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2044年の渋谷、2022年の渋谷、2033年の池袋を舞台に暴れまくった“大パルコ人”シリーズ の第4弾「愛が世界を救います(ただし屁が出ます)」にのんさんが出演! 作・演出を手掛けるのはもちろんシリーズの生みの親、宮藤官九郎。『あまちゃん』以来のタッグとなる今作に、のんさん自身も「特別な舞台になりそうです」と大きな期待を寄せる。本番を前に、その思いをたっぷりと語っていただきました。

 

◆最初に、今作の出演オファーがあった時の気持ちをお聞かせください。

“やったー!!”という感じでした(笑)。宮藤さんとはNHK連続テレビ小説『あまちゃん』でご一緒し、打ち上げでのあいさつの時、宮藤さんが「次は50歳になったころに、泉ピン子さんと橋田壽賀子さんみたいな関係性でまたお仕事ができたらいいなと思ってます」とおっしゃっていたんです(笑)。その記憶がずっとあったので、私としては“思ったよりも早く一緒にお仕事ができてうれしい!”という思いがありました。

 

◆また、今回の「愛が世界を救います(ただし屁が出ます)」は大パルコ人シリーズの第4弾です。どのような印象をお持ちですか?

過去の3作品はどれも人気ですし、私も大好きでした。お芝居と音楽が融合された舞台で、音楽が毎回すごくカッコいいんです。それに、物語の中に壮大なテーマが盛り込まれていて、思いっ切り笑えるシーンもあれば、ふいにグッと心をつかまれる場面もあって。今回そこに参加できると思うと、ワクワクの気持ちでいっぱいです。

 

◆出演にあたって、宮藤さんと何かお話はされたのでしょうか?

最初に、まだコロナ禍になる前にお会いして、いろいろとお話をさせていただきました。その時、「大丈夫ですか?」と聞かれたんです(笑)。その時点で、大パルコ人の最新作ということは決まっていたのですが、プロットもまだできていなくて。それでも、私から「お願いします!」とお答えしたのを覚えていますね。

 

◆その「大丈夫ですか?」というのはどういう意味だったんですか?

いや、分からなかったです(笑)。私も “何に対しての大丈夫なんだろう?”と思っていて(笑)。でもプロットを頂いた時に、“あ、こういう心配だったんだな”と理解しました。

 

◆と、言いますと?

まず、タイトルからしてびっくりしたんです。サブタイトルにある「(ただし屁が出ます)」も、最初は仮題なのかな…と思っていたら、それが正式なタイトルで(笑)。物語の内容も、これまで大パルコ人シリーズを拝見していたとはいえ、全く予想できない展開ばかりで。(村上)虹郎さんのキャラクターも、私が演じるキャラクターも、どれも驚くようなことばかりでしたが、でもそれ以上に楽しそうだなと思いました。

 

◆今回演じるのはテレパシーが使えるNONという少女です。現時点でどのような役にしていきたいと考えていますか?

宮藤さんが書かれる本は、台本の段階でキャラクターがすごく面白くて、後は役者がいかにそれを体現できるかどうかにかかってくると思うんですね。今回演じるNONに関しては大きなエネルギーに満ちた役だと思いますので、自由な生命力を舞台上で見せられるように頑張りたいなと思っています。また、稽古の初日にみんなで読み合わせをしたのですが、共演者の方々がすごすぎて。ずっと笑いっぱなしでしたので、何とかついていかなきゃ! という思いでいっぱいです。

 

◆確かに共演者は豪華で個性的な方ばかりですね。

そうなんです。伊勢志摩さんとは『あまちゃん』でも共演させていただきましたが、私の初舞台だった『私の恋人』にも片桐はいりさんと一緒に見に来てくださったりして。しかも、『私の恋人』では男の役だったのですが、お2人とも初舞台は男性役だったそうで、「同じ側の仲間みたいに感じた」と言ってくださったんです。それがすごくうれしくて。それに、私自身も伊勢さんのお芝居の大ファンなので、またご一緒できるのが本当に楽しみです。荒川(良々)さんとも久々の共演になりますが、あの独特なせりふ回しや間の取り方は唯一無二の存在ですよね。三宅弘城さんもそうですが、近くにいてお芝居をするのがすごく楽しいので、ぜいたくな時間をたっぷり味わいたいと思っています。

 

◆村上虹郎さんとは初共演ですね。

はい。勝手なイメージですが、鋭い存在感のある方という印象があります。稽古場でも才能の塊のようなオーラを発していて。すごくうらやましいです。また、藤井隆さんとも初めましてですが、以前から藤井さんが歌われている楽曲が大好きで。前に、清水ミチコさんのコンサートに伺った時、ゲストで登場した藤井さんが歌った曲にすごく感動して、帰り道で踊りながら歌って帰った思い出があるぐらいなんです(笑)。今回の舞台でも藤井さんが歌うシーンがありますので、それもすごく楽しみですね。

 

◆また、今回は役者としての宮藤さんとも同じステージに立つことになりますね。

何だか変な感じがしますね(笑)。『あまちゃん』の時は、時々あいさつをさせていただくぐらいで、ずっと遠い存在だったんです。ですから、同じ稽古場でせりふをしゃべっている宮藤さんを見ると不思議な感覚になります。もちろん、俳優として出演されている舞台や映像作品を拝見しているので、決して珍しい光景ではないんです。でも、最初に読み合わせをしたときは、“宮藤さんがせりふをしゃべってる!?”っていう気持ちになりました(笑)。

 

◆(笑)。では、のんさんが感じる宮藤さんの作品の魅力とは?

