Meta(旧Facebook)が7月にそれまでVR/ARプラットフォームと呼んでいたものを「メタバース」と定義づけて以来、急にバズワードのようになっているメタバース。Microsoftは先日のイベント「Ignite」で「Microsoft Mesh」の進捗を紹介するときにメタバースという言葉を使い、NianticもLightshipの紹介でメタバースに言及しました。
Unityはみんながかっこいいメタバースを作れるようにするためにWeta Digitalを買収し、Qualcommはメタバース必携のARメガネのプラットフォームを発表。NVIDIAはメタバースという言葉は使わなかったものの、「Omniverse」を発表しました。
ついでに、メタバースグループ「KINGSHIP」がUniversal Musicからデビューという便乗っぽい話も。
さて、Googleさんはどうするんでしょうか。
メタバース、企業によって微妙に定義が違います。MetaとMicrosoftのメタバースはかなりセカンドライフ寄りです。仮想の「スペース」にアバターとして入り、他の人々と交流したり、効率的に仕事をすることがメイン(デモ動画を見ると、将来的には相手の立体映像が目の前に出てくるのを目指してはいます)。Nianticは「Field Trip」の頃から一貫してAR中心。ジョン・ハンケCEOは「仮想世界に入るのではなく、現実世界で人々を直接結びつけるもの」としています。
Googleさんは、Niantic派でしょう。なにしろソーシャルは昔から苦手分野。「世界中の人々をつなげる」とかはMetaにまかせておけばいいのです。それに、VRは白昼夢のように消えてしまったし。
GoogleさんのAR関連技術は、実は結構すごいんです。なんせ2012年には「Project Glass」でARメガネを発表した古参です(あれ、まだ企業向けとして続いています)。
Googleのハードウェア責任者、リック・オステルローさんは8月にオリジナルSoC「Tensor」を紹介した際、Business Insider(リンク先は要購読)のインタビューで、「GoogleはARデバイスに関しては他のIT大手より多くの経験を持っている。Google Glassは高価格で機能もまだまだでプライバシーの懸念も高まっちゃったから成功しなかった」けど、5Gでネットワークが速くなったしAIも高度になってきたこともあって、スマートグラスのようなハードウェアは長期的には「非常に役立つ」と語りました。
Googleは昨年、恥ずかしくないスマートグラスを手掛けるカナダのNorthを買収してます。
これにTensorチップを搭載すれば、今スマートフォンのGoogleマップでできているARナビ「ライブビュー」がそのまま使えるでしょう。ARメガネ版なら歩きながらライブビューが使えるはず。
Pixel 6で使えている「Google Lens」のリアルタイム翻訳で目を向けた外国語の看板は自動的に日本語になり、使い方の分からない装置は「ねえGoogle、これはどうやって使うの?」と尋ねれば目の前の謎の装置に直接取説がオーバーラップして説明してくれる(後者はまだできません)。
そういうのが、Googleさんのメタバースなんじゃないかと思います。人との交流にはあまり手を出さないのではないかと。なので、このまま「メタバース」というバズワードを使わずに、「ARで生活を便利にする」路線を進んでいくと思います。
Metaによる発表は、なんだか「今度こそプラットフォームになって、AppleやGoogleに気を使わなくてすむようにしたい」という悲壮感が漂いますが、GoogleとAppleは少なくとも今はモバイルの基盤があるので、あわてて名乗り出ずに静かに準備を進めている気がします。
来年になるか数年先になるか分かりませんが、Made by Googleの「Pixel Glass」の登場が楽しみです。
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