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キリン同士が戦うとき、彼らは長い首を強くぶつけ合います。イギリスの研究チームが、そんなキリンの行動を観察したところ、キリンの若いオス同士が行う「スパーリング」と呼ばれる戦いでフェアプレーが見られることを発見しました。

↑スパーリングをするならフェアプレーで

 

キリン同士は、長い首を大きく振って、頭を激しく相手に打ちつけて戦います。これは、群れのヒエラルキーを決めたり、メスを巡って争ったりするときに、主に若いオス同士が行いますが、その中には、専門家の間で「スパーリング」と呼ばれる行為もあります。

 

このスパーリングは1958年に初めて報告されましたが、定量的な調査はまだほとんど行われていません。「これは真剣勝負なのか? それとも練習や遊びなのか?」 という区別も明確ではないそう。

 

そこで、英国・マンチェスター大学の研究チームが、南アフリカのモガラクエナ川保護区で、2016年11月から2017年5月までの約半年間にわたりキリンの観察を行い、スパーリングの頻度、時間、強度、その後の影響などについて記録しました。その結果、スパーリングには興味深い特徴が3つ見られたのです。

 

1: 体格と年齢が近い相手とスパーリングする

身体の大きさが違うキリン同士の戦いでは、小さいほうが不利になるもの。しかしキリンのスパーリングでは、体格と年齢が近い相手を選んで行っていることがわかりました。

 

2: 右利き・左利きを考慮する

キリンには首を左右のどちらに振るか好みがあるようで、右利きと左利きのキリンがいることがわかりました。スパーリングでは、2頭が頭と頭で向き合う体勢をとるか、一方の頭ともう一方の尾が向き合う体勢のどちらかを取りますが、体勢を選ぶ際、2頭は相手の利き手を考慮しているようです。つまり、キリンは相手に取って不利となるサイド(利き手でない側)を攻撃しないように、お互いの体勢を取っていたのです。

 

3: 相手にケガをさせない

キリン同士による本気の戦いでは、頭上にあるコブのような角を相手に刺すこともあり、激しい闘いで角が折れたり身体にダメージを負ったりする場合があります。しかし、若いオス同士のスパーリングでは、ケガをするキリンはいませんでした。

 

これらの特徴から、同研究チームは、スパーリングの目的は真剣勝負ではなく、フェアプレーの精神で自分の戦闘能力を試すことにあると述べています。練習や遊びに近いと言えるでしょう。

 

キリンのスパーリングについては、明らかにされていない部分がまだありますが、今回の研究結果は、キリンの間にはマナーがあり、キリンは実にスマートな動物であることを示しています。

 

【出典】Granweiler, J.,  Thorley, J., &  Rotics, S.  Sparring dynamics and individual laterality in male South African giraffes. Ethology.  2021: 127;  651– 660. https://doi.org/10.1111/eth.13199