「電子タバコは一般的なタバコ(紙巻きタバコ)に比べて害が少ない」と考える人がいます。
しかし、アメリカや他の国で販売されている「ニコチンを含む電子タバコ」の危険性を軽視してはいけません。
最近、アメリカ・ニューヨーク大学(NYU)グロスマン医学部に所属するオマール・エル・シャウィー氏ら研究チームが、電子タバコと性機能の関係を初めて調査しました。
その結果、ニコチンを含む電子タバコを吸うと、勃起不全(ED)になるリスクが2倍以上も高くなると判明したのです。
研究の詳細は、11月30日付の医学専門誌『American Journal of Preventive Medicine』に掲載されました。
目次
- 電子タバコは害がない?
- 電子タバコを日常的に吸う男性は、勃起不全になるリスクが2倍高くなる
電子タバコは害がない?
電子タバコとは、専用カートリッジ内の液体(リキッド)を電気加熱して、発生する蒸気を楽しむ製品です。
現在のところ、日本国内ではニコチンが含まれるリキッドの販売は承認されておらず、「電子タバコといえばノンニコチン」という考えが主流です。
そのため「電子タバコには害がない」という、ざっくりとした考えをもつ人が多いようです。
とはいえ、ニコチン入りのリキッドは海外で使用したり、個人輸入したりできます。
また電子タバコと混同されやすい加熱式タバコ(タバコ葉を電気で加熱するもの)には、紙巻きタバコと同様の成分が含まれています。
さらにアメリカを含むいくつかの国では、ニコチン入りの電子タバコが普及しており、紙巻きタバコの代替品として利用されることも多いようです。
そのため世界的にも、ニコチン入り電子タバコのリスクを明確にすることが課題だと言えます。
こうした背景にあって研究チームは、ニコチン入り電子タバコが悪影響を及ぼす1つの分野を調査することにしました。
電子タバコと性機能の関係に初めて踏み込んだのです。
電子タバコを日常的に吸う男性は、勃起不全になるリスクが2倍高くなる
研究チームは、「PATH:Population Assessment of Tobacco and Health Study(タバコと健康に関する人口調査)」という18歳以上のアメリカ人4万人以上を対象とした代表的な研究データを利用。
このデータのうち、20歳以上の1万3000人の男性のデータを抽出・分析することにしたのです。
その結果、ニコチン入りの電子タバコを日常的に使用していた男性は、電子タバコを使用したことがない男性に比べて、勃起不全である確率が2.2倍も高くなっていました。
またBMIが正常で心血管疾患を患ったことのない65歳未満の男性を対象とした小規模なサンプルを分析しても、電子タバコを吸っている人は、そうでない人に比べて勃起不全になる確率が2.4倍も高いという結果になりました。
エル・シャウィー氏はこの結果について、次のように述べています。
「ニコチン入りの電子タバコを通常のタバコに代わる健康的なものだと考える人がいるかもしれません。
しかし、ニコチンを過剰に摂取することには常にリスクが伴います。
ニコチン入りの電子タバコに乗り換える男性は、それだけでリスクがなくなるわけではないので、しっかりと使用限度を設けるべきです」
さらに「タバコが男女ともに性機能障害を引き起こす」ことは、以前から専門家たちによって指摘されていたようです。
これは高濃度のニコチンが血管の機能を損なうからだと考えられています。
さて日本でも、個人輸入したニコチン入りの電子タバコを吸ったり、加熱式タバコや紙巻タバコがやめられなかったりする人はいるでしょう。
性機能が心配なら、制限するか、きっぱりと禁煙した方がよいかもしれませんね。
参考文献
Men who vape have a higher risk of erectile dysfunction compared to non-vapers, study finds
https://www.insider.com/men-who-vape-higher-risk-erectile-dysfunction-than-non-vapers-2021-11
元論文
Association of E-Cigarettes With Erectile Dysfunction: The Population Assessment of Tobacco and Health Study
https://www.ajpmonline.org/article/S0749-3797(21)00429-3/fulltext#%20