リモートワークやオンライン学習、オンライン飲み会など、新しい生活スタイルが定着しつつある2021年。日々の暮らしの中でパソコンを使う機会が増えたという人も多いのではないでしょうか。LG gramはそんなニューノーマルの暮らしを支える“軽くて大画面、そしてパワフル”という3拍子揃ったノートパソコンです。今回のレビューのため、LG gram 2021年モデルを3か月ほどみっちり使い込んでその実力を検証しました。
2021年モデルでは14インチ、16インチ、17インチのラインナップがあります。なかでも今回試用したた16インチモデルは軽さと大画面のバランスが取れたモデルです。どれほどかというと「16インチで世界最軽量のノートパソコン」としてギネス世界記録に登録されたほどです。
単純なオフィスワークといえども、使い方によっては意外と負荷がかかるもの。どんな場所でも安定したリモートワークを実現するためには、高いパフォーマンスとモバイル性を兼ね備えたモバイルPCは欠かせません。LG gramはそんな希望に応えてくれるニューノーマルにぴったりなノートパソコンでした。今回、LG gram 2021年モデルを3か月ほど使いこんでみた上、このレビューをお届けします。
狭額縁+高解像度で没入感が抜群
LG gramシリーズの最大の強みはなんといっても「ディスプレイ」。視野角が広く明るいIPS液晶ディスプレイを採用し、高精細で映像もWebサイトも高密度で明るく表示できます。ベゼル(額縁)を狭く仕立てたことで、大画面かつコンパクト、そして表示も鮮やかに仕上げています。スマホでは当たり前になった高密度で明るいディスプレイが、ノートパソコンにも取り入れられた、というとイメージできるでしょうか。
「世界最軽量」の16インチモデルは重さは約1190g。この重さは他のモバイルノートパソコンなら、13インチ台の平均的な重さに相当します。つまりLG gramの16インチモデルは、同じ重さで比較すると3インチ分の大きな画面を持ち歩けるということになります。
この3インチ分のアドバンテージは、パソコンとしての使い勝手で威力を発揮します。16インチモデルをカフェの小さいテーブル席で広げてみると、目の前全部がデスクトップと思えるほど広く感じます。ウインドウをたくさん広げるような作業で、13インチノートよりも効率が良いのは間違いありません。それでいてカバンにスッポリ入るコンパクトさも好印象でした。
ディスプレイ解像度は16/17インチモデルが2560×1400ドット、14インチモデルが1920×1400ドット。縦横比は16:10と正方形に近い形状で、Webページや書類を縦に並べて表示するにも便利な比率です。
ディスプレイはHDRにも対応しており、映像の視聴にも適しています。Amazon プライム・ビデオやNetflixなども快適に視聴できます。サウンドはステレオスピーカーを内蔵し、サラウンド技術のDTS:X Ultraをサポート。スリムな本体ながらも、本体の底から響き渡るような立体感のある音響を鳴らします。特に高音部はクリアに響くため、ポップ系の音楽やアニメを楽しむ人には相性が良さそうです。
表示性能は折り紙付きですが、光沢タイプ(グレア仕様)であることは好みが分かれる点かもしれません。特に暗転した時は映り込みが目立ちがちなことや、明るい場所での反射光が目につきやすい点が気になりました。また、薄さの代償として、タッチパネルは非搭載となっています。
内蔵のインカメラもHD対応と解像度高め。広角寄りの画角で、家族2~3人で話してもみんな映像に収まります。内蔵のマイクも声を適切に拾っており、Zoom通話でも快適でした。高音がクリアに聞こえる内蔵スピーカーは、人の声もはっきり聞こえるため、オンライン会議向きのチューニングとも言えるでしょう。
見た目に反して丈夫な設計
一般的な16インチノートパソコンでは、サイズ的にも持ち運びにちょっと苦労しますが、LG gramならリビングの食卓から書斎へ、そして居間のソファへと、移動しながら使うのもラクラク。薄く設計されていて、大きめのビジネスバッグならすっぽりと収まります。
