フィアット500eがルノー トゥインゴの電気自動車に挑戦。
フィアット500eとルノーTwingoエレクトリックを、我々は比較してみた。果たして、どちらの電動シティラナバウトが優れているのか?
体重を減らし、質素な生活をする。
週が明ければ、また新年の抱負に悩まされる日々が始まる。
小型・軽量で手頃な価格のシティラナバウトEVが2機種も揃った。
この2台がありさえすれば、少なくとも自動車の観点からは、日々の燃料節約という目標は達成することができる。
この2台のチャーミングな電動シティラナバウトを比較してみた。
ルノーは2020年から「トゥインゴ」を電気自動車として提供している。
3代目となる、このフランスの小型車は、2014年から内燃機関を搭載したモデルが登場した。
「フィアット500e」は「トゥインゴ」とは異なり、2007年から作られたレトロモデルと見た目は似ているものの、こちらも発売から1年が経過した新開発の電動モデルだ。
最も広い空間を提供するトゥインゴ
全長3.60mの「トゥインゴ」は、基本的な性能は何も変わっていない。
前後席は内燃機関仕様と同じ広さを確保している。
そしてこの比較では、「500e」は後席がかなり窮屈なので、居住空間では、十分に勝利している。
後輪駆動の「トゥインゴ」は、エンジンと駆動軸を、従来通りリアに配置し、前輪駆動に頼るフィアットとは一線を画している。
「トゥインゴ」の場合、最小回転径は約9mで済む。
イタリアのライバルは、少なくともあと1mは必要だ。
車両データ:
フィアット500e | ルノー トゥインゴ エレクトリック | |
パワーユニット | 電動モーター | 電動モーター |
バッテリータイプ | リチウムイオン | リチウムイオン |
バッテリー容量 | 37.3kWh | 21.4kWh |
最高出力 | 87kW(118PS) | 60kW(82PS) |
最大トルク | 220NM | 160Nm |
最高速度 | 150km/h | 135km/h |
トランスミッション | 1速ギアボックス | 1速ギアボックス |
ドライブ | 前輪駆動 | 後輪駆動 |
トランク容量 | 185~550リットル | 188~980リットル |
長さ×幅×高さ | 3632×1683×1527mm | 3615×1646×1541mm |
ホイールベース | 2322mm | 2492mm |
基本価格 | 26,790 ユーロ(約万円) | 21.790 ユーロ(約万円) |
テスト車価格 | 30,990ユーロ(約万円) | 25.540ユーロ(約万円) |
電気駆動により、フランス製シティラナバウトである「トゥインゴ」は、新たな俊敏性を手に入れた。
電動モーターが後輪駆動車を静かに、だが素早く押し出し、特に市街地では、「トゥインゴ」は実に生き生きとした印象を与え、60km/hまで計測して、よりパワフルな「500e」にも決して劣らぬ速さだ。
しかし、それ以降はパワーが著しく低下する。
そしてカントリーロードや高速道路では、もはや「500e」のような自信のある走りは感じられない。
嬉しいことに、バッテリーが小さいため、「トゥインゴ」の重量は制限内に収まっている。
1,155kgと、内燃機関の兄弟車に比べて100kgほど重いが、走行中にその重さがマイナスになることはない。
前後の重量バランスは50:50と完璧で、低重心であれば、「トゥインゴ」はさらにダイナミックな走りを可能にする。
しかし、不快な振動をもたらすステアリングは、すぐにドライバーに「もういいや」と言わせる。
フィアット500eは本当に楽しい
スポーティタイプの役割は、明らかに「500e」が担っている。
そしてそれは、そのエンジンパワーによるものだけではない。
乗り込んだ直後、シーティングポジションが良いため、ドライバーは最も快適にハンドルを握れる。
さらに、張りのあるシャシーによって、路面との一体感をより高めている。
また、よりダイレクトなステアリングのおかげで、ワインディングロードでもドライバーに負担をかけず、「500e」はとても楽しい。
快適性も捨てたものではない。
すでに述べたように、スプリングとダンパーは固めだが絶妙な設定となっており、そのことは段差やひび割れたアスファルトを走行するときに顕著に現れる。
測定値:
フィアット500e | ルノー トゥインゴ エレクトリック | |
0-50km/h加速タイム | 3.2秒 | 4.0秒 |
0-100km/h加速タイム | 8.8秒 | 12.3秒 |
60-100km/h中間加速タイム | 4.8秒 | 7.2秒 |
80-120km/h中間加速タイム | 6.6秒 | 11.6秒 |
乾燥重量 | 1,349kg | 1,155kg |
重量配分(フロント/リア) | 58/42% | 50/50% |
最小回転半径 | 10m | 9m |
シート高 | 625mm | 660mm |
制動距離(100km/h時より) | 35.7m | 34,9m |
テスト時電力消費量 | 18.8kWh/100km | 16.4kWh/100km |
航続距離 | 197km | 130km |
どの速度域においても、フィアットは、ルノーよりも、格段に静かな室内空間を保っている。
テストの詳細は、以下、フォトギャラリーでどうぞ。
2台のキュートな電動シティランナバウトをテスト
フィアット500eとルノーTwingoエレクトリックを比較してみた。果たして、どちらの電動ランナバウトが勝者となるのか?
