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ステイホーム&テレワークが広がり、自宅で長時間を過ごすことが増えた今日この頃。これに影響を受けたAV機器のなかでも、このところ流行しているのが「耳をふさがずに耳元で音を出す」というイヤホンやスピーカーです。

 

パナソニックが2021年10月下旬に発売する「ネックスピーカーシステム SC-GN01」(実勢価格:2万2000円)は、首もとを囲むように前2つ+後ろ2つにレイアウトされたスピーカーにより、4chサラウンドが手軽に楽しめる製品。そのうえでゲーミング用途に特化したことが特徴で、開発にはあの「ファイナルファンタジーXIV」(スクウェア・エニックス)のサウンドチームも参加。RPGやFPSなどのゲームプレイに最適な音作りはもちろん、ゲーマーが本当にほしいスピーカー像を細部まで追求したモデルとなっています。

↑パナソニック「ネックスピーカーシステム SC-GN01」

 

↑肩に乗せるように装着します

 

個人的にも昨年からゲームをプレイする時間が飛躍的に伸びていること、またペットを飼っているため家の様子を気にしながらプレイしたい(=耳をふさぎたくない)という事情もあり気になっていた1台。今回はこの「SC-GN01」をレビューさせていただきたいと思います。

 

USBケーブル1本でつながる首もと用スピーカー

本製品の大きさ(幅)は240mm、重さは約244g。手にとってみると、4つのスピーカーを搭載しているだけの大きさと重量感がありますが、そのわりに実際に装着した際の負担は軽め。首もとのシリコンゴム製パッドであったり、鎖骨のあたりを左右4点で支える構造であったり、負荷がかかりにくいよう工夫されていると感じます。

↑手に持つとそれなりの重量感

 

↑本体底面は、中央(頂点)の部分と、接地する4点にシリコンゴム製のパッドが使われています

 

使いかたは、Windows PCやゲーム機とUSBケーブル1本でつなぐだけ。接続すると自動的に電源が入ります。なおUSB接続式ということで、ステレオミニプラグでつなぐ一般的なヘッドホンと性質が違う点は購入前に間違えないようにしておきましょう。

 

ゲーム機としては、PS4、PS5、Nintendo Switch(TVモード)とのUSB接続に対応。Xbox One・Series S/XやNintendo Switchのテーブル/携帯モードの場合は、付属の音声接続コード(ステレオミニ端子)を併用してつなぎます。

↑PS4との接続はUSBケーブル一本でOK

 

↑付属の音声接続ケーブルを使えばテレビなどのイヤホン端子と接続することもできますが、USBケーブルによる給電も必要なので、接続時にケーブルが2本必要になります

 

接続がBluetoothなどのワイヤレスではなく「いまどき有線?」と思う人もいるかもしれませんが、ゲームの場合は無線接続による音のわずかな遅延がストレスになるケースが少なくありません。バッテリー残量を気にする必要もないので、ゲーミング特化型の製品として有線にこだわったのは間違いないと思います。

 

そのうえでケーブルの長さが足りないとちょっと厳しいところですが、本製品のUSBケーブルは3mとかなり長め。装着したままイスから立ち上がったり、多少歩きまわっても大丈夫な作りが好印象です。ただしケーブルが長いぶん、使わないときはけっこうかさばります。ケーブルを束ねて壁などに掛けておくか、使うたびに箱にしまうか……片付けにはちょっと工夫が必要かもしれません。

↑3mもの長さがあるUSBケーブル

 

「FF14」はもちろん、レトロゲームでも没入感バッチリのサラウンド効果

ネックスピーカーがどんな音量で鳴るものなのかは、実際に体験してみないとわからないポイントです。本製品は(ヘッドホンではなく)あくまでスピーカーなので、「鳴らしている音は近くにいる人にほぼそのまま聴こえる」と思ってもらって間違いないでしょう。ただし耳のすぐそばで音を出すぶん、音量を絞っていても使用者には低音まではっきりと聴こえます。

 

