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 子育て世帯を対象とした新たな給付金の内容や方法を巡って混乱が生じている。

 当初、政府は半分の5万円はクーポン券とすることとしていたが、特に地方自治体から、全額現金にすべきだとの意見が出されたからである。岸田文雄首相は13日の衆院予算委員会で、全額現金での一括給付を認める考えを表明した。

 テレビなどは、自治体の首長の反対意見を紹介し、政府の対応の問題を強調しているが、何が本質的な問題なのかが明らかにされていない。

10万円給付の発端

 そもそも、今回の10万円給付は、公明党が先の衆院選で公約として掲げたことが出発点である。

 公明党は、18歳以下の子どもを対象として所得制限なしの給付を提唱していたが、世論のバラマキ批判を受けて、自民党から所得制限が必要という意見が強く出された。

 両党の調整の結果、11月10日、親の年収が960万円以上(夫婦と子ども2人の場合)の世帯を除くことで合意された。960万円とは児童手当の支給基準であり、給付手続きも児童手当の仕組みを活用して迅速に給付することになった。

 併せて、年内に中学生以下に5万円現金給付し(これは2021年度の予備費で対応)、原則、来春ごろに使途を定めた5万円のクーポンや、高校生世代への10万円分相当を給付する(これは21年度補正予算で対応)ことも合意された。

 自公両党が合意したのは、選挙後の特別国会で岸田文雄氏が第101代首相に選出された日であった。

 岸田政権が始動するときに、与党内でもめていることで批判されることから、両党が妥協し、比較的早い決着となった。しかし、給付の目的などを十分に詰めないままに決めたことが、今回の混乱の遠因である。

自治体や野党からの反発

 10万円給付を決めた「コロナ克服・新時代開拓のための経済対策」(11月19日閣議決定)では、自治体の実情に応じて全額現金給付も可能とすることが規定されていた。

 クーポンが使える商店が限られている地域もあるからだ。全額現金給付とすることができるならばということで、日本維新の会代表の松井一郎大阪市長は、12月9日の定例記者会見で、「クーポン券を希望する人なんていない。絶対に現金給付」だと述べた。野党の立憲民主党なども、全額現金給付にすべきだと主張した。

 また、クーポンで給付する場合の事務コストが967億円(補正予算に計上)に上ることも明らかになり、巨額の経費をかけてなぜクーポンにこだわるのかといった批判も強くなった。

目的が曖昧な給付

 5万円現金・5万円クーポンとした理由として、岸田首相は、9日の衆院代表質問で、「より直接的・効果的に子どもたちを支援することが可能」「民間事業者の振興や新たな子育てサービスの創出、消費の下支えにつながる」と述べている。その背景には、昨年の10万円給付の大半が貯金に回ったとの指摘がある。