全長3.60mの「トゥインゴ」は、基本的な性能は何も変わっていない。フロントシートとリアシートは、内燃機関仕様と同じ広さを確保している。「フィアット500e」は、後席がかなり窮屈だ。
より長い「500e」の197kmに劣る、173kmの航続距離と、わずか130kmで充電ステーションに戻らなければならないのは、「トゥインゴ」の弱点でもある。
しかし、フィアットはルノーよりも高い。テストに供された「500e」は、最終的に30,990ユーロ(約409万円)となった。それが勝利を逃す要因となった。
「トゥインゴ」のためには、少し多くのお金をかけなければならない。テストに必要なすべての機能を搭載した場合、25,540ユーロ(約337万円)となる。
第2位 800満点中495点: フィアット500e
快適な乗り心地、軽快な走り、軽快な充電技術などが評価され、特性評価を獲得。しかし、じゃっかん高めの価格がマイナス点だ。
価格: 26,790ユーロ(約353万円)より
第1位 800満点中501点: ルノー トゥインゴ エレクトリック
航続距離の短さを、最高の空間条件と有利な価格で補うことができているといえよう。
価格: 23,790ユーロ(約314万円)より
結論:
どちらも甲乙つけがたく、どちらも勝利者となれる要素を持っている。
しかし、最終的な勝利者は僅差で「トゥインゴ」だ。
「トゥインゴ」は非常に操縦性に優れた「eシティラナバウト」であり、また手頃な価格で日常的に使用するのに適している。
走りを最重要視するなら、500eは最良の選択だ。
ルノーとフィアット、つまりイタリアとフランスで、同じようなEVの性格がここまで違うということが大変興味深い。言ってみれば「トゥインゴ」はあくまでもシティーコミューターというかシティランナバウトとしてかなりの部分に見切りをつけ、簡単で軽く、そして安い価格を実現している。
一方の「500e」は、あくまでも今までの「500」に劣らないような走行性能を実現するために大きな出力を持ち、バッテリーも大きいがその分高価である。このセグメントのEVとしてどちらが正解で、どちらが正しい判断なのかはわからないが、とにかくかなり異なった設計思想で作られた2台であるということが興味深い。
そしてボディに関しても、「トゥインゴ」と「500e」は異なった価値観で作られているし、内装(特にシートなどは全く異なったもの、といえるだろう)も、2台には大きな違いがみられる。そしてそれはどちらともなかなか魅力的で素敵なデザインなのではないか、と個人的に思えるものだ。
今回は主に価格の面で「トゥインゴ」が勝者となってはいるが、推測ではあるがおそらくパワフルで運転して楽しいのは「500e」の方なのではないかとも思う。しかし「トゥインゴ」は軽さとシンプルさが魅力の一台であるから、プレミアム路線の「500e」とはやはり違う方向の楽しさを持っていることもたしかであろう。そしてそれは内燃機関の「トゥインゴ」と「500」そのままの魅力の違いでもある。
EVになってもこの「トゥインゴ」と「500e」のようにまだまだ違う魅力を持ち、それぞれの国やエンジニアたちの考えが垣間見られる・・・。EVの世界にも自動車の魅力の可能性を感じた比較テストだった。
Text: Stefan Novitski and Dennis Heinemann
加筆: 大林晃平
Photo: autobild.de