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小田急線刺傷事件フェミサイド?

小田急線刺傷事件に関しての朝日新聞の記事が気になりました。

朝日新聞がオンライン・セーフティー・フォー・シスターズを紹介

モノ言う女性がたたかれない社会に 安全なオンライン空間を求めて:朝日新聞デジタル

 菱山さんは8月にあった小田急線車内での刺傷事件に関連し、女性であることを理由にした殺人を意味する「フェミサイド」を許さないと発言したところ、「よく切れますよ」との言葉を添えた牛刀の写真が送られてきたという。

朝日新聞がオンライン・セーフティー・フォー・シスターズを紹介し、その中で「フェミサイドを許さないと言ったら「よく切れますよ」と牛刀の写真が」と言われたとする菱山南帆子氏の発言を取り上げています。

酷い話です。

牛刀というのは小田急線車内での刺傷事件で犯人が犯行に用いた凶器です。

牛刀の写真を送ったツイートと送られたツイートと「フェミサイド」

牛刀の写真を送ったツイートは画像にあるアカウント(削除済み)による以下のもの。

ハッシュタグを見て何の事かと思ったら下に産経のツイートがありました。
あたしも業務用の牛刀持っています。
上のが牛刀、下のが三徳包丁。
よく切れまっせ!

タイミングとしてあまりにも不見識ですし、不穏な意図を感じ取っても仕方がないと思います。しかし…

「フェミサイド」を許さないと発言したところ

なんでしょうか?

菱山南帆子氏のツイート検証「フェミサイドを許さない」と時系列

菱山南帆子氏のツイートで「フェミサイド」が含まれるツイートを検索すると⇒

https://archive.is/EYEE9

最初に見つかるのが8月7日午前11時19分の以下のツイート。

「完全にフェミサイド」と発言。

上掲の「#幸せそうという理由で私たちを殺さないで」とだけ書かれたツイートはその次にツイートされており、同日の午後0時29分のツイートです。

ということで、「フェミサイドを許さないと発言したところ」というのは事実関係として違います。

また、牛刀の写真を送ったツイートは短時間で削除されていることを観測した者もおり、その意図は不明です。

「フェミサイドを許さないと言うと「よく切れます」と牛刀写真」は…

ということで、「フェミサイドを許さないと言ったら「よく切れますよ」と牛刀の写真が送られた」というのは、時系列が揃っていません。

そこはさておき。

小田急線車内での刺傷事件は「フェミサイド」でしょうか?

小田急線車内の刺傷事件を「フェミサイド」と呼ぶ弊害

小田急線刺傷事件を「フェミサイド」と結論づけるのが極めて危険な理由 事件の「背景」を覆い隠してしまう | PRESIDENT Online(プレジデントオンライン)

まず大切なことですが、「フェミサイド」の意味の公約数的見解は、「女性を標的とした殺人」です。

  1. 女性を標的にした
  2. 殺人

加害者の男女別の撤廃や人数の制限をも無くした結果、現在の理解になっています。

「差別に基づく」という実質を求める定義もあるようですが。

小田急線刺傷事件は…

名前からして答えが明確なのですが、不幸中の幸いなことに死者は出ていません

そのため、事件の内容について不用意な印象を持たせてしまう「小田急フェミサイド」という呼称は、不適切なのではないか。

ただ、「犯人に殺意はあった」という点でフェミサイドの実質を認めるべきという見解もあり得ると思います。未遂も含めてフェミサイドと呼ぶ用語法。

もっとも、「女性を標的に」したというのは確定事実でしょうか?

被害者は男女5人ずつ、犯人供述「誰でもよかった」「6年ほど前から幸せそうな女性を見ると殺してやりたいと思うようになった」

小田急線刺傷 容疑者、女子大学生に複数回切りつけ 追いかけ襲ったか 8/8(日) 18:36 yahoo!ニュース 毎日新聞 魚拓

捜査関係者によると、今回の事件の被害者は男性と女性が各5人。そのうち切られたのは女性3人と男性1人の計4人だった。切りつけられた被害者のうち、執拗(しつよう)に襲われて重傷を負ったのは大学生のみといい、そのほかは対馬容疑者が振り回した刃物が当たってけがをしたとみられる。「(相手は)誰でもよかった」とも供述している。

(相手は)誰でもよかった

という供述がありますが、前項の記事では聴取初期の調書の常とう句とされているように、本心がどこにあるかはよくわからないとしか言いようがない。

また、以下のような動機を伺わせる記述も。

小田急線車内で10人重軽傷 36歳の男を殺人未遂容疑で逮捕「幸せそうな女性を殺してやりたいと思った」、床にサラダ油まく:東京新聞 TOKYO Web

6年ほど前から幸せそうな女性を見ると殺してやりたいと思うようになった」「逃げ場がなくて大量に人を殺せるから電車を選んだ。誰でもよかった」と供述しているという。

ー省略ー

容疑者は登戸駅で6号車に乗車。先頭の10号車に向かって移動し、7号車で4人に切り付ける様子が車内の防犯カメラに写っていた。8号車では床にサラダ油をまいて火を付けようとしており、「大量に人を殺せると思った」と供述しているという。

6年ほど前から幸せそうな女性を見ると殺してやりたいと思うようになった

とありますが、同時に「大量に人を殺せる」と思ってサラダ油をまいて火を付けようとしており、事件当時の犯人の対象選択に女性が最優先にあったのか否かは現時点では不明です。

女性を必ず狙い、その後はなるようになればいい、というような場合などにはフェミサイドの実質はあると言えるでしょう。

本件では他の被害者は女子大生が最初に被害を受けた後、包丁を振り回された結果、ということがその要素を匂わせます。

しかし、その後に放火も予定していたということから、専ら女性を狙っていたのかどうかが曖昧な状況が生まれているとも言えます。

結局、公判を通じて明らかになる、くらいしか今の段階では言えないでしょう

まとめ「フェミサイド」なのかは言葉の定義と事案解明次第

小田急線刺傷事件はフェミサイドなのか

それは「フェミサイド」という言葉の定義と犯人の動機・目的という事案解明に左右され得るという状態にあるのではないでしょうか。

言葉の定義の関係で言えば、現時点では何か殺人が起きて被害者が女性ならフェミサイドと呼びうることになっていますが、果たしてそれで良いのでしょうか?

フェミサイドという言葉に込められた「敢えて女性を標的にする心情とそれを助長する或いは阻止できない環境・社会」という非難要素が、今現在の用語法ではスポイルされてしまうのではないか?

「フェミサイドを許さないと言ったら牛刀の写真が…」という事実関係を歪めた記事も、「フェミサイド」というワードの使用者への意図しない感情を喚起させてしまうのではないでしょうか?

さて、「フェミサイド」を浸透させることで何を狙っているのか?

女性を狙った加害行為の法定刑を加重するとか、そういう立法を狙っているような気がしますが、ならば子供は?老人は?という話にもなり、尊属殺重罰規定の際と同じ議論が展開されるかもしれません。

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