【ワシントン=中村亮】バイデン米大統領は14日、アフガニスタン情勢に関する声明で「私はアフガン駐留米軍を指揮する4人目の大統領だ。この戦争を5人目に引き継がない」と強調した。反政府武装勢力タリバンが首都カブールに迫るなかでも、約20年におよぶ戦争の終結を優先する意向を示した。
バイデン氏は①米国人の退避支援を目的に米兵5000人をアフガンへ派遣②将来のテロ阻止に向けた能力維持③戦闘停止に向けてアフガン政府支援④タリバンによる米兵への攻撃に即時反撃⑤米国を支援したアフガン人の米国移送手続きを加速――する方針を決め、関係閣僚らに指示した。
アフガン駐留をめぐり「アフガン軍が自国を守ることができない、もしくは守る意志がないのであれば、米軍がさらに1年間または5年間駐留しても意味がない」と指摘した。「ほかの国でも国内紛争が起きているなかで終わりなき米軍駐留は受け入れがたい」としてアフガン撤収を改めて正当化した。
タリバンが12日以降に主要都市を相次いで制圧してから、バイデン氏がアフガン情勢に言及するのは初めて。バイデン氏は4月、アフガン駐留米軍を撤収させる方針を表明していた。
バイデン氏は5000人の米兵派遣について「米国や同盟国の人員の秩序的かつ安全な退避を確実にするためだ」と説明した。攻勢を強めるタリバンの掃討を主要任務とはしていないのは明白だ。在カブール米大使館で働く外交官らの退避状況に応じて8月末に予定する撤収期限がずれる可能性はあるが、米史上最長のアフガン戦争に終止符を打つ方針は変わっていない。
バイデン政権はタリバンによるカブール攻撃が当初想定より早い可能性があると判断し、外交官らの退避を急いでいるとみられる。米国防総省は12日、米兵3000人をカブールの国際空港に派遣すると発表。国防総省当局者によると、これとは別に米兵1000人が空港に駐留しており、バイデン氏はさらに1000人を上積みして合計で5000人態勢とするよう指示した。
アフガニスタンの反政府武装勢力タリバンは14日、アフガン政府軍に対して攻勢を一段と強めた。米シンクタンク「民主主義防衛財団」によると全34州都のうち23州都を支配下に置いた。
14日には北部要衝の第4の都市マザリシャリフを制圧した。マザリシャリフは、米国がアフガン戦争初期に協力関係を築いた反タリバン勢力「北部同盟」の本拠地とされていた。同地の制圧はタリバンの勢いを物語る。アフガン政府のガニ大統領は11日にマザリシャリフを訪れて政府軍を鼓舞したばかりだった。
タリバンはカブールと隣接する東部ロガール州も制圧し、カブールに迫る。ガニ氏は抗戦を続ける構えだが、タリバンの勢いを止められるかどうかは不透明だ。