あらゆるものがネットで手に入る時代だからこそ、人は「得がたさ」に惹(ひ)かれるのか。「海外民藝」を開拓した第一人者といわれる「巧藝舎」(横浜・山手町)の店主、故・小川泰範さんが長年かけて集めた世界の手仕事品を紹介する図録「世界の美しい民藝」(グラフィック社刊)が5月の発売以来、幅広い世代から関心を集めている。本来ならば異国の奥地から出ることのなかった品々が、遠く離れた東京の、しかもトレンドの中心地でハイセンスな人たちの感性を刺激している。決して洗練されたものとは言いがたく、素朴な異国の品々が、なぜいま多くの人の心を惹きつけるのか。