ディスプレイはかなり薄く、ベゼルも狭いことから耐久性が心配になるかもしれません。筆者は当初、この繊細そうなディスプレイが折れてしまわないかと不安になりましたが、使っているうちにそうした心配は無用だと気づきました。ボディは軽量なマグネシウム合金で覆われており、しなやかな見た目に反して丈夫な作りになっています。
耐久性については、米軍の調達規格「MIL-STD-810」に準拠したテストを7項目で実施済み。外部からの衝撃や落下、振動や、砂ぼこりや高温・低温の環境下といった厳しい環境でも問題なく稼働すると確認されています。さすがに防水ではないため、ビーチサイドで使うのは避けた方が無難ですが、カバンに入れて満員電車に乗るといったシーンなら十分耐えられるでしょう。
心地よい打鍵感のキーボード
薄型のノートパソコンで気になるのはキーボードの使い勝手。筐体の薄いモデルのキーボードでは、ペナペナとした質感になってしまうことも多いものです。
その点で、LG gramのキーボードは良好と感じました。キーストロークは1.65mmと薄型PCとしては深く沈み、打鍵した時にカチッとした感触が伝わってきます。キー同士の感覚もある程度確保されており、長時間タイピングしても疲れづらいと感じました。
16インチ以上のサイズなら、テンキーも付いているため、表計算を多用するような使い方でも不便なく使えるでしょう。キーボードはバックライトも備えており、暗めの環境でも迷わず使えます。
気になるところを挙げるとするなら、一部のキーのサイズが小さめで、慣れるまでは打ちづらいようにも感じました。特にEnterキーの左隣にあるカギ括弧「」の幅が狭いため、デスクトップパソコンで使っているキーボードからLG gramに切り替えて作業をするときに、操作に若干戸惑うこともありました。
指紋認証と拡張性も満足
キーボードの右上にある電源ボタンには、指紋センサーが内蔵されています。指を当てるだけでロック解除できるため、出先での起動も実にスムーズ。特に、感染症の流行下にある今年は、マスク着用では使えない顔認証よりも、実用的かつ快適に利用できるように感じます。
また、LG gramは薄型PCながら十分な拡張性も備えています。左側面にはHDMIポートとType-Cポート×2基、3.5mmイヤホンジャックを装備。なかでもType-Cポートは最新規格のThunderbolt 4/USB 4に準拠。急速充電やディスプレイ出力にも活用できます。
右側面にはUSB 3.2 Gen2ポート×2基とmicroSDカードスロットを装備。デジカメを使うことが多い筆者にとって、microSDは重宝しています。
電池持ちと俊速起動が良好
電池持ちの長さもLG gramならではのポイント。多くの13インチのノートパソコンでは1日1回は充電が必要になりますが、LG gramの16インチモデルはそれと同じサイズ感を保ちつつ、より長時間、充電せずとも利用可能です。
電池持ちは14インチモデルなら37時間、16インチモデルなら30時間、17インチモデルは27時間となっています。実際に使ってみた感覚でも、1日8時間ほど持ち歩きつつ使っても、十分に電池残量が残っている印象でした。3日間の国内出張では、1回だけ充電するだけでバッテリーの不安なく使い続けることができました。
さらに、モバイル用途では重要になる、起動時の立ち上がりも高速です。といっても、iPhoneのロック解除ほどにはスムーズではありませんが、画面を開いて1秒ほどで指紋認証が完了し、もう1秒待てば作業していたウインドウに戻って続きに取りかかれる、といった具合です。LG gramが搭載するIntelの第11世代Coreシリーズの高速起動の特徴が活かされているのでしょう。
充電は本体左側のType-Cポートで行います。2つのポートのうち1つに充電しつつ、もう1つでスマホへ給電することも可能です。
付属の充電器もType-C端子型でパソコンへ65Wの給電が可能。本体側のType-Cポートの出力は最大15Wとこちらも急速充電です。急速充電器はUSB-PC規格準拠で、スマホと共用できるのも便利です。
