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9月中旬、英デイリーメール紙が、気候変動に関する研究についての記事を掲載しました。10か国で計1万人の若者を対象に調査を行なったこの論文によると、うち4割が「気候変動を理由に、子どもを持ちたくない」と答えたとのこと。気候変動が若い世代に暗い影響を及ぼしているようです。

↑「THERE IS NO PLANET B」(プランBもプラネットBもない)というプラカードを持って、政府に迅速な行動を求める若者たち。「PLANET」は「PLAN」(計画)と「PLANET」(惑星〔地球を指す〕)の掛け詞

 

サステナビリティをテーマにしたオープンアクセスジャーナル『Lancet Planetary Health』での掲載に向けて査読が行われているこの研究は、気候変動をテーマに、心理学・児童メンタルヘルス、気候不安といった分野の専門家11人が行いました。イギリス、フィンランド、フランス、アメリカ、オーストラリア、ポルトガル、ブラジル、インド、フィリピン、ナイジェリアの各国で、16~25歳の若者各1000人(計1万人)にアンケート調査を実施。

 

その結果、全体の約6割が、気候変動に対して「極度に心配している」「非常に心配している」と答えていました。「そこそこ心配している」と答えた人も含めると、全体の84%が「気候変動が心配である」と考えているのです。

 

また、気候変動を理由に「未来は恐ろしい」と考える人の割合が75%に上りました。国別にみると、フィリピンが最も高く、92%が「恐ろしい」と回答。ほかにはブラジルで86%、ポルトガルで81%が同様に述べていました。

 

さらに「将来、子どもを持つことをためらう」と答えた人は全体の39%。ブラジルでは48%、フィリピンでは47%と、半数近くがそのように思っていました。気候変動のため未来に希望を持てない若者が多い模様です。

 

このままでは、お先真っ暗

気候変動における政府の対応について、回答者の65%が「若者を裏切っている」と述べており、さらに「取り組みの影響について嘘をついている」と答えた人が64%いました。否定的な考えが多数を占める結果。

 

「自分、地球、未来の子どもたちを守ってくれると思う」という意見は33%にとどまり、「政府は信用できる」という意見も31%という低い結果に終わりました。今回調査の対象となった国には、イギリス、フィンランド、フランスなど、地球環境への意識が高い国が含まれていますが、それらの国でも若者の間では、政府の対応に不満を持っている人が多数を占めているようです。

 

これらの結果は、若い世代で気候変動に対する恐怖や危機感が広がっており、その不安は政府の対応に結びついている可能性があるということを示しています。政府の対応が不十分であったり不誠実であったりすると、若者は自分たちが裏切られたと感じることがあり、それに対するストレスや不安が増大しているようです。

 

この調査を行った専門家たちは、このようなストレスは健康にも影響を及ぼしかねないため、研究を進めると同時に、政府の誠実な対応も必要だと指摘しています。

 

【出典】Marks, Elizabeth and Hickman, Caroline and Pihkala, Panu and Clayton, Susan and Lewandowski, Eric R. and Mayall, Elouise E. and Wray, Britt and Mellor, Catriona and van Susteren, Lise, Young People’s Voices on Climate Anxiety, Government Betrayal and Moral Injury: A Global Phenomenon. Available at SSRN: https://ssrn.com/abstract=3918955 or http://dx.doi.org/10.2139/ssrn.3918955