auのタフネスケータイの原点「G’zOne」が9年ぶりに復活。2021年冬、同シリーズの20周年を記念した特別企画モデル「G’zOne TYPE-XX(ジーズワン タイプダブルエックス)」が発売される。au 4G LTEに対応した二つ折りケータイだ。
カラーはソリッドブラックとリキッドグリーンの2色。かつてG’zOneシリーズのデザインを担当していたカシオ計算機のデザイナーたちが再び結集し、このモデルのデザインを手がけた。
タフネスの面では、防水、防塵、耐衝撃のほか、温度耐久や耐氷結など米国国防総省規格基準テスト「MIL-STD-810H」の19項目に準拠。かつてない耐久性を備えた、歴代最強のG’zOneだ。
G’zOneはタフネスの原点
G’zOneシリーズの歴史を振り返ると、2000年に初号機が誕生して以来、代を重ねるごとに着実な進化を遂げてきた。最大の特徴であるタフネスは磨きがかけられ、カメラやおサイフケータイなどの搭載により機能面も向上。2005年には初の二つ折りモデルが登場し、2011年にはスマホ版の「IS11CA」も登場している。しかしながら、製造元のカシオ計算機が携帯電話事業を終了したことにともない、G’zOneシリーズは惜しまれながらも2012年にその歴史に幕を下ろした。
G’zOneシリーズで培われたauのタフネスへのこだわりは、2014年にスタートしたTORQUEシリーズへと受け継がれている。2021年3月には次世代通信サービス「5G」に対応した最新モデル「TORQUE 5G(トルク ファイブジー)」が登場。スマホやケータイになによりも耐久性を求めるユーザーから愛されている。
担当者の熱い思いが復活の原動力に
auのタフネスケータイの原点であるG’zOne が、2021年のいま、なぜ復活を果たすことになったのか?スマホ全盛の現在、新しいケータイを開発した理由とは?KDDIの企画担当者および新モデル「G’zOne TYPE-XX」のデザインを手がけたカシオ計算機のデザイナーたちに話を聞いた。
――まずはG’zOneが復活することになった経緯を教えていただけますか?
近藤「新しいG’zOneの企画の検討をはじめたのは2017年。いまから4年前のことです。その頃からKDDIは、2022年3月31日に予定されているauの3Gサービスの終了に向けて、3Gケータイをお使いのお客さまに4Gのスマホやケータイへの乗り換えをお願いしていく準備を進めていました。
当時、3Gケータイをお使いのお客さまに話を伺うなかで、特に多く寄せられたのが「G’zOneの後継モデルを出してほしい」というご要望です。auでは2014年からG’zOneシリーズに続くタフネス端末としてTORQUEシリーズを展開していますが、「使い慣れたG’zOneをこれからも使い続けたい」「やっぱりスマホよりケータイがいい」とおっしゃるお客さまが少なくありませんでした。それほどG’zOneは人気のモデルだったのです。
KDDIの社内でも、auの3Gサービス終了後もタフネスケータイを残していくことは検討していましたし、個人的にも「G’zOneの後継モデルをつくりたい」という思いがありました。ただ、カシオさんはすでに携帯電話事業を終了していたので、G’zOneを復活させることは現実的にはハードルが高い。それでもなんとかすることはできないだろうか?そう考えて、半ばダメ元で、カシオの井戸さんに相談してみました。
井戸「私と近藤さんは旧知の間柄。かねてより公私にわたって交流がありました。また近藤さんは熱烈なカシオファンで、以前から多くのカシオ製品をお使いいただいています。」
近藤「はい、カシオさんの製品、大好きなんです。G’zOneのほか、腕時計やデジカメなど、たくさん持っています。あと、カシオさんといえばやっぱり電卓は外せません。最近は3万円のプレミアム電卓を買ってしまいました(笑)。」
井戸「そんな近藤さんから受けた相談は、「もし、いまG’zOneがあったとしたら、それはどんなデザインになっているんでしょう?」という漠然としたもの。かしこまった相談というよりも、あくまでも雑談ベースでした。そのとき、私の頭には「いま現在のG’zOneであれば、こんな感じかな?」というイメージはすぐに浮かびました。私たちはケータイをつくることをやめてしまいましたが、ケータイのデザインのことをまったく忘れてしまったわけではなく、常に頭の片隅にはありましたから。
ただ、現在のカシオは、ケータイを製造することができません。それでもG’zOneを復活させるにはどうすればよいか?話し合いを重ねるなかで、近藤さんから提案されたのは、「製造は別のメーカーさんにお願いするので、デザインだけでもカシオさんがやってくれないか?」というものでした。正直それを聞いた時は、「そんなこと本当にできるの?」と思いました。」
――カシオさんが製造を手がけず、デザインのみを担当することはあるのでしょうか?