深夜など、家族や近所に音量を配慮できる意味合いもあると思いますが、筆者宅ではそれ以上のメリットも。というのも、リラックスしてゲームをプレイしたい時間はだいたいいつも食器洗い乾燥機を稼働させているんですよね。近くでゴォン、ゴォンと大きな音がするなかでのゲームはボリュームをいくら上げようが厳しいものがあったので、耳元で聴き取りやすいスピーカーというのは効果が大きかったです。

↑ネックスピーカーの右側面には音量の調整ボタンとミュートボタン、左側面にはマイクのミュートボタンとサウンドモード切り替えボタンを備えています

 

そして、ここからは「SC-GN01」を着けてPS4でプレイしてみたゲームの具体例を少しずつ紹介します。まず外すわけにいかないのが「ファイナルファンタジーXIV」。製品の設計に本作開発者が直接携わったという特別なタイトルです。

(c)2010-2021 SQUARE ENIX CO.,LTD.All Rights Reserved.

 

本作では音楽やキャラクターボイスといったもののほかに、木々のざわめき、川のせせらぎ、鳥のさえずりなど、四方で鳴るあらゆる環境音にもこだわったサウンドすべてが重要な要素。「SC-GN01」の4chサラウンドを生かすことで、それらを臨場感たっぷりに楽しめます。周囲のモンスターや人物の近さ・遠さも耳で感じ取ることができ、かなり深く世界観に入り込めました。これはボリュームもできるだけ大きめにして没頭したい。

 

また、「SC-GN01」には6種類のサウンドモードがプリセットされており、本体のボタンを押すことで切り替えができます。このなかに「RPG」や「FPS」というモードがあるのが独特で、特にRPGモードは「ファイナルファンタジーXIV」のためにある……というのはさすがに言いすぎかもしれませんが、ベストマッチの設定であることは間違いないでしょう。通常のステレオモードと比べると、RPGモードでは迫力と「包み込まれる感」が圧倒的にアップしたと感じました。

 

もう1本は、方向性がまったく違うタイトルとして「VA-11 Hall-A ヴァルハラ」をチョイス。こちらは懐かしタッチのアニメ風ドット絵アートと、バーテンダーになってお客さんにぴったりのカクテルを振る舞うというゲーム性がユニークな作品。キャラクターボイスはありませんが、あらかじめ用意された数十曲から選んで流せる店内BGMのクオリティに定評があり、これをネックスピーカーで堪能することにしました。

 

プレイ後の感想としては、バーにいる臨場感がグッと上がる感じがあり、“お酒のアテ”としても楽しめる本作との相性は良好。ゲームそっちのけで好きな曲をエンドレスで聴き続ける楽しみ方もありますが、この際のスピーカーのモードは通常の「ステレオ」や「ミュージック」よりも「RPG」にしたほうがやはり没入度が高く、個人的には気に入っています。

 

そしてもう1本は正真正銘のレトロゲームですが、特徴的な低音がちゃんと出ている(聴こえる)かどうかでゲームの印象がまったく変わるタイトルとして「ダライアス」をプレイ。「グラディウス」「R-TYPE」と並ぶ横スクロールシューティングの御三家といわれる名作です。PS4/Nintendo Switchでは「ダライアス コズミックコレクション」として、かつて1980年代後半のゲームセンターで稼働した超ワイド画面を完璧に移植したものが発売されています。

 

オリジナル(アーケード版)は小屋のような筐体に入り込んでプレイするスタイルであり、その中でプレイヤーを包み込む重低音が肝だった本作。「SC-GN01」の持つ低音域の性能とサラウンドの効果はこれと相性がよく、ドスドスと無機質なビートが響く都市地帯ステージ、ボス戦突入を告げる「WARNING!」の警告音など、音響の臨場感は抜群。結果的に今回試したなかでも最もテンションが上がる1本となりました。

 

