者らが入院しなくても自宅や宿泊施設で療養できる体制を整える。
在宅・宿泊療養の強化で増す保健所の負担を軽減するため、医師会、薬剤師会、看護協会の協力を求める。在宅・宿泊療養に対応するための全国の医療機関の数は1万6000に上ることも明らかにした。軽症者が自宅で療養できる体制を確保し、医療機関に患者が集中して病床が
する事態を避ける狙いがある。
さらに、想定を超えて感染が拡大した地域でも医療体制を維持するため、今後、オミクロン株の感染者の入退院基準の見直しを急ぐ考えを示した。
大学などの入試については、濃厚接触者となった受験生などが受験できなかった場合の救済措置として、追試や再追試の実施を改めて要請する。さらに、追試が3月末にずれこんだ場合でも、4月以降の入学を認める柔軟な対応を大学などに要請する考えを示した。
3回目接種について、追加購入で合意した米モデルナ製ワクチン1800万人分を活用し、「3月以降、一般分も前倒しする」と明言した。具体的な対象や前倒し期間などは今後詰める。
2回目との間隔を原則8か月以上とした3回目接種に関し、政府は医療従事者や高齢者ら約3100万人について、2~1か月の短縮を決めている。首相は各自治体に大規模会場の設置などを要請するとし、自衛隊による大規模会場を再び開設する方針も示した。余剰分の900万回分も活用し、さらなる前倒しを目指すとした。
外国人の新規入国を原則停止するなどの厳格な水際対策は2月末まで延長しつつ、国内の医療体制強化に重点を移す考えを強調した。