充電周りで強いて要望を挙げるとするなら、右側にもType-Cポートが無いことは、コンセントがテーブルの右側にある喫茶店ではやや不便に感じました。「Thunderboltポートでなくとも、本体へ給電できるType-Cポートが1基あると良いのに……」と思うことはしばしばありました。
デスクワークをサクサクこなせる処理性能
CPUは発表時点で最新の第11世代Intel Coreプロセッサシリーズを採用。この世代は内蔵グラフィックスの処理性能が大きく向上しているため、画像処理や3Dのパフォーマンスも良くなっています。
ストレージは高速なM.2 NVMe SSDをサポート。ストレージスロットは2基あるため、購入後にストレージを追加することも可能です。
メモリ(RAM)はCore-i5モデルが8GB、Core-i7モデルが16GBを搭載。画像や動画を処理するアプリやゲームもある程度遊びたいと思った時にはやや物足りなく感じるかもしれません。
過去のLG gramシリーズでは購入後にメモリを追加できる仕様となっていましたが、2021年モデルはオンボードメモリで増設は不可という仕様です。より長期間使いたい場合は、Core-i7プロセッサー搭載モデルを選ぶ方が無難でしょう。
ただし、筆者の日々の利用シーンでは8GBモデルでもメモリ不足を感じず快適に利用できました。筆者はライターとして、パソコンを主に文章作成や画像編集、時にはオンライン会議などで利用します。
時にChromeでWebサイトを数十ページほど開きつつ、PhotoshopとLightroomで画像の管理や編集を行いつつ、主なファイルはクラウドストレージのOneDriveで管理し、さらには外部ディスプレイに接続するといったような、メモリ容量が逼迫しがちな使い方をしていますが、LG gramではメモリ8GBモデルでさえも処理能力を感じることはありませんでした。
ゲームはさずがに最新の3Dゲームがサクサク動くとはいきませんが、カジュアルなゲームなら十分に動作します。2Dスタイルのアクションゲーム「Hollow Knight」を2時間ほど遊んでみましたが、フル解像度で目立ったコマ落ちや処理不足を感じることなくプレイできました。
今年後半には新OS「Windows 11」が提供開始となりますが、LG gramの2021年モデルであれば問題なくバージョンアップできるでしょう。LGによる公式な発表はまだ出ていませんが、マイクロソフト製のWindows 11の動作確認ツールを試してみたところ、アップグレード可能と表示されました。
Windows 11では外付けディスプレイで使ったウインドウ配置を復元する新機能が追加されるため、ディスプレイ系端子を複数備えたLG gramがさらに便利に使えることになるでしょう。
自宅PCとしてもモバイルPCとしても大活躍--だけど、一寸の差で…
LG gramの1番の特徴は「軽くて大画面」という点ですが、それ以外にもたくさんの“良いところ”がある総合力に優れたマシンです。軽くてほどよい大画面で取り回しが良いこと、丈夫で持ち歩くときに不安を感じさせないこと、俊敏に起動し待たせないこと、電池持ちのストレスを感じさせずに使い続けるなどです。
つまりは、モバイルできるノートパソコンとして、優れたパフォーマンスを備えているマシンと言えます。
ここであえて惜しい点を挙げるとするならば、モバイル通信に非対応となっている点は惜しいところです。5Gや4G LTEでいつでもつながるノートパソコンになれば、もはや弱点がほぼ無くなってしまうのではないかと感じました。将来のモデルでの対応を期待したいところです。
一方で、家の中で使う分にも、LG gramの特徴は存分に発揮されます。例えば仕事中は書斎で使って、プライベートの時間はリビングで使うというように部屋をまたぐ移動でも、LG gramの持ち運びのしやすさは役立ちます。
鮮やかな画面とパワフルな処理性能は、仕事の書類作成やオンライン会議でも、プライベートの映画鑑賞やオンライン通話でも、場所を選ばず活躍します。仕事で使うノートパソコンとしても、家族で使うノートパソコンとしても、ふさわしいパフォーマンスを備えたLG gramが、パソコンを使う機会が増えたニューノーマル時代にもしっかり対応できる理想の1台に仕上がっていました。