オーストラリアのモナシュ大学の研究チームは、砂糖を加えることで、軽くて耐久性に優れた持続可能な次世代の電池を開発した。航空機や電気自動車、潜水艦などに不可欠なリチウムイオン電池の代替として期待ができる。研究成果は『Nature Communications』に2021年9月10日付で公開されている。
リチウム硫黄電池は、理論上はリチウム電池の2〜5倍のエネルギーを蓄えることができ、硫黄が安価で豊富であることからも次世代蓄電池として注目されているが、電極の劣化が激しくサイクル寿命が短いという問題がある。電極劣化の原因は主に2つあり、1つは正極の硫黄電極が充放電に伴い膨張と収縮を繰り返すことによる物理的破損、そしてもう1つは正極から溶出した多硫化物が負極のリチウムと反応してしまうことだ。
2020年に研究チームは、耐膨張性を高めた硫黄電極の開発を報告している。今回は、正極にグルコース系添加剤を加えることで硫黄電極を安定化させ、リチウム電極の硫化を防ぐことに成功した。
今回の開発は、1988年に発表された地球化学に関する報告にある、糖質が硫化物と強く結合することで、地層中における分解に抵抗しているという発見がヒントになっている。
プロトタイプとして作製したリチウム硫黄電池は、リチウムイオン電池よりはるかに高い容量を維持しながら、少なくとも1000サイクルの充放電寿命を示した。
研究チームの技術により、850km以上あるメルボルン~シドニー間を、10年以内にバスやトラックなどの電気自動車が充電なしで走行できるようになる可能性があるという。モナシュ大学の研究者であるMahdokht Shaibani氏は「正極側の問題の多くは我々のチームにより解決した。ただし、この技術を大規模導入するには、リチウム電極の保護に対するさらなる革新が必要だ」と、今後の課題を述べている。
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