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斉藤朱夏おススメ!<25歳までに観ておきたいアニメ>3作

『ラブライブ!サンシャイン!!』の渡辺曜役でデビューを果たし、以降も『俺を好きなのはお前だけかよ』のサザンカ役、『ワンダーエッグ・プライオリティ』の川井リカ役を務め、近年はソロアーティストとしても活躍するなど、マルチな才能を輝かせ続ける声優・歌手の斉藤朱夏さん。8月16日には25歳の誕生日を迎え、その翌々日の18日には待望の1stフルアルバム『パッチワーク』をリリースと、まさに成長とともに世界を広げ続ける斉藤さんに、誕生日にまつわるお話と、大人と青春のはざまに立つ方に向けてのおススメアニメをうかがいました。

――少し早いですが、25歳、おめでとうございます!

斉藤 いやあ~、早いもので、高校卒業直前に『ラブライブ!サンシャイン!!』のオーディションを受けてから約6年ちょっと。会場に高校の制服を着ていって「私はJKブランドを持っているんだぞ!!」という手段に出たのが、遠い過去のようですよ(笑)。正直、高校卒業後はフリーターをしながら走り続けて、その努力がどこかで芽生えれば良いなと考えていて。まさかデビュー作で大好きな『ラブライブ!』シリーズに携われて、そこから止まることなく今まで進み続けているのは、なんというか……ありきたりな言葉ですが奇跡のような時間だなと思います。

--斉藤さんのこの6年半は、”濃密”という言葉では足らないレベルですからね。

斉藤 本当に、濃すぎるぐらいに濃い日々。2018年にAqoursのライブがロサンゼルスで開催され、それが終わった後すぐに福岡に飛んでライブをした時はさすがに「私、もしかしてスーパースター?」と錯覚しました(笑)。しかも入国のときに、あまりにも短い滞在時間だったためか、LAの空港で「何しに来たの?」と怪しまれ。英語が話せないからより怪しまれた挙句、一人取り残される事件もあって。メンバーがいるかって点呼してる時に朱夏がいないって慌ててスタッフさんが戻ってきてくれました(笑)。

――アメリカの入国審査は厳しいと言われていますからね(笑)。

斉藤 なんとか無事に入国できました(苦笑)。正直、やるべきことの多さやAqoursが大きくなる速さに、心も体も追いつけなくなる日もありました。それでも、曜ちゃんとの関係を深めていったことで、私の世界はどんどんとすごい方向へと広がり続けて。特に今年は声優として『ワンダーエッグ・プライオリティ』という素晴らしい作品に携われましたし、ソロアーティストとしても『パッチワーク』という大切な1stフルアルバムを出すことができて、自分の歩くスピード感がやっとわかってきたんです。斉藤朱夏、やっと大人になってきました。

――25歳という大人と思春期の狭間にある年齢を迎えるに辺り、今回斉藤さんには、これから大人になっていく若者に方に向けて、そしてこれから大人になっていく子どもを持つ親御さんに向けて、これは観ておけ! というアニメを3作ご紹介いただきたいなと思います!

斉藤 いやあ~、3作選ぶなら、1作目はこれで決まりですよ。『ラブライブ!サンシャイン!!』。

――1作目に出てこなかったら驚いていたところです(笑)。

斉藤 ですよね(笑)。『ラブライブ!サンシャイン!!』は、9人の少女たちが、大きな夢を抱いて立ち上がる物語です。とにかくあがいて、ずっと走り続けていて。キラキラした青春の面はもちろんあるんですけど、あの年代独特の夢への情熱がから回ったり、どうしようもないところもしっかり繊細に描いている、かなりリアルな作品なんですよね。例えば千歌ちゃんなら自分を「普通」と言い続けて何をするにも上手くいかない自分を責めているし、ルビィちゃんはものすごく人見知りで自分を中々出せない引っ込み思案なところがあって……すごく夢や憧れが溢れた作品なんですが、その中に私たち自身の苦悩も見つけることができるんですね。なので年齢を限らずに、夢がなかなか持てなかったり「自分なんて……」と思ってしまう方は必ず観てほしい。きっと9人の誰かに共感できると思うし、彼女たちが進む姿に勇気をもらえると思います。