最後は余談レベルですが、PS4の「torne(トルネ)」アプリを使ってゲームの休憩がてらテレビ番組も観てみました。音がいいことはあらゆるシチュエーションに有効で、「ながら聴き」のニュース番組も聴きやすい。人の声が埋もれて聴き取りにくいときは、スピーカーのモードを「ボイス」に変更すると尚良しです。

→「torne」についてレビューした記事はこちら 

 

非対応のゲーム機や「ゲーム実況」との相性も試してみる

さらに、「SC-GN01」のやや特殊な使い方についても見ていきます。本製品はUSB接続式のスピーカーということで、USB端子があればPS3など旧世代のゲーム機でも使えそうな気がしてしまいますが、残念ながらそれらと普通につないでも音は出ません。ただし前半でも紹介したように、製品に付属する音声接続コード(ステレオミニ端子)を使えばアナログ接続で音を出すことは可能です。USBケーブルによる給電が必須、また赤・白のオーディオ端子をステレオミニプラグに変換するケーブルなども別途用意する必要があり手間はかかりますが、音そのものはアナログで出せることを確認できました。

↑赤・白のオーディオ端子をステレオミニプラグに変換するこのようなケーブルを用意すれば、強引ながら古いゲーム機の音を出力することも可能です

 

そして本製品で個人的に試してみたかったのが、ゲーム実況配信の用途です。ゲーム実況は「ヘッドセットで音を聴きながらしゃべる」というスタイルが一般的ですが、筆者の場合は長時間のプレイ時に耳をふさいだままにするのは避けたく、「通常のスピーカーで音を聴きながら実況できる」という状態が理想でした。

 

その上でいくつかの機材を試してきましたが、スピーカーから出たゲームの音をマイクが拾うため、ゲームの音が回ってしまう。つまり、エコーのように音が二重になった状態で配信されてしまうわけです。BGM程度であればそこまで気にならないのですが、キャラクターボイスがあるゲームだと、あらゆるセリフに無用なエコーが付くので実用的にはちょっと厳しいところ。

 

「SC-GN01」には、スピーカーから出力されるゲームの音をあらかじめデジタルの逆位相で打ち消し、その音をマイクで拾わないようにするという「エコーキャンセルマイク」という機能が入っています。こちらはゲームプレイ中のボイスチャットに便利な機能としてアピールされているのですが、同様にマイクを使うゲーム実況にもメリットがあるのでは? とひそかに期待していた部分です。

 

結論から言えば、エコーキャンセルマイクの効果は確かなもので、本来ならかかってしまうゲーム音のエコーをきれいになくすことができました。正直、それだけでもかなり画期的ではあるのですが、「ゲームの音量より配信者の声がクリアであることが重要」という実況配信を前提としたマイクとしてはやや及ばずという印象も。デフォルトだと実況の音声が音量不足ぎみになるので、マイクのプロパティ上で音量を上げたり、ゲーム側の音量を下げたりしながらバランスをとって使うことになります。この際、マイク音量をあまり上げてしまうとノイズが乗りやすくなるので、適度に設定するのはちょっと難しかったです。

↑PC上でマイクの入力レベルを上げることで音量調節はできますが、規定以上の音量にするとノイズが入りやすくなります

 

音質と装着感は申し分なし。ゲーマーのあいだでは大人気の予兆も

普段のゲームを楽しむための音質、臨場感はバッチリ。重量がそこそこあるものの装着感はよく、首に掛けたまま6時間連続のプレイでも負担に感じない作りはさすがでした。さらにエコーキャンセルマイクも優秀だっただけに、さらにマイクの性能を重視した「実況配信者向けモデル」も出してほしい……という欲が出てしまうのは、さすがにニッチな願望すぎでしょうか。

 

2万円台とスピーカーとしてはそこそこ本格的な本製品ですが、パナソニックの本製品サイトによれば“「SC-GN01」は、想定を大幅に上回るご注文をいただいております。現在、生産体制の強化を図っておりますが、今後のお客様へのお届けにお時間をいただく場合がございます”という告知も掲載。音にこだわるゲーマーからはすでに高い期待を寄せられているようなので、気になった方は早めのチェックをおすすめします。

 

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