もっと詳しく

世界各国でコロナ禍によるペットブームが起きていますが、アメリカも例外ではありません。しかし、同国ではそれと同時にペット保険の需要も急増しています。一体なぜでしょうか? 現地からレポートします。

↑アメリカではペット保険に加入するのがもはや普通になっている

 

アメリカでは、コロナ禍により在宅勤務が増えたことで、これまで「時間的な余裕がなくて、ペットを飼うことができない」と思っていた人の間でペットを飼い始める動きが広がりました。その影響はペット市場にも及んでいます。アメリカ・ペット製品協会によると、国内のペット市場規模は2020年に1036億ドル(約11.4兆円※)と、前年に比べ6.7%増加。2021年には同5.8%増の1096億ドル(約12兆円※)に達するだろうと予測しています。

※1ドル=約109円で換算(2021年9月10日現在。以下同様)

 

ペット関連の支出としては、ペットフードやおやつなどが全体の約半分を占めていますが、注目すべきはペットに関する医療費の増加。2020年の動物病院への支出は前年と比べて7.2%増の314億ドルに上っており、2020年のペット市場規模の3分の1近くに相当します。

 

アメリカでは、人間だけでなくペットにかかる医療費も非常に高いことを考慮すると、動物病院への支出額が増えているのは、ペットの増加に伴う必然的な現象といえるでしょう。その一方で、医療費の自己負担額を抑えるために、昨今では新しくペットを飼う際、ペット保険への加入がスタンダードになりつつあります。

 

2021年5月、北米ペット健康保険協会は、北米のペット健康保険分野の販売高規模が6年連続で2桁成長を記録したと報告。同協会のレポートによれば、2020年に販売された保険料総額は、前年に比べ26%以上増加して、過去最高の21億7400万ドル(約2387億円)となり、北米全体の被保険者であるペット数は前年比22.5%増の345万頭以上になったとのことです。

 

アメリカではペット保険に入っていない場合、診察や検査、手術などを含む治療費は100%飼い主の自己負担になります。大きな手術や大病で医療費が高額になりそうな場合は、選択肢として安楽死を勧められる場合もあることから、ペット数の増加に伴いペット保険の需要は右肩上がりで伸びているのです。

 

日本のペット保険との違い

アメリカと日本のペット保険で大きく違うのは、一般的にアメリカでは、定期検診や歯の手入れ、ノミ対策、予防接種などもペット保険の対象になるという点。日本では保険料を払っていても、その対象になるのは病気やケガ、手術など高度な治療だけということが一般的で、多くのペット保険で歯やノミなどの定期的なケア費用は補償の対象外です。しかし、このような費用が意外とばかになりません。犬の場合は犬種によって異なりますが、一般的なアメリカのペット医療費やケア費用は下記の通りです。

 

定期検診 45~55ドル(約4900〜6000円)
予防接種(犬猫) 10~100ドル(約1100〜11000円)
歯の掃除(犬) 50~300ドル(約5500〜33000円)
ガンの専門医による診察(犬猫) 3282〜4137ドル(約36万〜45万円)
ガン治療(犬猫) 4000ドル(約44万円)
糖尿病(犬猫) 1634~2892ドル(約18万〜32万円)

(※犬または猫、ブリード、年齢、持病など個々の条件によって価格が異なります)

出典:https://www.carecredit.com/vetmed/costs/

 

上の表を相場とすれば、犬種や年齢で違いはあるものの、アメリカの平均的な月額ペット保険料は犬が約50ドル(5500円)、猫が約30ドル(3300円)なので、ペット保険に加入したほうがお得でしょう。さらに、アメリカでは犬猫だけでなく、爬虫類や小動物、鳥、ヤギなど、ほかのペットに対応している保険もあります。コロナ禍においてペット業界全体の裾野が広がったことや、需要に合わせて大手保険会社がペット用に新プランを発売したことなどが、ペット保険の売り上げをここまで押し上げたといえるでしょう。

 

アメリカでは「ペットがほしい」と思ったとき、保護施設から動物を引き取ることが一般的ですが、その際に予防接種の支払いと、かかりつけ医の登録をしなければならず、最近ではそれに加えて、ペット保険の加入を引き取り条件にしている施設もあるようです。コロナ禍により在宅時間が増え、ペットを迎え入れる人が多くなりましたが、ペットはかわいいだけではなく、人間と同じようにお金がかかるという現実を知っておくことが必要です。人とペットとの幸せな生活のために、ペット保険の需要はさらに高まっていくでしょう。