新型コロナウイルスの感染拡大で低迷する日本経済をどう立て直すかは、衆院選の大きな争点だ。著書「人新世の『資本論』」(集英社新書)がベストセラーとなった大阪市立大の斎藤幸平准教授(34)に、コロナ後を見据えた日本の経済、社会のあるべき姿を聞いた。【聞き手・村尾哲】
――新型コロナの感染拡大で日本経済は大きなダメージを負いました。立て直しに向けどのような課題があると考えますか。
◆コロナ禍は経済や社会の矛盾をより鮮明にしました。今、私たちは資本主義が引き起こした二つの危機に取り組まなくてはなりません。一つ目は、経済格差の問題です。第2次安倍晋三政権の経済政策「アベノミクス」で円安・株高が進んだ結果、大企業の内部留保や株主配当が増えた一方で、(企業活動で生まれた付加価値がどれだけ人件費に回ったかを示す)労働分配率は低下し、貯蓄がゼロという世帯も急増しました。いくら株価が上がっても、投資をする余裕のない世帯には関係ありません。つまり、一部の大企業や富裕層だけに富が集中する体制がかえって強固になったのです。そんななか、コロナ禍で貧しい人たちはさらに困窮に陥ってしまった。いまや、格差是正は待ったなしの課題で、大胆な分配政策が必要です。
――岸田文雄政権も「新しい資本主義」や「令和版所得倍増」を掲げ分配政策を打ち出しています。
◆小泉純一郎元首相やそのブレーンだった竹中平蔵氏が始め、約20年続いてきた新自由主義的な路線から自民党は脱却し、分配をめざす政策に軸足を移しつつあるように見えます。しかし、…