今回の台本を読んだ時にも感じたのですが、小学生がそのまま大人になったような才能をお持ちだなと思いました。小学生のころって、誰もが面白く、柔らかい発想力を持っていて、みんな天才だと思うんです。そうした感性をずっと持ち続けている方ですし、そこがものすごくすてきで憧れます。それに、宮藤さんが書かれるお話には登場人物たちの悪い一面や恥ずかしいところがストレートに描かれていて、それなのに不思議と気持ちよさや愛おしさを感じるんですね。今回のNONという役も、超能力を使おうとすると変な顔になるという笑える要素を付け加えているところが宮藤さん節なのかなと感じますし(笑)、そうしたバカバカしさがありつつも、突然心臓に突き刺さってくるすてきなせりふも散りばめられているんです。しかも、そうやって大笑いをして油断している時に、ふいに鋭く刺さってくるから、より素直な気持ちで宮藤さんのメッセージを受け止めることができる。そうしたところも宮藤さんの作品の魅力であり、大好きなところですね。

 

◆また、のんさんにとって舞台の面白さとはどんなところでしょう?

「私の恋人」で初めてステージに立って感じたのは、やはりライブであることの楽しさでした。目の前にいるお客さんからすぐに反応が返ってきますし、お客さんを含め、劇場にいる全員で1つの空間を作り出しているという感じがして、すごく気持ちよかったんです。また、稽古で1か月かけて役を作っていくのも、とても勉強になりました。最初は時間をかけてキャラクターを形にしていくことにすごく手こずったんです。本番が始まってからも手こずることがありましたが、ある瞬間に“こういうことか!”と腑に落ちる時があって。回を重ねるごとにその頻度が多くなっていったので、そうやって作品や役とずっと向き合うことの面白さを感じられるのも舞台の魅力ですね。

 

◆宮藤さんに直接演出をつけてもらいながら役を作り上げていく今回も楽しみですね。

はい! “以前よりは成長しているな”と思われたいですね(笑)。それに、いつもだと“こんな自分を見せていきたい”と考えるほうではないのですが、それでも宮藤さんには、“やっぱりすごい役者だな”って思われたいなという気持ちもあります。あとは…ギターを弾くシーンも用意してくださったので、そこがうまくできたら褒めてほしいなって思います(笑)。

 

PROFILE

のん

●1993年生まれ、兵庫県出身。2016年公開劇場アニメ『この世界の片隅に』にて主人公すずさんの声を務める(第38回ヨコハマ映画祭「審査員特別賞」受賞)。2017年自身のレーベル「KAIWA(RE)CORD」を発足。2018年展覧会『‘のん’ひとり展‐女の子は牙をむく‐』を開催するなど、“創作あーちすと”としても活躍。2020年映画「星屑の町」、「8日で死んだ怪獣の12日の物語─劇場版─」、「私をくいとめて」(日本映画批評家大賞「主演女優賞」受賞)などに出演。自身が監督・脚本・主演を務める映画「Ribbon」は2022年に公開予定。オンラインライブ『のん おうちで観るライブ』を積極的に開催中。

 

作品情報

舞台大パルコ人④「愛が世界を救います(ただし屁が出ます)」

2021年8月9日(月)~8月31日(火)東京・PARCO劇場
2021年9月4日(土)~9月12日(日)大阪・COOL JAPAN PARK OSAKA WWホール
2021年9月15日(水)~9月17日(金)仙台・電力ホール

東京公演ライブ配信:8月18日(水)18・00~
チケットなど詳細はhttps://stage.parco.jp/program/majirock/

 

(STAFF&CAST)
作・演出:宮藤官九郎
音楽:上原子友康(怒髪天)
出演:のん、村上虹郎、三宅弘城、荒川良々、伊勢志摩、少路勇介、よーかいくん、YOUNG DAIS、宮藤官九郎、藤井隆

 

(STORY)
11年前の戦争(「R2C2~サイボーグなのでバンド辞めます!~」)で一度崩壊した渋谷。復興は遅々として進まず、若者たちは労働意欲をなくし、街は廃虚と化していた。そんな渋谷に1人の少女が姿を現す。NONと名乗る彼女(のん)はテレパシーの持ち主だったが、能力を使うとなぜかダミ声になるという弊害があった。また、彼女が出会うにじろー(村上)もまた予知能力を持っていたものの、その力を使うには必ず屁を出さないといけないという悩みを抱えていた…。

●photo/干川 修 text/倉田モトキ hair&make/菅野史絵 styling/町野泉美