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 東京・池袋で2019年4月、母子2人が死亡し、9人が重軽傷を負った暴走事故で自動車運転死傷行為処罰法違反(過失運転致死傷)に問われ、東京地裁で2日に禁錮5年(求刑・禁錮7年)の実刑判決を受けた旧通産省工業技術院の元院長・飯塚幸三被告(90)が控訴しない意向を周囲に示したことがわかった。検察側も控訴しない見通しで、実際に期限の16日までに双方が控訴しなければ判決が確定する。

 犯罪加害者の家族を支援するNPO法人「ワールドオープンハート」(仙台市)の阿部恭子理事長が15日、飯塚被告が住む都内の自宅を訪問し、被告と面会した。その後取材に応じた阿部理事長によると、被告は「せめてもの償いの一歩として、刑を受け入れたい」と話したという。

 同法人は飯塚被告の家族を支援しており、今年6月頃からは被告本人とも面会を重ねていた。阿部理事長によると、被告の自宅には脅迫状が届いたり、嫌がらせが行われたりすることもあり、被告の家族が疲れ切った様子で対応を相談することもあったという。

 判決によると、飯塚被告は19年4月19日午後、豊島区東池袋で乗用車を運転中、ブレーキとアクセルを踏み間違えて暴走。青信号の横断歩道を自転車で渡っていた主婦の松永真菜さん(当時31歳)と長女の
莉子りこ
ちゃん(同3歳)を時速約96キロではねて死亡させ、通行人ら9人に重軽傷を負わせた。

 飯塚被告は公判で、暴走の原因を「何らかの車の異常」と主張して無罪を求めたが、判決は事故後の車両解析などから、車の異常ではなく運転ミスが事故を招いたと結論づけていた。

 事故で妻子を失い、飯塚被告に判決を受け入れるよう求めていた松永拓也さん(35)は取材に対し、「判決が確定するまでは動向を見守りたい」と話した。

 判決が確定した場合、検察当局は刑の執行に向けた手続きに入ることになる。

 刑事訴訟法は、被告が「70歳以上」や「著しく健康を害したり、生命に危機が生じたりする場合」などに刑の執行を停止することができると規定。飯塚被告は被告人質問で、運動能力の低下が著しくなっていることなどを述べており、検察当局は今後、刑事施設への収容の要否を慎重に検討する見通しだ。ただ、法務・検察幹部からは「よほどの事情がない限り、収容することになるだろう」との声も出ている。