独マックス・プランク電波天文学研究所が率いる国際研究チームが、16年にわたる二重パルサー連星の観測により、1915年にアインシュタインが発表した一般相対性理論が今でも成立することを示したと発表した。この研究は、2021年12月13日付で『Physical Review X』に掲載された。
一般相対性理論は、宇宙における大きなスケールでの重力の働きを説明しているが、量子力学が支配する原子スケールでは破綻する。そのため、研究チームは、中間的スケールで一般相対性理論がまだ成立するかどうかを確かめるために検証方法を見つける必要があった。
幸運なことに、ちょうどよい宇宙実験室といえる二重パルサー連星「PSR J0737-3039」が、2003年に、オーストラリア連邦科学産業研究機構(CSIRO)が運営するパークス天文台の電波望遠鏡により発見された。パルサーは高速回転する高密度の天体で、まるで「宇宙の灯台」のように一定周期で電波を放射し、非常に強い重力場を作り出している。この二重パルサー連星系は、2つのパルサー「PSR J0737-3039A」と「PSR J0737-3039B」で構成されており、PSR J0737-3039Aは毎秒45回の周期で自転し、もう一方のPSR J0737-3039Bは毎秒2.8回の周期で自転する。この連星は2時間半に1回公転する。
国際研究チームは過去16年にわたってこの二重パルサー連星を観測。一般相対性理論について、これまでで最も厳密なテストを終え、この理論が正しいことを示した。観測結果は、アインシュタインの一般相対性理論とほぼ99.99%一致することを証明した。今回行われたテストには、重力波の放射、強い重力場における光伝搬の効果、重力場において時計の進みが遅れる「時間の遅れ」の効果などが含まれる。
一般相対性理論によると、二重パルサー連星系における極度の加速は時空の構造をひずませ、系を遅くする波紋を送り出すという。重力波の放射によりエネルギー損失が生じるが、重力波が軌道エネルギーを奪うと軌道の大きさが小さくなり、公転が速くなる。そのため、この2つのパルサーは約8500万年後に衝突すると予測されている。しかし、このエネルギー損失は長い時間をかけて起きるため、その影響を検出することは困難だ。
しかし、自転するパルサーから届くパルスは正確な時計のように周期的で、微小な摂動を追跡するには完璧なツールといえる。パルスの到着時刻を電波望遠鏡で数年から数十年かけて精密に測定することで、軌道運動のわずかな変化を検出することができるからだ。
パルスが地球に届くまでに約2400年かかるが、研究チームは16年間にわたり、200億回以上のパルスの正確な到着時間をモデル化した。それでも、一般相対性理論の検証に必要となる、連星から地球までの距離を示すには不十分だった。
研究チームは、地球上の各地に設置されているアンテナで構成される電波干渉システム「超長基線アレイ(Very Long Baseline Array:VLBA)」からのデータを加えることで、毎年、星の位置にわずかなぶれが生じていること見つけることができ、そのおかげで地球から連星までの距離が明らかになった。
今回の結果は、宇宙をより正確に理解するうえで意味のあるものだ。将来的には新しい電波望遠鏡と新しいデータ解析を使って一般相対性理論の弱点を発見し、そこからさらに優れた重力理論へとつながることが期待されている。
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