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2021年はグラフィックスカード(GPU)が品薄となり、価格は定価の3倍程度にもなるなど、自作PCを組む人にとっては最悪な年となりました。しかし、2022年はどうやら最悪な状況からは脱し、改善に向かう可能性が高いようです。

半導体不足、マイニング、転売。最悪だった2021年のGPU事情

GPU shipments are expected to rise 10% in 2022 | PC Gamer

2021年のGPU事情は恐らく、自作PC界隈では史上最悪な状況と言えました。

元々、GPUは2020年に世界的に流行し始めた新型コロナによる外出自粛または禁止によってゲームをするユーザーが増えた事で需要が例年に比べて大幅に増えていました。しかし、同時に新型コロナの感染拡大や米中貿易摩擦によるサプライチェーンの破綻とそれに伴う半導体不足の顕著化しており、GPUの入手性は非常に悪かった状況です。

そんな中で、2021年に入り始めた頃からジワジワとGPUでマイニングを行う仮想通貨、Ethereumの価格高騰とマイニング収益の改善に伴うGPUの大量買い占めが発生。この動向に目を付けた転売屋がGPUを買い占め、高値で転売。そして、供給に対して需要が大幅に高いことに目をつけた卸売りや量販店側の価格つり上げなどで2021年5月にはGPU価格は定価に対して3倍にまで膨れ上がりました。この当時、GeForce RTX 3080については店頭での販売価格が18万円程度に、ヤフオクなどでの転売価格は20万円越えにまでになっていました。

しかし、2021年6月頃にはEthereum価格の下落やNVIDIAがマイニング性能に制限を付与したLite Hash Rateモデルへの置き換えなどでマイニング需要は減少し、価格は定価の2倍程度に落ち着きました。

ただ、定価の2倍程度と言う価格については2021年末になっても維持されており、2022年1月時点でもこの傾向は変わっていませんが2022年後半にもなれば、この傾向は大きく変わる可能性があるようです。

多くのAIBが2022年は2021年比でGPU出荷量を増加へ

Graphics card shipments continue ramping up in 2022 (digitimes.com)

台湾のDigitimesによると、ASUS、MSI、ASRock、GIGABYTEなど主要なAIBはGPUの出荷量について2021年は2020年に対して非常に高い出荷台数を記録したとの事です。2021年は依然として新型コロナウイルスによる影響で外出自粛が続き、ゲーミングPCなどに対する需要は堅調で、年の途中でデルタ株登場によって工場の閉鎖やコンテナ不足などサプライチェーンに影響が出る事態もありましたが、それでも2020年以上に高い出荷台数を記録出来たとの事です。

そのため、各社AIBについては2022年もこの調子でGPUの需要は高い状態を維持すると見ており、GPUの出荷量については2021年比で10%以上も高い出荷量を予定しているとの事です。

この高い出荷量を基に、各社AIBからは2022年後半にかけてGPUの品薄は明確に改善するという予測を立てているようです。また、品薄の改善によって店頭販売価格の下落圧力にも繋がり2022年後半にかけては2021年に見た様な価格でGPUが販売されるという事は徐々に減ってくると考えられます。

ただ不安要素もゼロでは無く、世界的に大流行となっているオミクロン株によるサプライチェーンの混乱や外出自粛などが続けば再び供給に対して需要が上回る現象が続けば、2022年後半に改善と言う予定は狂う可能性があります。また、半導体不足の引き金となった米中貿易摩擦の行方も不安要素と言えますが、2022年1月現在の世界情勢を維持できれば2022年後半には今までよりは手軽に自作PCを組み立てられる環境となるかもしれません。

GPUへの需要も減少傾向へ。Ethereumマイニングも最終局面

AIBによるGPU出荷量増加による品薄や価格の改善が見られる兆しがありますが、需要面でも2021年に比べると変化があるようです。Digitimesによると、コンシューマー向けのGPU需要については2021年末から若干下がり始めているとの事です。この需要の低下については、新しいGPUが消費者に渡り始めたという事もありますが、何よりも個人のマイニング需要の低下が大きいと言えそうです。

マイニングに関しては、NVIDIAが2021年6月からLite Hash Rateと呼ばれるマイニング性能を低下させる機能を追加し、Ethereum自体もマイニング収益を低下させるEIP-1559の導入や難易度の向上、そしてProof of Stakeへの移行が近いという事で手を出すユーザーが減った可能性が高いようです。

今後、Ethereumに関してはマイニングが不可となるProof of Stakeへの移行が2022年中に行われると言われている事からマイニング目的にGPUを買うユーザーはどんどん減っていくと見られています。そのため、その中でGPUの出荷量が増えるとなると、自ずとGPU価格は今よりも安くなることは確実と言えそうです。

 

GPUについては、2022年にはIntelのArc Alchemistの登場もあるため、2021年に対して出荷量が増えると各社AIBは言っているのかもしれません。どちらにせよ、GPUの出荷量が増えれば価格は下がる方向に働くのは確実で、2021年はミドルレンジでさえ7万円近く出さなければ買えなかったGPUが、2022年末になれば5万円程度で買えるようになっているかもしれません。特に、2022年後半にはRTX 4000シリーズやRadeon RX 7000シリーズの登場も控えているので、GPU価格が正常に戻ればTDPが400Wを超えるような最上位モデルでも20万円ぐらいで買えるようにはなっているかもしれません。2021年のノリで発売されれば普通に40万円とか付けられてそうですので、それに比べれば大きな改善と言えそうです。

ただ、価格について期待しすぎない方が良い点もあります。と言うのも世界的に2022年もインフレ傾向が続くことが確実で、2019年などGPU価格が正常だった頃からは既に3年近く経過しています。そのため、例え正常な価格に戻ってもインフレ率を考慮すると2019年代のGPU価格と比較すると1万円近く値上がりしている可能性は十分にあり得ますので、その点は諦めるしかありません。

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