――2作目はなんでしょう? この流れからすると……。

斉藤 たぶんご想像どおり、『ワンダーエッグ・プライオリティ』です(笑)。

--やはり! 思春期真っただ中の少女たちを描くという点で、『ラブライブ!サンシャイン!!』が表とすれば『ワンダーエッグ~』は裏にあたる作品でしたね。

斉藤 そうですよね。主役のアイちゃん、私が演じた川井リカをはじめ主要キャラ全員が14歳なのですが、その年齢ならではの「早く大人になりたい!」と考えている子どもと大人の狭間に立った彼女たちの気持ちがすごく丁寧に描かれているんです。観たらきっと女の子は共感してくれるでしょうし、男の子は同世代の異性が普段どんなことを考えているのかがよくわかるんじゃないかと。

――『ワンダーエッグ~』の心理描写は丁寧を通り越して、繊細の域でした。

斉藤 あまりの繊細さに、私自身リカの気持ちをちゃんと理解できたか不安になる瞬間があったぐらいです(笑)。この作品は、リカたちと同年代の子を持つ親御さん世代にとって、子どもたちの理解の助けになるはずです。
あと何より『ワンダーエッグ~』には、イジメなどを「見て見ぬふり、してはいけないよな」という教えがあるところも大きいと思います。

――まさに ”ミテミヌフリ” という異形の存在が少女たちを襲う場面もありました。

斉藤 凶器を持って暴れ回る、怖いヤツでしたねえ(笑)。でもミテミヌフリ同様に、本当に「見てみぬふり」って怖くて。例えばクラスでも職場でもイジメがあったのを見たとき、「自分が悪口を言われちゃうかもしれない」とか「自分の今いる場所がなくなるかも」という怖さで、目を背けてしまう人はいると思うんですけれど、そこで目を背けて人が傷つく方が辛いわけです。今いる世界があなたの世界の全てじゃないんだよ、視野を広く持って困っている近くの人に手を差し伸べよう、ということを『ワンダーエッグ~』は教えてくれると思っています。

――斉藤さんの言葉で改めて『ワンダーエッグ~』の持つ深みに気づけました。では最後の3作目を!

斉藤 ここはもう、私の幼い頃から大好きな『クレヨンしんちゃん』を推すしかありませんね。『しんちゃん』は本当に長い時間続いているから、劇中で使っている携帯がガラケーからスマホに変わったりしてるんですけれど、野原一家は本当に変わらなくて。観ていてなんかホッとします。個人的に昔のTVシリーズ、あと劇場版がとにかく大好き。毎回泣かされています(笑)。

――特に原恵一監督の作品以降の劇場版は、涙腺を刺激してきますよね。

斉藤 この涙って、大人になった時に『しんちゃん』の持っている”深さ”に気づいて出てくるんだと思うんですよ。野原一家の会話って、すごく日常的な話の中に私たちが人と付き合っていく上で大切な深いことを語っているので、そういう一つひとつの言葉に耳を傾けて、人との良い関係を築いていってもらいたいですね。絶対に子どもの頃から『しんちゃん』を観続けていたら、ステキな人になると思うんです。なので、甥っ子には何かあるたびに「『クレヨンしんちゃん』、観なよ」と布教しています(笑)。

――正しい啓蒙ですね。この夏、必ず観ておくべき劇場版『クレしん』、1作上げるとすれば?

斉藤 うわぁ~!!! これは悩むな~……う~ん、やはり夏ということで、ここは『オトナ帝国の逆襲』(『映画クレヨンしんちゃん 嵐をよぶ モーレツ!オトナ帝国の逆襲』01年)で!

――ナイスな選出! 『オトナ帝国~』を観るのが、斉藤さんからの夏休みの宿題!ということで。

斉藤 ぜひぜひ(笑)!

>>>斉藤朱夏さんの撮り下ろしカットを見る(写真11点)
斉藤朱夏(さいとう・しゅか)
8月16日生まれ、埼玉県出身。身長151センチ。A型。2016年に『ラブライブ!サンシャイン!!』渡辺曜役で声優デビュー。Aqoursメンバーとして活動。2019年にはミニアルバム『くつひも』でソロデビューも果たした。公式ファンクラブは「しゅかランド」。ライブの前に必ず食べるのは納豆+卵かけご飯。
取材・文/田口俊輔 撮影/荻原大志