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日本の株価は上がらない。欧米市場の好況の影響が及んでも、上げのスパンはきわめて短い。賃金や物価の長期にわたる横ばい状態とも無関係ではないだろう。そういう見方がある。

 

日本の株価は安すぎる?

最近、ちょっと株式相場に関わっている。とは言っても、筆者よりもはるかに真剣な姿勢で取り組んでいる奥さんから話を聞いて知識を増やしているだけなのだが。ただ、その程度でも日本の平均株価が世界と比べて低すぎるレベルにあることは容易に理解できる。

 

理由のひとつとして、日本人投資家の絶対数の少なさが挙げられる。株が売れれば株価は上がる。しかし、株を買う人の絶対数が少なければ、ある程度まで上昇したところでそれ以上伸びようがない状態になる。外国からの資金も入るが、主軸であるべき日本国内の買いのボリュームは決して大きいとはいえないようだ。

 

金融リテラシーを効率的にはぐくむ方法

大多数の日本人は株式投資に関する知識が不足していて、それが消極的な態度になって現れるのかもしれない。たとえば、アメリカでは中学校で株式投資をはじめとする金融リテラシーをはぐくむ授業が始まるので、距離感が日本とは根本的に違う。中国だって、投資はごく一般的に行われている。

 

「じゃあやってみよう」という気になったとしても、むやみに始めれば損をするに違いないと感じ、ひるんでしまう。何らかの指針は絶対に必要だ。英語の学習とは違って、投資に「やり直し」という言葉のニュアンスは当てはまらない。日本では、大人になってから投資を基本から学び、まったく新たな試みとして取り組んでいくほうが普通だからだ。効率的に学ぶにはどうするか。金融リテラシーに関するマインドをリセットして、株式投資に対してありがちなネガティブな感覚を取り除いた上で、一から教えてもらえばいい。

 

本気で取り組んでいくための第一歩

父さんが子どもたちに7時間で教える 株とお金儲けの教養。』(山崎将志・著/日経BP・刊)は、筆者を含むビギナー投資家の教科書としてぴったりの一冊だ。帯に記されたコンセプトは、“親世代より豊かに暮らすために10代で知っておきたいこと”となっている。全編が親子の対話形式で進んでいくフォーマットは新鮮でわかりやすいし、参加意識が高まる。章立てを見てみよう。

 

第1講 お金持ちの正体

第2講 どんな会社に投資するといい?

第3講 株価情報をどう見るか

第4講 父さんの保有銘柄

第5講 株式投資のための教養

第6講 父さんのしくじり—後悔と反省

第7講 いざ、実践

 

若い世代を念頭に置いて、「普通の人」がお金持ちになる唯一の道という視点で株式投資を考えていく本書では、最初から大きな金額を注ぎ込むことは想定していない。株式投資という行いのコンセプトやルールから入り、最終的に実践マニュアルにつなげていくという流れになっている。

 

印象深い言葉の数々

この本は、株式投資に興味のある中高生のみなさんと、株式投資を学ぶことで自分の中高生の子どもたちに豊かな人生を送ってもらいたいと考える親御さんに向けて書きました。

『父さんが子どもたちに7時間で教える 株とお金儲けの教養。』より引用

 

山崎氏ご自身が息子さん二人に株式投資の基本についてした話を土台にした本書の対象は明確だ。随所にちりばめられた印象深い言葉に触れるたびに手が止まる。

 

「できないことができるようになることが大事」

「自分の予測と結果を突き合わせる経験を積み重ねていくと、どんどん見る目が養われる」

「中高生の時点からやりたいことを見つけるヒントを探すことはできる」

「本当に頭のいい人何人かで考えたことに、十分な資金が投入されると、未来は実現してしまう」

「悲観的な視点を持つと株式投資ではチャンスを逃す」

『父さんが子どもたちに7時間で教える 株とお金儲けの教養。』より引用

 

大人だって、まだ間に合う

著者の目線はあくまで中高生に向いている。それはコラムで「勉強することの本当の意味」とか「大学選びの基準」、「就職先はどう選ぶか」などについて書かれていることからもわかる。それと同時に、GAFAの株価が高い理由や株価チャートの見方など、大人がすぐに使えるような超実践的知識についても詳しく記されている。こうしたことがらを“普通に”身につけている大人はどのくらいいるだろうか。この本を、例えば高校2年生の夏休みあたりに読むか読まないかで、10年後のマインドセットがかなり変わってくると思う。「おわりに」に次のような文章がある。

 

株式投資はギャンブルではありません。あらゆるギャンブルには胴元がいて、プレーヤーの期待値は必ずマイナスです。しかし株式投資には企業の利益という裏付けがあります。

『父さんが子どもたちに7時間で教える 株とお金儲けの教養。』より引用

 

当たり前だろ、と言う人がほとんどにちがいない。でも、その当たり前なことを自分ごととしてとらえていないから、日本国内の株式投資プレーヤーが増えないのだ。大人になって、かなり時間が経っていたとしても、まだ決して遅くはないと思わせてくれる一冊だ。

 

【書籍紹介】

父さんが子どもたちに7時間で教える 株とお金儲けの教養。

著者:山崎将志
刊行:日経BP

「普通の人」がお金持ちになる唯一の道は? 親世代より豊かに暮らすために10代で知っておきたいこと。

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