ドローンなどの飛行ロボットの多くは、胴体と2枚以上の回転翼(プロペラ)で構成されています。
ところが最近、シンガポール工科大学(SIT)に所属する機械工学者シャン・キ・エイチラエイ・ウィン氏ら研究チームは、回転翼1枚だけで飛行するモノコプターを開発しました。
胴体すら存在しない1枚の回転翼だけですが、浮遊したり、任意の場所に移動したりできます。
研究の詳細は、11月1日付の科学誌『Bioinspiration & Biomimetics』に掲載されました。
目次
- 1枚の回転翼だけで空を飛ぶ「モノコプター」
- モノコプターは使い捨て任務にピッタリ!?
1枚の回転翼だけで空を飛ぶ「モノコプター」
紙飛行機や竹とんぼなどの最も単純な空飛ぶおもちゃでさえ、その飛行には、左翼と右翼、もしくは2枚以上の回転翼が必要です。
動力を搭載した飛行機やドローンになると、その構造はもっと複雑になるでしょう。
しかし、新しく開発されたモノコプター「F-SAM」は、たった1枚の回転翼だけで飛行しているように見えます。
1枚の回転翼自体が本体であり、回転翼の先端に装着された制御装置とバッテリーでコントロールされているのです。
そして逆側の先端には小型のモーターとプロペラが付いており、これによって翼が回転するようになっています。
研究チームによると、「新しいモノコプターのデザインはカエデの種子を参考にした」とのこと。
カエデの種子には「翼果(よくか)」と呼ばれる翼状の果実が付いており、プロペラのようにくるくると回りながら落ちていきます。
この回転が種子の落下速度を遅くし、より広範囲に種子を届けることができるのです。
そしてチームはこの回転方法を模倣し、さらに動力を追加することで、一枚の回転翼だけで16分間飛行できるようにしました。
モノコプターは使い捨て任務にピッタリ!?
モノコプター「F-SAM」の総重量はわずか69gとなっています。
また柔軟な回転翼は今回特別に製作されたものですが、その他の部品は安価な既製品で成り立っています。
非常にシンプルな構造なので、同サイズの飛行ロボットと比べてはるかに低コストです。
その中には小さな制御装置も含まれており、モノコプターを任意の位置座標に移動させることも可能。
こうした要素から研究チームは、「新しいモノコプターは使い捨ての情報収集任務に最適かもしれない」と述べています。
例えばGPSを装着し、空中を浮遊しながら気象データを収集できます。
飛行機を使ってモノコプターを上空からばらまけば、後は空中に留まったり、任意の場所に移動したりしてデータを集めてくれるでしょう。
また回転翼が柔らかいため、モノコプターをコンパクトに折りたたむことが可能。
将来的には、折りたたんだモノコプターを弾丸のように射出して、空中で展開させられるようです。
現在チームは、「少ない労力でより多くを行う」ことに焦点を当てており、飛行ロボットの改良を続ける予定です。
参考文献
Flexible Monocopter Drone Can Be Completely Rolled Up
https://spectrum.ieee.org/foldable-monocopter-drone
元論文
Design and control of the first foldable single-actuator rotary wing micro aerial vehicle
https://iopscience.iop.org/article/10.1088/1748-3190/ac253a