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勤続40年、小中学校で伝える生命

 一度だけ、処分寸前の犬3匹を機械の陰にかくまって育てたことがある。1カ月で上司に見つかった。担当を変わるよう命じられたが、申し出て自分の手で処分した。以来、自分は機械の一部だと思うことにした。「自分は悪くない」。そう言い聞かせた。

 1999年、動物愛護管理法が大幅改正されセンターは「共生」に取り組む施設に変わった。人と動物の調和、啓発。業務は新しくなり、犬や猫を収容する条件は厳しくなり、処分数は激減した。だがその変化に気持ちが追いつかない。ずっと心を押し殺して仕事をしてきた。あれはいったい何だったのか。あの犬や猫たちは無駄死にか。再び精神科に通うようになった。

 現在もセンターには毎年300匹を超える猫が収容される。多くは野良猫だが、飼い主が連れてくることもある。「家族がアレルギーを発症した」「収入がなくなり飼えない」。最も多いのは「高齢飼い主の死亡・入院による飼育継続困難」。昨年度、飼い主に連れてこられた猫は17匹。うち10匹が譲渡不可能と見なされ、処分された。

 職員は現在、小中学校に講師として派遣され、生命の尊さを教える。自身はこの40年で結婚し、孫も生まれた。しかし今も、妻を除く家族には自分の仕事を明かせていない。

 子どもたちの前で話すたび、心は乱れる。それでも教壇に立つ。体験を伝えることが、あやめた動物たちへの罪滅ぼし。そう思う。