高知県は、「企業の地方進出に関する調査」の結果を発表した。若い人ほど地方で働くことや暮らすことについてポジティブに思っていることや、地方で働くことについてポジティブに捉える従業員は経営者が思っているよりも多いことなどが分かった。
調査は、東京都、大阪府、愛知県に在住する20代~60代の従業員200人と、経営層(経営者・役員)200人を対象に、インターネットを用いて9月に行われた。
若い人ほど「地方で働くことや暮らすこと」にポジティブ
まず、「コロナ前は仕事柄上、リモートワークはできないと思っていましたか」との質問では、「できないと思っていた」が70.0%、「できると思っていた」が30.0%だった(※コロナ前:2020年2月以前。以下同)。
現在のリモートワークの実施状況について尋ねる質問では、「コロナ前もしていて、現在もしている」が10.3%、「コロナ前はしていないが、現在はしている」が34.0%で、計44.3%が現在もリモートワークを行っているという状態だ。
リモートワークを「コロナ前はしていないが、現在はしている」と回答した136人を対象に、「働く環境を変えて“地方”で働きたいと思いますか」と訪ねたところ、「そう思う」が11.0%、「どちらかと言うとそう思う」が27.2%、「どちらかと言うとそう思わない」が26.5%、「そう思わない」が35.3%だった。コロナを機にリモートワークを始めた人のうち、計38.2%が地方で働く意向があるようだ。
「コロナ禍を経て、地方に住むことや働くことに対してポジティブな気持ちになりましたか」との質問では、「そう思う」が11.3%、「どちらかと言うとそう思う」が29.0%、「どちらかと言うとそう思わない」が25.0%、「そう思わない」が34.8%だった。
この質問で「そう思う」「どちらかと言うとそう思う」との回答は、年代が低いほど多くなっている。具体的には、20代は計54.2%、30代は計51.5%で半数を超えるが、40代は計46.0%、50代は計37.8%、60代は計32.4%となっており、若い世代ほど地方への移住や勤務はポジティブに考えていることがうかがえる。
しかし、地方への移住や勤務に対してポジティブに考えている「そう思う」「どちらかと言うとそう思う」と回答した161人を対象に、「現在、どの程度地方で働く計画を立てていますか」と質問したところ、「具体的に計画を立てている」と答えたのは5.0%にすぎなかった。
地方で働くことにポジティブな従業員は、経営者が思っているよりも多い
経営層に「現場のスタッフが地方で働きたい気持ちがあると思いますか」と質問したところ、「そう思う」「どちらかと言うとそう思う」が合わせて20.5%だった。
しかし、前述の「コロナ禍を経て、地方に住むことや働くことに対してポジティブな気持ちになりましたか」との質問に対する回答を従業員に絞ると、「そう思う」「どちらかと言うとそう思う」は合わせて45.0%に上る。
経営層は、従業員が地方での勤務を望んでいないと思っているが、実は従業員の半数近くはポジティブに考えているという傾向がうかがえる。
企業の地方進出は「コスト削減」「販路拡大」を重視、地域の企業・人とのつながりも
企業の地方進出においては「経営コストの削減」や「営業販路の拡大」が重視されるほか、「地方にいる優秀な人材の採用」「地元企業との連携・協業」「新規事業の創設・推進」といった、進出先の地域の企業や人とのつながりを求められていることも分かった。
経営層に「地方進出を検討する際にネックになっているもの」を質問したところ、「費用対効果が読めない」が48.5%、「地方に進出しても、思ったほど経費を削減できない」が22.5%、「すぐに開設できる立地がない」が18.0%、「人材が集まらなさそう」が17.0%、「時間がかかりそう」が15.0%、「地方進出を検討するうえで十分な情報がない」が13.0%だった。
経営層に対する「地方拠点(サテライトオフィス)を作ることで、何を最も望みますか」との質問には、13.5%が「経営コストの削減」と答えている。さらに「年間でどれくらいのコスト削減を望みますか」と尋ねたところ、年間で550万円(中央値で算出)の削減を期待しているという結果になった。
経営層に「新たに地方に進出した場合、取り組みたいことは何ですか」と質問したところ、「営業販路の拡大」が21.5%、「地方にいる優秀な人材の採用」が20.0%、「拠点としての体制確立」が18.5%、「進出先の地元企業との連携・協業」が16.0%、「本社業務のサポート」が12.0%、「新規事業の創設・推進」が12.0%となっている。
また、「地方の移転先・進出先に求める選定条件」では、「コストメリット」が32.0%、「営業機会」が23.0%、「インフラが充実している」が19.5%だった。