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「光触媒」をご存知ですか? 太陽や蛍光灯の光が当たると、強力な酸化力を生み出し、接触する有機物や細菌などの物質を焼却してしまう環境浄化材です。カルテックは、この光触媒を室内の空気の浄化に利用する製品のメーカーです。今回、新たに4製品をリリースし、うち1つは新たな商品ジャンルとして、光触媒で食品ロス削減に貢献する製品とのこと。早速、発表会の様子をご紹介しましょう。

↑カルテックが発表した4つの新製品

 

↑4製品の名称、発売日、市場想定価格の一覧

 

そもそも光触媒って?

そもそも、光触媒って何? どうやって使うの? と思う人も多いのではないでしょうか。

 

空気を浄化すると聞くと、イオンやオゾンなどを放射しているのかと感じるかもしれませんが、そうした放出物はありません。原理はフィルターで汚れを濾し取るのと同じ。違いは濾し取った汚れが分解されるため、お手入れの手間が少ないということ。

 

光触媒の主材料は、二酸化チタンです。二酸化チタンは、化粧品、塗料、食品添加物、建造物の壁面などにも利用されている一般的な成分で、光が当たると活性酸素を生成して接触する物質を吸着し、酸化させて水と二酸化炭素に分解する性質を持っています。酸化とは平たく言うと「燃やす」のと同じ意味です。

 

光触媒で取り除けるものは、簡単に言えば「燃える物」です。花粉やハウスダスト、カビ菌やニオイ原因菌などの細菌、そしてウイルス。新型コロナウイルスの変異株が空気感染するのではないかとの噂もささやかれる昨今、空気中の不純物を取り除けるとなると、その効果も気になるところです。

↑光触媒によるSARS-CoV-2の不活性化の効果検証をまとめたスライド

効果検証によれば、光触媒による液体中やエアロゾル中のSARS-CoV-2(新型コロナウイルス感染症:COVID-19)の不活性化に有意な結果が出ているそうです。

 

食品を美味しく長持ちさせるフードフレッシュキーパー

そんな光触媒の性質を利用して、食品の保存性を高めようというのが、新製品のひとつ、「フードフレッシュキーパー」です。前面で開閉できるフタの付いた箱状の製品で、本体サイズは幅370×奥行256×高さ235mm、重量は約2.3kg、容量は約10リットル。食パン1斤がちょうど入るくらいの大きさです。2021年12月15日発売で実売想定価格は2万1780円(税込・以下同)となります。

↑フードフレッシュキーパーのふたを閉じたところ。この状態で中のフードを保鮮・除菌・脱臭します

 

本体内にパンや果物などのカビが生えやすいものや、作りおきの料理、冷蔵庫の中で場所をふさぎがちな調味料などを入れ、本体内の空気を光触媒ユニットで除菌することで、食品に落ちるカビ菌などの落下菌を分解して、食品の保存性を高めます。

 

青果物はもちろん、パン、乳製品、調味料、お酒などもOK。脱臭効果もあるので、納豆やニンニクなど、ニオイを抑えて食べたいものにも有効とのことです。

↑フードフレッシュキーパー「KL-K01」の使用イメージ。空気中のカビ菌を分解し、パンへの付着と繁殖を抑制します

 

フードフレッシュキーパーの光触媒ユニットは、内側の銀色のカバーを外した内側にあります。電源を入れるとLEDが青紫色に光って光触媒ユニットに当たり、強力な酸化力が発生する仕組みです。

↑フードフレッシュキーパーに搭載する光触媒ユニットを取り出して見せるカルテックの染井潤一社長。光触媒ユニットは手のひらにすっぽり入るくらいのサイズです

 

↑光触媒ユニットに青紫色の光を照射すると、強力な酸化力が発生します

 

↑効果検証では、光触媒なしだと9日後に黒カビが目に見えて繁殖したのに対し、光触媒ありだとカビは見られなかったとのことです

 

ちなみに光触媒ユニットのお手入れは、光触媒フィルターごと80〜100℃の熱湯に15分以上浸け置きし、天日で自然乾燥させるだけ。使用時間が約3か月を超えると、ランプでお手入れを促します。

 

また、フードの開閉に使うハンドルには、吉野杉の間伐材を採用。同じ色や質感のない木材を毎日触れる場所に用いることで、使っていくうちに風合いが出てくるのもポイントになっています。

 

ピンポイントな空間で空気を浄化する3製品

光触媒を利用した3種類の除菌脱臭機も同時に発表されました。一度にリリースすることになった背景には、世界的な半導体不足があり、今回まとまった量の調達がようやく実現したことから、一気に製品化したのだそうです。その中でも、なんだか昭和チックなデザインで目を引く製品が、「マルチフレッシュエアー」です。

 

形や大きさはちょうどVHSテープと同じくらい。本体表面には、おばあちゃんの家で見たような、ノスタルジックな花柄の絵があしらわれています。こちらも12月15日発売で、実売想定価格は2万1780円。