井戸「いいえ、カシオ社内にはデザイナーが多数いますが、自社商品以外のものをデザインすることは過去に例がありませんでした。前例がない初めてのチャレンジだったため、苦労することもありましたが、社内調整の末、なんとか実現にこぎつけることができました。私自身、ケータイのデザインからしばらく遠ざかっていましたが、だからこそ「久しぶりにやってみたい!」という気持ちが湧いてきましたし、なにより近藤さんの「何としてもG’zOneを復活させたい!」という熱い思いに応えたいと考えたのです。」
躍動感や剛性感を表現
――「G’zOne TYPE-XX」をデザインするうえで特にこだわったポイントを教えてください。
井戸「全体フォルムのイメージはあったので、次に「歴代G’zOneのデザインから、なにを変え、なにを引き継ぐべきか?」を考えました。メンバーで議論し、「丸形サブティスプレイは外せない」という意見が出て、その点はデザイナー全員が同意しました。初代モデルの「G’zOne C303CA」のほか、「G’zOne TYPE-R」「G’zOne TYPE-X」などで採用していた丸形のティスプレイは、G’zOneらしさを象徴する重要な要素のひとつだからです。
また、キーの形状に関しては、初代の「G’zOne C303CA」の丸型を引き継いだうえで進化させています。
杉岡「「G’zOne TYPE-XX」はデザインコンセプトとして「モータースポーツ」を掲げました。目指したのは、分厚い鉄板を曲げたような力強さと躍動感の表現、クルマの骨組みのシャーシ(フレーム)が組み込まれているような剛性感のあるイメージを、ケータイのデザインに落とし込むことです。そのために、いろいろなクルマやバイクのデザインを徹底的に研究したうえで、魅力的な曲面の変化やエッジの緊張感、陰影の付け方などを参考にし、スポーティなデザインの演出をデザインの要素として取り入れました。」
「G’zOne TYPE-XX」のボディをさまざまな角度から見ていただくと、曲面を多用したダイナミックな流線型のデザインになっていることがわかると思います。これはクルマやバイクのデザインから着想を得たものです。
こちらはデザインをスタートした当初に描いたラフスケッチです。このラフスケッチを叩き台にしてデザイナー陣で議論しながら、ブラッシュアップしていきました。
こちらはモックアップ。社内の3Dプリンタで作製したものです。これで実際の形状や手触り、凹凸のバランスを確認して、細部を詰めていきました。
塗装に込められたこだわり
――カラーはソリッドブラックとリキッドグリーンの2色。特にリキッドグリーンの鮮やかな色合いが印象的です。
菱山「グリーンは過去のG’zOneシリーズでもキーカラーのひとつです。お客さまからの人気も高く、「G’zOne TYPE-XX」でも採用しました。今回私たちが目指したのは、歴代G’zOneのグリーンをしのぐ、インパクトのある鮮やかなカラーです。」
色名称のリキッドグリーンですが、今回のTYPE-XXが「モータースポーツ」をデザインコンセプトとしていることから、エンジンクーラント(不凍液)をイメージした蛍光色を表現しています。歴代G’zOneのグリーンがくすんで見えてしまうほど鮮やかなグリーンが実現できました。
長年お付き合いのあるモデルメーカーや塗料メーカーの技術者と、何度も打ち合わせを重ね再現しています。最終調整では塗装ラインへの技術者との立ち会いを通じ、納得の行く色・質感に仕上げることができました。
