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国策落語は、戦時中、三代目三遊亭金馬や七代目林家正蔵など、当時の人気落語家によって戦意高揚のために作られました。

演芸史研究家の柏木新さんによりますと、昭和15年から盛んに作られ、現在およそ140の演目が確認されているということです。

内容は、出征を名誉としてたたえたり、軍事費確保のために国民に貯蓄や債券購入を勧めたりする内容で、寄席で披露されたり、書籍やレコードとして販売されたりしていたことが分かっていました。

今回、NHKが、前身である社団法人・日本放送協会のラジオ放送の記録を調べたところ昭和15年から終戦までの間に、少なくとも430回、落語が放送されていました。

そして柏木さんに依頼して演目を調べたところ、長屋で銀行を開業し、貯金を勧める「裏店銀行」や、日本軍の強さを賛美した「空中戦」といった、少なくとも14の国策落語が19回にわたって放送されていたことがわかりました。

中には、寄席や海軍病院から中継されたものや、別の記録によりますとラジオの放送が初披露だったものもありました。

柏木さんは、「これまで『ラジオで国策落語を聞いたことがある』という人はいたが、放送で全国に流されていたことが初めて資料で裏付けられた」としています。

そのうえで、「当時、落語などの演芸番組は、国民を楽しませる目的で放送されていた。その中に人気落語家による国策落語をうまく組み込み、『笑い』という衣の下に、『戦争』というよろいを着せることで国民を戦争に協力させようとしていた。本来、笑いを取る落語は、戦争とは合わないが、落語ですら戦争に利用されていたことは、歴史の教訓を見る上でも非常に重要だ」と指摘しています。

国策落語をめぐっては、平和の尊さを知ってもらおうと5年前から林家三平さんが、祖父の七代目・林家正蔵の名前で発表された「出征祝」という演目を披露し、各地で公演を行っています。