メディアテクノロジーのAmagiは、米国時間9月10日に1億ドル(約110億円)の資金を調達して、同社が放送やコネクテッドTVにクラウドからSaaSで提供している技術を、今後もさらに開発していくことを発表した。
この投資ラウンドでは、AccelとAvataar VenturesおよびNorwest Venture Partnersが既存の投資家Premji Investと歩を揃え、投資にはEmerald MediaとMayfield Fundが保有する株式の買い上げが含まれていた。また、Nadathur Holdingsが既存の投資家としてとどまる。Amigaの共同創業者でCEOのBaskar Subramanian(バスカル・サブラマニアン)氏によると、今回の投資で同社の調達総額は1億5000万ドル(約165億円)になるという。
ベンガルールで創業したAmagiはクラウドブロードキャストとターゲット広告のソフトウェアを提供し、それにより顧客は、自分が作ったコンテンツを、テレビ放送と、Roku ChannelやSamsung TV Plus、Pluto TVのようなストリーミングテレビで配布して収益化できる。同社はすでにそのプラットフォーム上で、40カ国ほどで2000以上のチャンネルをサポートしている。
「ビデオは管理が難しい技術です。大きなファイルに対して大量のコンピューティングが必要になります。Amagiは、技術知識がないのコンテンツオーナーがその複雑なワークフローとスケーラブルなインフラストラクチャを単純化できるようにします。私たちが望むのは、プラグインをもっと容易にして、広告のターゲティングと収益化を開始することです」とサブラマニアン氏はいう。
その結果、Amagiの顧客は従来的な配布モデルに比べて営業コストを最大40%節約することができ、広告のインプレッションを5〜10%上げている。
関連記事:マイクロソフトがビデオ制作・編集ソフトウェアのClipchampを買収、Microsoft 365の生産性エクスペリエンス拡大にぴったり
今回の新たな投資は、同社が急成長を経験しているときにやってきた。たとえばサブラマニアン氏によると、米国では過去数年間で30倍に成長している。Amigaのオーディエンス数は20億あまりに達するが、最大の市場は米国だ。また、ラテンアメリカとヨーロッパにも今後の成長ポテンシャルがある。
さらに2020年は売り上げが136%伸び、顧客数は前年比で44%増えた。新しい顧客にはNBCUniversalなどが含まれる。サブラマニアン氏によると、東京オリンピックのNBCとUSA TodayとABS-CBNの放送はAmagiのプラットフォームで行われたという。
ますます多くのビデオコンテンツがコネクテッドTV向けに行われるという変化により、氏によるとその市場は今や500億ドル(約5兆4964億円)になっている。そこで同社は新たな資金を当市場向けの営業の拡大とR&Dに投じて、同社のプロダクトパイプラインとM&Aの商機に投資していきたいという。同社はまだ、買収を一度もしていないとのこと。
Amagiはニューデリーにおけるブロードキャスト事業に加えて、ベンガルールにはイノベーションセンター、ニューヨークとロサンゼルスとロンドンにはオフィスがある。
「消費者の動きとインフラストラクチャのニーズが臨界量に達し、新しい企業が次世代のメディアをどんどん持ち込んでいます。私たちは、そんな成長の大きな部分を占めています。変化が早いのはスポーツですが、今後はニュースやイベントも最大の成長分野になるでしょう」とサブラマニアン氏はいう。
AccelのパートナーであるShekhar Kirani(シェカール・キラニ)氏によると、AmagiのエンタープライズSaaSへのアプローチはユニークだ。それは業界の500億ドル規模の変化がビデオコンテンツで起きており、そこに対して彼は支出の半分がコネクテッドTVのプラットフォームへ急速に移行していくと見ているからだ、という。
ViacomやNBCUniversalなど、レガシー企業の一部は自らのストリーミングプラットフォームを作っているが、そこではNetflixやAmazonがマーケットリーダーだ。しかしこの移行を可能にしているAmagiのようなSaaS企業はまだ多くない。
キラニ氏がサブラマニアン氏に会った5年前には、Amagiはすでに資金状態が良好だったが、キラニ氏はそのプラットフォームの大きな将来性に惹かれて、同社の成長を助けたいと願った。同社は人びとの時間を節約し、新しいコンテンツプロバイダーたちが、彼らのコンテンツをより早く配布できるようにしているため、追い風の吹く時間が今後も長い、と彼は信じている。
「Amagiは新しいカテゴリーを作りつつあり、今後の成長も早いでしょう。同社はすでに成長中であり、業績は各年倍増しています。SaaSとしてのさまざまな評価指数も驚異的です。それは同社が、コンテンツプロバイダを世界中のいかなるオーディエンスにも結びつけているからです」とキラニ氏はいう。
画像クレジット:
[原文へ]
(文:Christine Hall、翻訳:Hiroshi Iwatani)