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さて、ここからは作品と生徒さんについて。

今回はすべての役柄が「はまった!」公演だとは思うのですが、それはもう、生徒さんの努力の上に成り立っていたことは言うまでもありません。

作り上げ、長丁場を見せ続けてくれた皆さんに敬意を払いつつ…。

 

【望海 風斗 =エリック】

・とむさんのエリックは私にとっての「至高!」なら、だいもんのエリックは「極致!」です。

そしてとむさんのエリックが「孤高の人」なら、だいもんのエリックは「誇り高い人」でした。

 

 

どちらが、ではもちろんないことは、これまでのすべての再演作品の演者のファンならお判りでしょうとも。

ただ「これ以上この先、誰がここまでのエリックを演れるだろう」というのはあります。

「それだけ、君は素晴らしいってことさ!」(by フィリップ・シャンドン様)という言葉では片づけ切れないほど、こんなにも技術的にも表現的にも素晴らしいファントム=エリックに会えたことは、本当に奇跡としか言いようがないかと。

 

役を演じるうえでどこに重きを置くか、ということは演者ならだれでも考えることだけれども、それをどう表現していくか、その一生を舞台の上でどう生き抜くかということは、その作品の出来に大きくかかわってくるし、主役がそれをしっかり見せなければ周りの芝居もずれてくるし、作品に一貫性がなくなる。

だいもんはその部分を、彼女の最大の持ち味である歌唱による表現力で見せ切ったと思います。やり切った、と言ったらいいのかも。

だいもんのエリックを見て一番感じたことは「歌が非常――――にうまい!音楽の天使ここにいた―――っ!」ってことよりも、「こんなに歌で芝居を、表現を伝えられる人は見たことないよ!!」ってことでした。

歴代、歌が非常警戒レベルで巧い(なんじゃそれ?)な人やトップさんはいたけれど、ここまで心を歌にのせて表わせられる人って見たことないかも。

エリックの心情が、隠された想いまでも、その明瞭な詞とたゆたう音楽に乗せられて、自分の気持ちにダイレクトに飛び込んでくる経験は、どのジェンヌさんからも受けたことのないものかもしれません。

少なくとも40年以上宝塚を見ている身でも、そう思います。

もちろんその「何か拗らせてる中学生」みたいな動きも、これまで以上にリアルに引き攣れているような傷痕も、そして彼女ならではの美しい顔をゆがめてまでも魅せてくれる表情も、すべては「オペラ座のファントムとして存在するエリック」の苦悩や例え様のない喜びやとまどいや絶望を見せてはくれるのだけど、何よりもここまで「歌うことで人に何かを伝える」技術に長けたジェンヌさんは、この先いつ現れるだろう、と。

「それくらい、君は素晴らしいってことさ!」(by フィリップ・シャンドン様)(2回目)(笑)て言葉では片づけられないほど素晴らしかったです。

 

何に対してもまっすぐ真面目なだいもんだからこその役の追求の仕方、それが開演してから毎日のように呟き処で「今日も進化した」「まだ進化してる!」という声が飛び交っていたことに表れていると思います。

いやもう、どのシーンを挙げても「そうだよね!そうくるよね!そう言うよね!」という自然な流れでしかない。

ほぼ実話でもあるこの物語の主人公が、だいもんの身体を、声を借りて乗り移っていたのではないかと。だからこそその哀しみも喜びも、ダイレクトに見る人の心に飛び込んできたのではないかと。

 

印象的だったところを挙げれば、どうしても前作との違いやまた同じところを取り上げなければならなくなるので、そこはちょっとまたDVDを購入してからのお楽しみにしようかと。(てか、買うんだ?!)(笑)

 

 

最後に、私がとても恐れていた「とむさんの『ファントム』が記憶から消えてしまったらどうしよう…」という不安は、まったくの杞憂でした。

 

だいもん雪組の『ファントム』はすごい!

でも私はとむさんの、とむさん時代の花組の『ファントム』が大好き!

そんなことまで再認識させてくれた2018~2019『ファントム』だったと思います。

 

 

【真彩 希帆 =クリスティーヌ】

・神様!奇跡をありがとう!

と叫びたくなるほど、今の時代の宝塚に真彩ちゃんがいてくれたことに感謝します。

 

前にも書いたと思うけど、やっぱり彼女を見るたびに思い出す一人の娘役 ひびき美都さん。

「美しさで他を圧倒する」という人ではなかったのだけれど、あの大浦みずきさんの相手役として、一緒にダンスを踊らせたらそりゃもう物凄い綺麗でカッコよくて、「今この時代になー様と組んでくれてありがとーーーーっ!!」てなる人だった。

失礼ながら真彩ちゃん、というか、いろんな面で今の生徒さんたちの方が技術面でもスタイルでも格段に上を行くのだろうけれど、こういう「その時代のトップさんに寄り添う技術」は今も昔も変わらないんだなあ、と、嬉しくなる。そしてその出会いの妙(マリアージュ)も。

 

クリスティーヌはこの物語の中で、場面ごとに成長していく役。

2幕に至ってはもう場面の中でも一瞬一瞬に変化していって、最後には本当に「愛を知った聖母マリア」を体現するのだけれど、やはりたった2回の(そのうちナマ観劇は1回だけ)観劇ではそこまで見ることができず、残念至極。

でもビストロでの歌唱はこれまでの公演で間違いなく(というか、これまでなんでこの人で…てのが顕著すぎて…)最!の高!であり、そこでの変化がまた、その先の物語の流れを助けるものであるので、ああやっと『ファントム』という物語がここに至って昇華したね、という思いでいっぱいになります。(歴代の方ごめんなさい!もちろんそれぞれの良いところがあって大好きです!)(もう遅い?)

 

ちょっと話がずれるのだけれど、だいもんエリックの上下(かみしも)に真彩ちゃんクリスティーヌとひらめちゃんベラドーヴァがいると「ああ、ここに花組魂…」となってしまうのは、とむさんファンの寝言としてお許しいただきたく。

 

歌で表現できるってのは、演じる人物の一生を歌いぬくことができるわけで、やはり最後の銀橋を渡りながらの歌は「これはエリックの生涯をかけた愛の誇りと、クリスティーヌの成長物語であったんだなあ」と思わせられるものでした。

エリックの人間としての誇り高さ、尊厳は、クリスティーヌの存在によって顕わされたんだね。

 

おお、これは演者のお二人にも当てはまるなあ!

 

ライブビューイングで見たビストロのシーンは、実は一番の大泣きポイントでした。

真彩ちゃん、至上のクリスティーヌをありがとう。

 

 

さてさて、咲ちゃんキャリエールなど、他のプリンシパルについてはまた。

いつ書けるかにゃ~。

書きたいんだけどにゃ~~~。