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米アイダホ州の森林で、農務省職員がオオカミの子ども8頭を射殺し、環境保護団体などが抗議している。

殺されたタイリクオオカミは、2003年から地元の高校生が追跡調査を行っている群れ「ティンバーライン」に属していた。

連邦政府・農務省は、捕食動物であるオオカミを減らすために「必要な」措置だったと説明。

これに対し、地元の野生動物保護グループなどは、この地域ではオオカミが「攻撃対象」になっていると非難した。

オオカミ狩りの規制緩和

保守派の共和党が過半数を占めるアイダホ州とモンタナ州の議会では今年初め、放牧場コミュニティーのロビー活動を受け、オオカミ狩りや射殺の規制が緩和された。

アイダホ州では、これまで猟師1人当たり年間15頭だったオオカミ狩りの制限が撤廃されたほか、頭数管理の予算が3倍に拡大された。

また、オオカミ狩りではわなの使用や、航空機からの射殺、全地形対応車(ATV)などの車両を使うことも許可された。

環境保護団体は、こうした積極的な駆除戦術により、アイダホ州のオオカミは現在の1500頭から150頭まで減少すると警告している。これは、2002年に制定された保護法の下限だという。

生徒らが18年間にわたり「保護」

今回標的にされたティンバーラインの群れは、同州ボイシのティンバーライン高校の生徒が、過去18年にわたって非公式に「保護」してきた。ボイシ国有林にある群れの巣穴は今春、空になっているのが発見された。

農務省は、成熟したオオカミを移動させるため、職員が8頭を殺したと認めた。

タイリクオオカミは、一時はアメリカで絶滅しかけたことがある。

1974年の絶滅危惧種法では、連邦レベルで動植物を絶滅から保護し、頭数の継続的な増加を支援することが決まった。

トランプ前政権が保護リストを縮小

しかしドナルド・トランプ前政権は昨年10月、いくつかの動植物を保護リストから削除。対象となった動植物の管理は各州に委ねられた。

アイダホ州のオオカミ駆除に関する新法に賛成する人々は、オオカミがウシやヒツジなどの家畜や野生動物を脅威にさらしていると指摘する。

法案を提出したヴァン・バーテンショー州上院議員は、家畜ディーラーでもある。バーテンショー氏は、オオカミを減らすことで「ウシやヒツジの牧場主、そしてアウトドア用品店」に利益があると説明。また、オオカミと競争しなければならなかった狩猟家のためにもなると述べた。

これに対し環境保護団体は、こうした戦術は非人道的だと強く批判。動物福祉団体「ヒューメイン・ソサイエティー」アメリカ支部の広報担当者は、「アイダホ特有の、市民に愛されているオオカミに対する死刑宣告だ」と述べた。

バイデン大統領に手紙

現在のジョー・バイデン政権は、タイリクオオカミを絶滅危惧種リストに戻すことを検討していると報じられている。

ティンバーライン高校の生徒らはメディアに対し、バイデン大統領にこの件について手紙を書いていると話した。多くのアイダホ州民が、連邦レベルでの保護を再開してほしいと感じているという。

同校で科学教師を務めていたディック・ジョーダンさんは地元紙アイダホ・ステイツマンの取材で、「アイダホ州、モンタナ州、ワイオミング州はオオカミ虐殺の最前線になっている」と語った。

「どうにかしないといけない。非人道的で、非倫理的で、環境的にも良くないことだ」

(英語記事 US conservationists angry over killed wolf pups