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「共生社会」の実現へ 触れても見ても読める文字

東京オリンピック・パラリンピックは、誰もが暮らしやすい「共生社会」に向けて、意識を高めるきっかけになりました。今回は、「共生社会」がテーマです。

問題に挑戦!

問題
今回の東京オリンピック・パラリンピックでは、競技場だけでなく公共の乗り物や施設、道路などにおいても、障害の有無にかかわらず利用しやすいデザインを考え、設置や改良がされています。このようなデザインのことを何と言いますか。
(東京女学館中学校 2020年)

最近、製品のデザインにも取り入れられていますよね。

正解は「ユニバーサルデザイン」です。
ユニバーサルデザインは、障害のあるなしや年齢、性別、人種などにかかわらず、多様な人が使いやすいようにデザインする考え方のことです。

例えば、車いすのまま乗ることができる、タクシー。障害者や、小さな子どもを連れている人、性的マイノリティーの人も入りやすいトイレ。これらも、ユニバーサルデザインです。
そうしたなか、斬新なデザインも登場しています。

目で読める点字

取材したのは、東京の渋谷区役所。
この建物の中に使われている、あるユニバーサルデザインを考えた方に来ていただきました。

デザイナーの高橋鴻介さんです。それは、トイレの案内図に使われていました。

緑色の文字で「ダレデモトイレ」と書いてありますね。触ってみると白い点が盛り上がっています。
これは、点字でしょうか?

高橋さん
「はい、まさに点字です。『ブレイル・ノイエ』という文字なんですけれども、点字と、目で読む文字を一体にした文字になります」

「新しい点字」という意味の、「ブレイル・ノイエ」。
「トイレ」の3文字で見てみると、「ト」と「イ」と「レ」、それぞれを表す点字があります。
このうち例えば「ト」は…

点字では、画像の左側のように表します。「ブレイル・ノイエ」では、その点と、カタカナの線が、重なるように作られています。

点字と、目で読む文字が、まさに「一体化」しているんです。

高橋さん
「見える人が点字に興味を持つ、見える人と見えない人がこの文字を通じて出会うきっかけになる、みたいなことが生まれるといいなというのは、僕が開発したときに考えたことです」

ブレイル・ノイエの開発

もちろん、開発は簡単ではありませんでした。
例えば、カタカナの「コ」で見てみると…

これでは、点が1つ、含まれていません。
どうしたら、すべての点を通ることと、文字として見えることを、両立できるか。

試行錯誤の中で見つけたのが、文字の「輪郭」を線で表現する「アウトラインフォント」でした。

これだと、より多くの点を通すことができます。
こうして「ブレイル・ノイエ」が完成しました。

見える人にとっては、ちょっと読みにくい、という感覚を一瞬覚えるかもしれませんが、高橋さんは、その書体のいわば“くせ”が大事だと考えています。

高橋さん
「文字として、ツールとして、使えるものでなければいけませんが、とはいえ、きれいに完成しすぎてしまうと、おそらく興味が消えてしまう。書体としての『くせ』みたいなところ、見える人にも「おっ」と思ってもらえるようなものは、大事なのかなと思っています」

社会への広がり

「ブレイル・ノイエ」は、岩手県の陸前高田市も導入。
民間企業にも広がり始めていて、サービスの向上や働きやすさに、一役買っています。

ファッションにも、とり入れられています。
画像の服にはアルファベットの「ブレイル・ノイエ」が、あしらわれています。

視覚障害がある立場から、開発に関わった石井健介さんに話を聞きました。

石井さん
「洋服のデザインというと、形や色やプリントにフォーカスが当たりがちだけど、一緒にデザインを楽しめるとすごく感じています。どの立場の人が触れたり見たりしても、何が書いてあるかわかるので、すごくユニバーサルというか、共通の文字になっているなと感じます」

高橋さん
「今まで、あまり会話やコミュニケーションが生まれてこなかった場所に、何かひとつのコミュニケーションツールを置くと、実は意外とそこの間に壁はなくて、自然と混ざり合ってしまう、そういう仕掛けを、たくさん作っていきたいと思います」

障害に関わるユニバーサルデザインというと、障害のない人たちが使っているものをどう使いやすくするかという視点、つまり、障害のない側が基準で、そこからどう、障害のある人が暮らしやすいように工夫できるか、と考えがちですよね。
一方で、高橋さんの挑戦は、見える人も見えない人も、当たり前に同じものを使う世界にしたい、というもので、「新しい点字」は、見えない人の世界に関心を寄せて、その感覚に触れる。そんな、視点の転換を感じさせるものでした。

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