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ジョー・サウスが亡くなった。今年は多数の偉人が亡くなられているが、リヴォン・ヘルムにせよ、ダックダンにせよ、南部にとっての大きな打撃が多い。特にこのジョー・サウス、有名どころではディープパープルの「ハッシュ」(僕ら世代にはクーラ・シェイカーがなじむか)の作者。そのディープパープルのジョン・ロードも亡くなってる。

裏方での活躍は数知れないジョー・サウス。アレサ・フランクリンに、ディラン、ウィルソン・ピケットにソロモンバーク…この辺からわかるように、根底にあるのはダウンホームでソウルフルな感覚。このファーストアルバム「イントロスペクト」にもその感覚に溢れた名曲が多数収録されている。

だけどこの作品の何が凄いかって、表層の、セルアウトした(はたまたアヴァンギャルドな)部分だと思う。リリース年が68年ということを反映した、エフェクトを凝らした録音。フィルスペクターを明らかに意識したアレンジ。これが本格的に南部の泥臭い音に乗るって場面はなかなか見ないでしょう…そりゃ本来は「水と油」なわけで、馴染まないはずなんですが…楽曲の圧倒的な良さと、小気味よいファンキーさが絶妙なほど機能して、時代のポップスとして仕上がってる。アヴァンギャルドな実験とセルアウトとがギリギリで同列に語れる時代の恩恵をこの作品も多分に受けている。

冒頭から、ヘンテコな音になってなきゃデラニー&ボニーやリオン・ラッセルの走りのような、ゴスペルクワイア従えたスワンプテイスト。明らかにフィルスペクターが手掛けたアイク&ティナ・ターナーの作品、ロネッツ辺りを意識した作品群。ブリティッシュビートなファズキダーまで飛び出して、でもやっぱり南部全開である。この表層のいかがわしい雑食性、今ウケると思うんだよなぁ…

ちなみに名曲「孤独の影」はインナーサークルのバージョンで誰もが耳にしたことあるはず。

フラワーでハッピーなサージェントペパーズ症候群の影響を受けた怪作。私的には大名盤っす。

R.I.P