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衆院選の公示が19日に迫る中、当選3回の自民党候補者らの間で緊張が高まっている。

 第2次安倍晋三政権下や自民党への追い風が吹く中で行われた過去3回の衆院選と異なり、今回は苦戦を覚悟する候補者が少なくないためだ。不祥事が相次ぎ、「魔の3回生」と揶揄(やゆ)された世代でもあり、自力で勝利をもぎとり、汚名を返上できるかどうかの瀬戸際に立っている。

「おはようございます。いってらっしゃい」

衆院解散から一夜明けた15日朝。東京2区から出馬予定の自民党の辻清人前衆院議員は、月島駅(東京都中央区)に向かう会社員らを笑顔で送り出した。1年ほど前から毎週金曜日に辻立ちを続けているといい、男児から「あ、また立っている」と声をかけられる場面もあった。

「厳しい選挙だが、やってきたことを地道に訴え、チーム力で頑張る」。当選3回の辻氏は産経新聞の取材にこう述べた上で、「特に不祥事が目立つ期なので、一層気を引き締めて頑張りたい」と語った。

当時の民主党政権への逆風が吹いた平成24年衆院選で、自民は新人119人を当選させ、政権を奪還した。26、29年の衆院選は支持率が高かった安倍政権の恩恵を受けたため、3回生は「厳しい選挙を経験していない」との指摘がある。

麻生太郎副総裁は14日の麻生派(志公会)の会合で「これまでの3回はいずれも追い風の順風な選挙だったが、今回は初めて順風ではない」と述べ、「気を付けよう、暗い夜道と3回生」と奮起を促した。

3回生の中には岸田文雄政権で初入閣を果たした牧島かれんデジタル相や、小林鷹之経済安全保障担当相ら将来を期待される人材も少なくない。ただ、数の多さから不祥事でつまずくケースが目立つ。

また、厳しい戦いを経験していないため、選挙地盤ももろいとされる。「衆院選の顔」選びとなった先の総裁選では、国民的人気の高い河野太郎広報本部長の陣営に駆け込む姿が目立った。しかし、頼みの河野氏は首相に敗退。計算が狂ったある若手前議員は「地元で『自分たちが望んだ首相と違う』と批判されている」と頭を抱える。

ただ、「風」や党首の人気に頼ってばかりでは「魔の3回生」のレッテルは剝がせない。自力で当選を果たし、「頼れる4回生」へと脱皮できるかが問われている。(今仲信博)