金融庁がステーブルコイン発行を銀行・資金移動業者に限定
日本でも発行量が日に日に増しているステーブルコインについて、金融庁が発行体を制限する計画を立てていると報じられた。既存規制の管理下に置くため、銀行・資金移動業のライセンスを取得している企業に限る意向だ。
さらに、仲介業者も新たに監督対象とする。先行している米国での規制強化を参考に、日本でも発行と仲介の両面から規制する方針になるという。目的は、ステーブルコインを通したマネーロンダリングなどの不正を防止することだ。仲介業者も監督対象とする意向からは、ステーブルコインへの本格的な姿勢が伺える。
ステーブルコインはその性質上、銀行と同様の機能を有していることがわかる。日本円や米ドルでステーブルコインを購入できることから、法定通貨を刷っていることと類似するのだ。銀行などの既存金融の場合、金融サービス利用時には厳格な本人確認が必要になることから、マネーロンダリング対策は徹底されていると言える。一方のステーブルコインは、現時点で発行時に本人確認が求められないため、不正に利用されているというのが当局の見解だ。
今回報じられた計画は、2022年の通常国会で資金決済法を改正する形で提出される予定だという。
参照ソース
- 円連動の仮想通貨、発行は銀行・資金移動業のみ 金融庁
[日本経済新聞]
Vitalik氏がイーサリアムの分散性とスケーラビリティの両方を同時に実現できる方法を解説
イーサリアムの共同創業者であるVitalik Buterin氏が、イーサリアムの分散性とスケーラビリティを同時に高める方法を提案した。ブロック生成者と検証者を分けることで実現可能だという。
イーサリアムのようなパブリックチェーンの場合、最も重要なのは分散性の要素だ。ネットワークを運営するノードが十分な数でないとパブリックチェーンとは言えず、一部のノードが結託して不正を行う可能性が高い。ビットコインやイーサリアムでは、1万以上のノードが世界中に散らばっているため、これこそが両者の価値を高めている要因だと言えるだろう。
しかし、分散性が高いことはスケーラビリティが低いことにも繋がる。分散性を高めるには気軽にノードになれる状態を作る必要がある一方で、その場合はノードが保持するブロックの容量を大きくしすぎてはならない。ブロック容量が小さいことはスケーラビリティが低いことを意味するため、結果的に分散性とスケーラビリティはトレードオフになりやすいのだ。
今週は、Vitalik氏の解説を参考にしながら、分散性とスケーラビリティの両方を同時に高めることの重要性について考察する。
参照ソース
今週の「なぜ」パブリックチェーンの分散性とスケーラビリティはなぜ重要か
今週は金融庁のステーブルコイン規制とVitalik氏の提案に関するトピックを取り上げた。ここからは、なぜ重要なのか、解説と筆者の考察を述べていく。
【まとめ】
イーサリアムのスケーラビリティが低いことから現在はマルチチェーン時代となっている
スケーラビリティを高めるために分散性を犠牲にしているブロックチェーンが多い
イーサリアムの分散性とセカンドレイヤーのスケーラビリティは融合しつつある
それでは、さらなる解説と共に筆者の考察を説明していこう。
マルチチェーンとイーサリアム2.0
昨今はマルチチェーンの時代だ。イーサリアムのスケーラビリティが低いことで手数料であるガス代が高騰し、イーサリアムが使い物になっていない状況を受けての変遷となっている。具体的には、PolygonやSolana、BSC、Avalancheといったブロックチェーンが台頭している。
イーサリアムはこの状況を改善するために、イーサリアム2.0という大型アップデートを2020年12月より進行している。イーサリアム2.0がローンチされると、現在のネットワーク運営状況を維持しつつスケーラビリティが高まることが期待される。
加えて、Optimistic Rollupなどを軸に据えたセカンドレイヤーと呼ばれる領域も順調に立ち上がってきた。来年度中には一定の成果が見えるのではないだろうか。
分散性とスケーラビリティ
今回Vitalik氏は、イーサリアム2.0へのロードマップと併せて、現在の分散性を犠牲にしないかたちでスケーラビリティを高める方法について解説している。
基本的に、ブロックチェーンのスケーラビリティを高めるには、ネットワークの管理を集権化する方法が標準となっている。イーサリアム以外のブロックチェーンはほとんどが集権的であるものの、エンドユーザーはそこまで気にしていないようだ。
しかし、ブロックチェーンがここまでイノベーションを生むことができたのは非中央集権を前提にしてきたからだ。既存サービスを分散的に稼働させることで、利益をユーザーへと分配し、より本質的な価値を生み出すのがブロックチェーンである。
そのため、分散性はブロックチェーンにとって最も重要な要素なのだ。そこを犠牲にしてスケーラビリティを高めたところで長期的に続くとは思えない。イーサリアムは、分散性を維持しつつスケーラビリティを高めることに挑戦しているのだ。
分散性はイーサリアム、スケーラビリティはセカンドレイヤーで
Vitalik氏は、ブロックの生成者と検証者を分けることで、分散性を犠牲にすることなくスケーラビリティを高めることができると解説した。
これまでブロックチェーンネットワークに参加する全ノードがブロックの生成と検証を行なっていたものの、これは非効率であると指摘。1万を超えるノードが全てのプロセスに参加しているため、スケーラビリティを高めることができていないと説明した。役割を分担することでこの問題を解決できるという。
また、イーサリアム単体でスケーラビリティを高めるのは今後の主流ではないとして、Rollupなどのセカンドレイヤーにも期待していると言及している。将来的には、分散性を強みとしたセキュリティをイーサリアムが担保し、スケーラビリティはセカンドレイヤーが担保していく関係性だ。
現在のマルチチェーン時代は、イーサリアムとほかのブロックチェーンが競合関係にある一方で、セカンドレイヤーは直接的にイーサリアムに足りない要素を補完する関係にある。イーサリアム2.0によってイーサリアムのエコシステムがより強固になっていくにつれて、ほかのブロックチェーンがどのような動きを見せるのかは要注目だ。