↑マルチフレッシュエアー「KL-G01」。花柄などの昭和の家電っぽいデザインは狙いすましたもの

 

この製品、なにがポイントかと言うと、バッテリー搭載で持ち運びやすく、狭い場所にも設置可能なこと。縦でも横でも設置でき、側面がアーチ形状なので、壁に寄せて設置しても、空気を吸い込んだり、吹き出したりといった空気の通り道が確保できます。冷蔵庫の隅に置いておけば、庫内の除菌・脱臭が期待できます。

 

ほかにもペットのいる空間、お手洗いや下駄箱(靴箱)、押入れ、納戸(クローゼット)、喫煙所などに置いて脱臭に利用すると良さそう。

 

バッテリー駆動時間はNORMALモードで約1.5週間。ECOモードで約3週間で、充電時間は約12時間となっています。染井社長曰く、「バッテリーが切れるとぴよぴよ鳴く」とのことで、そう言われると聞いてみたくなりますね。本体サイズは幅105×奥行188×高さ33mmで、重量は約350gです。

↑壁際に置いても空気の通り道を確保できるアーチ形状

 

続いては、天井から床面の限定領域に向けて浄化した空気を吹き出す「スポットエアー」です。イメージはキレイな空気による「エアーカーテン」とのこと。家庭でももちろん利用できますが、メインとなるのは、客との距離が近いレジや受付、サロン、食品工場などを想定しているそうです。劇場などで見られるピンスポットライトのようなデザインで、本体カラーは白と黒の2色で展開します。12月17日発売で、実売想定価格は4万6200円です。

↑スポットエアー「KL-S01」は、スポットタイプの照明器具のような円筒形デザインの光触媒除菌脱臭機

 

スポットエアーの設置には、電源の取れる配線ダクトレールが必要になります。一般的な空気清浄機のように床面に設置しなくて良いので、床を広く使いたい場所や、床面がごちゃごちゃしている部屋で使いやすそう。レールさえあれば天井だけでなくフットライトのように下方から吹き出させることも可能です。

↑スポットエアーの設置イメージ

 

空気の届く距離は最大2.5メートル、約1立方メートルの空間が対象になります。本体サイズは径98×長さ210mm、重量は約840g。ピンポイント用アタッチメントや落下防止ワイヤーが付属します。

↑後部から空気を取り込み、前方に浄化した空気を吹き出します

 

最後の製品は法人向けの販売となる「ダウンライトエアー」。光触媒を搭載したダウンライトで、灯りが消えても光触媒フィルターによる除菌脱臭は24時間続きます。廊下などの照明1つをこれに切り替えることで、廊下の除菌に役立つものになっています。

↑ダウンライトエアー「KL-L01/L02」

 

本体サイズは径124×長さ97mmで本体色はホワイト。KL-L01が電球色、KL-L02が昼白色です。それぞれ、人感センサー付きと人感センサー無しがあります。2022年1月中旬発売の予定で、参考価格はセンサー付きが38,500円、センサー無しが35,200円。人感センサーの検知範囲は約5メートル以内。天井の高さは2.5〜3メートルを想定しています。

↑KL-L01/L02の利用イメージ。中央の白い半球面の周囲の輪の部分が光ります

 

今後は食料や水に関わる製品を計画

光触媒を活用した4製品を駆け足で紹介しました。開発販売元のカルテック(Kaltech)は、2018年創業の若い会社。社名はギリシア語で触媒を表す「Katalytis」と「Technology」の組み合わせが由来となっています。

 

会社の理念に「光触媒で地球を救う」と掲げ、光触媒で空気の浄化に取り組む製品として、これまでに床置きの大型タイプの除菌脱臭機や、首掛けタイプ除菌脱臭機、車載用除菌脱臭機などをリリースしてきました。

 

今後はフードフレッシュキーパーを皮切りに食品廃棄ロス削減に取り組み、移動中の食材の劣化を防ぐ特殊なコンテナなども計画しているそうです。2022年の年初にはCES2022への初出展も企画。来年度以降は水を浄化する分野にも取り組む予定で、さらにその先は水素社会の実現に向けた取り組みも視野に入れて活動していくとのことでした。

↑光触媒をさまざまな分野に応用していく構想

 

販売経路は自社サイトのほか、全国の家電量販店とインターネット通販となっています。光触媒コーナーを設けている家電量販店はまだないと思うので、空気清浄機売り場で見つからない場合は、フードフレッシャーは調理家電売り場、フレッシュアイは冷蔵庫売り場、スポットエアーは照明売り場を探してみると良さそうです。

 

光触媒を活用した製品は、まだ市場にも少なく、製品の単価が割高な印象を受けてしまいがちです。除菌性能(分解エネルギー)はオゾンの約1.5倍、次亜塩素酸の2.2倍とされるだけに、商品カテゴリー全体が成長し生産量が増えて、普及価格帯に降りてくるのを期待したいですね。