なぜこれほど鮮やかなグリーンを表現できたのか?塗料自体はこの10年、大きく進化したわけではないのですが、使う光輝材の組み合わせを工夫しました。またベースとなる樹脂顔料の彩度の高さは、この10年ほどで劇的に進化しています。それらがこの鮮やかさを出せた理由です。
リキッドグリーンの表面をじっくり見ていただくと、まるで磨き上げたような鏡面になっており、光が当たる部分と影になる部分に美しいコントラストが生まれています。ぜひ現物を手に取ってご覧いただきたいですね。
また、もうひとつのソリッドブラックは、リキッドグリーンとは対照的にマットな質感ながら、磨き込んだ石のようなさらっとした手触りが特徴です。差し色にカッパー(銅色)を使い、ラグジュアリーな雰囲気に仕上げました。リキッドグリーンがキーカラーですが、ソリッドブラックも自信作です。お好みでお選びいただければと思います。
隠れキャラ「カシペン」も復活
――画面デザインに関してはいかがですか?
杉岡「外装デザイン同様、「モータースポーツ」をコンセプトにしてデザインしました。たとえば、5種類あるオリジナルの壁紙は、エンジンルームやディスクブレーキをモチーフにしたものや、「G’zOne MOTORS」という架空のレーシングカーメーカーのロゴを入れたものなど、いずれもモータースポーツのエッセンスをデザインに取り入れています。」
杉岡「また、壁紙のほか、ストップウォッチやアラームなど、ところどころにカシオペンギン、通称「カシペン」をこっそり忍ばせています。これはちょっとした遊び心なのですが、実は近藤さんたっての希望でもありました。」
近藤「はい、わがまま言ってすみません(笑)。G’zOne以外にペンギンのキャラクターが人気の”カシペンケータイ”と呼ばれたシリーズがありました。実は、過去のG’zOneシリーズには一度もカシペンが登場したことはなかったのですが、今回はお願いして隠れキャラとして入れていただきました。ぜひ使いながら探してみてほしいですね。」
丈夫なケータイを求めるすべての方へ
――久しぶりに復活を遂げるG’zOne。どういった人に、どういった使い方をしてほしいですか?
近藤「「G’zOne TYPE-XX」は、キャンプや登山などのアウトドアアクティビティを楽しむ方々から、水産業や農業などタフな現場で働く方々まで、ケータイになによりも耐久性を求めるお客さまに自信を持っておすすめできます。特に今回は、タフネス(TORQUE)シリーズを手掛ける京セラさんが製造を担当しています。TORQUEを使ったことがない人にも、耐久性能の凄さを実感していただきたいです。電話を頻繁にする人なら通話専用機としてお持ちいただくのもいいと思います。
何よりもう一度G’zOneを使いたい、カシオが好き、G’zOneは知らなかったけど個性的なデザインが魅力的と感じていただけた方々に、ぜひご注目いただきたいですね。」
井戸「私自身はアウトドアとは縁遠いのですが、デザインものとして「G’zOne TYPE-XX」を購入するつもりです。ケータイのデザインの仕事はとてもエキサイティングでしたし、私を含めたデザイナーだけでなく、設計陣のモチベーションが非常に高く、完成度の高い製品に仕上げることができたと思います。」
スマホ全盛の現代だが、「通話ができれば十分」「丈夫で壊れないケータイを使い続けたい」という人は一定数存在する。シリーズ最強のタフネスを携えて待望の復活を遂げた「G’zOne TYPE-XX」は、そういった利用者の声に応えたモデルだ。