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「木はたくさんあればあるほど、より涼しくなる」と思う人は少なくないかもしれません。確かに森林は暑さを和らげますよね。しかし、先日アメリカで発表された論文によると、1本だけで植えられている木でも、夜間の熱を抑えるのに役立つことがわかりました。

アメリカン大学の研究チームは、米国の首都ワシントンD.C.の異なる地域で、2018年夏のある1日の気温データを7万点以上収集し、分析しました。その中には、木に覆われている舗装された道や未舗装道路、木が植えられている公園などで測定された気温が含まれています。

 

その結果、独立した木が天蓋のようになり、測定地点の半分以上を覆っている場合、木がまったくない地点に比べて、夜間の気温が1.4℃低いことがわかりました。また、木で覆われている部分が測定地点の約20%という場所でも、木がない地点と比べて気温が低いうえ、夜明け前の時間帯でも比較的に涼しいことが判明。平均すると、単体で植えられている木の冷却効果は日没後か午後6時〜7時頃に現れ、夜間まで続く模様です。

 

木陰の冷却効果は以前から知られており、例えば、日本の環境省にその仕組みを説明しているサイトがあります。それによれば、日向と木陰では、後者のほうが気温が低いと思われがちですが、実際には両者の気温はほぼ同じ。それがなぜ、木陰のほうが涼しく感じられるかといえば、その原因は路面から放出される熱にあるといいます。日向で気温が30℃の場合、木陰でも気温は同じく30℃ですが、日向にあるアスファルトの路面の温度は約50℃になるのに対して、木陰の路面はおよそ32℃と低いのです。また、気温30℃の晴れた日でも、日向の体感温度は40℃ほどになりますが、木陰なら太陽の光が遮られ、しかも路面からの照り返しが大幅に減ることで、日向に比べて体感温度は7℃ほど低くなることもあるとのことです。

 

しかし、上記のように体感温度と気温は別のもの。なぜ葉が茂った木が1本あるだけで夜間の気温が1.4℃も下がるのかを説明するためには、別の理由が必要かもしれません。

 

いずれにしても、近年、日本だけでなく世界中で夏の暑さが厳しくなり、都市部ではヒートアイランド現象が起きています。大きな都市では広い公園が少なく、1本だけで(または周りにある木から離れて)植えられている木も多いでしょう。だからこそ、今回明らかになった木の冷却効果がヒートアイランド減少対策に役立つ、と同研究チームの助教授は述べています。

 

【出典】Michael Alonzo et al. 2021. Spatial configuration and time of day impact the magnitude of urban tree canopy cooling. Environmental Research Letters. 16 084028.