Koch Mediaは,スペインのWeird Beluga Studioが開発を行うトップダウン型アクションゲーム「Clid the Snail」(PS4 / PC)のプレビュー版をメディア向けに公開した。開発者へのインタビューを行う機会も得たので合わせて紹介しよう。
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コンシューマ機向けにはPlayStationエクスクルーシブ作品として,2021年6月に制作がアナウンスされていた「Clid the Snail」は,人間文明が何らかの原因によって滅びてしまい,代わって小動物たちの文明が勃興したダークなファンタジー世界が舞台となる。
主人公の“クリッド”は,進化によってヒューマノイド化したカタツムリ種族で,その粗暴な言動によって町から追われてしまった問題児だ。
クリッドは,とにかく考えるよりも先に手が動いてしまうという“トリガーハッピー”な性格だ。導入部分ではバッタ種族の町に,美味しいバンブージュースを提供する酒場があることを聞きつけ,とりあえず目の前に立ちはだかる敵と戦ったり,レーザービームを使ったパズル要素を解いたり,相棒であるさらに小さな光の精霊 “ベル”と会話したりするなどして,進んでいく。
そして,途中で恥ずかしがり屋のハリネズミ,シャーマンのカメ,無口なコウモリ,忍者のカエル,独眼のカメレオンなど,種族は異なるが同じ境遇を持つキャラクターたちが集う“アラストル”という集団の仲間に加わり,なぜカタツムリ種族のライバルであるナメクジ(スラッグ)種族が急成長しているのか,といった世界の秘密に触れていくことになるという。
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トップダウン型のアクションは,ゲームパッドの2つのアナログスティックを駆使する“ツインスティックシューター”というサブジャンルに属し,左スティックでキャラクターを移動を,そして右スティックで銃器を向けている方向を制御,トリガーなどのボタンで相手を攻撃していくという,オーソドックスなプレイになっている。
武器には,ライフルからショットガン,爆弾をバラまくような複数のパターンがあるほか,重装備化された背中の強化外殻“シェル”からホーミングミサイルなど特殊攻撃を繰り出すこともできる。
今回用意されたデモはPC版で,キーボードではW/A/S/Dの移動でマウスルックはカーソルに固定式という仕組みだった。このアクションスタイルでは照準の高さまでは指定できないので,階段のような段差がある場所では敵への攻撃はヒットしないが,後退しながら相手を誘い込んだり,相手の攻撃を避けてグルグルと周囲を移動しながら打ち込んでいくという,典型的なプレイになっている。もちろん,後半になるほど武器の種類によって敵へのダメージも変化するなど,ちょっとした思考と慣れが要求されるとのことだ。
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世界観がユニークで,人間のガイコツが“タイタン”(巨人)と呼ばれて地面から露出していたり,クローバーやシダなどの植物がどれも特大サイズだったり,ギターや100円ライター,指輪のようなものが転がっているなど,アポカリプス後のミニチュアワールドも堪能できる。前述したバッタに加えて,ビートルやウサギ,魚などの種族が“シタデル”と呼ばれる生活拠点を持っているとのことなので,そうした小動物たちの持つ様々な文化を見聞していくのも面白そうだ。
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Clid the Snail – Release Announcement | PS5, PS4
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開発者インタビュー 〜 荒くれ者が自分の居場所を見つけるストーリー
今回,「Clid the Snail」のメディア向けブリーフィング後にインタビューのお相手をしていただいたのは,Weird Beluga Studioの5人のメンバーのうちの1人で,ゲームデザインとナラティブを担当するRicardo Chorques Mesa(リカルド・チョルケス・メサ)氏だ。彼らは元々大学の仲間ということだが,まずはその結成のいきさつから聞いた。
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4Gamer:
Weird Beluga Studioは2019年に設立されたとのことですが,この「Clid the Snail」は,学生プロジェクトだったのでしょうか。
Mesa氏:
いえ,私を含めて設立メンバーの何人かはマドリードのゲームデザインの学校で活動していたのは事実ですが,「Clid the Snail」は卒業後に企画し始めたものです。ソニー・インタラクティブエンタテインメントが定期的に各地域で開催するインディ開発者発掘プロジェクト「PlayStation Talents」の話を聞いてからゲーム作りを開始してプロトタイプを提出し,うれしいことに認めてもらうことができました。その縁でパブリッシャのKoch Mediaとの提携ができたというわけです。
4Gamer:
それから2年で開発したというのはすごいスピードだと思いますが,スペインでも大流行したCOVID-19の影響も受けなかったのですか?
Mesa氏:
そうですね。思えば開発のほとんどは各自が自宅になりましたが,幸いチームが5人であったこともあり,大きな問題がなかったのは良かったと思います。
4Gamer:
シェルは,カタツムリらしい面白い要素ですが,どのように機能しますか?
Mesa氏:
シェルは異なるユニークアビリティを持つものがいくつか存在し,それを交換できます。現時点では,4つのアビリティがありますが,それぞれ強力ですのでクールダウン時間が設定されており,限定的に使ってもらえるようになるでしょう。デモでも利用できるミサイルの場合は,現時点では6分のインターバルに設定されているのです。アビリティには「ディフェンスバブル」という防御的なものもあり,プレイヤーの皆さんがどのようなスタイルでアクションを行うかによって使いこなすことができるのです。
4Gamer:
プレビューデモには「レイラーの種」というものが登場しますが,これは何でしょう。
Mesa氏:
このゲーム世界には「レイラーの樹」というものが存在しており,マップ中に点在するその種を4つ集めることで,ヘルスゲージを増やすことができます。また,「レイラーサップ(樹脂)」というアイテムも存在し,それを集めることでシェルを強化していけるという具合です。クラフトの要素というわけではないですが,アラストルのアジトに持ち帰って,そこにいる亀のシャーマンに渡すと,新しいシェルを作ってくれるんですよ。
4Gamer:
宝箱を見つけると,中からキラキラと光るアイテムも入手できますね。
Mesa氏:
ゲームの中では通貨のように機能するクリスタルで,それを集めて銃弾を補充するのに使えます。
4Gamer:
パズルはどのようなものがありますか。
Mesa氏:
基本になるのはさまざまな場所にあるレーザーガンで,これに触れると瞬時に破壊されて,前のセーブポイントからやり直しになってしまいます。レーザーガンには,銃器で撃つことによってスイッチを作動させるオブジェクトがあるので,それほど難しいものではありません。このほか,特定の電撃銃でしか作動しないものなど,違うパターンのパズルもいくつかあります。
4Gamer:
多くのゲーマーはツインスティックシューターとしてこのゲームをプレイすると思いますが,パズル要素に興味がない人が解けずにストレスを感じてしまうということは想定していますか。
Mesa氏:
武器の種類によってその銃撃効果のテーマカラーがピンクだったり青だったりしており,それらはスイッチが放つ蛍光色とマッチしているので,感覚的に理解できていただけると思います。
また,こうした武器も実際の完成版では段階的に利用できるようになっていくので,どの武器がどのような性能やテーマカラーを持っているのかも,より分かりやすく理解できるよう調整しています。しばらくプレイしていると,そのパズルの原理に慣れ親しんでもらえるはずです。
4Gamer:
コンパニオンの妖精“ベル”は,どのようにゲームプレイに関わってくるのでしょう。
Mesa氏:
パズルのヒントを直接くれるわけではないですが,マップ中に散らばるストーリー要素で,例えば「あ,ここに何かがあるわ」といったことを教えてくれたり,このゲーム世界の在り様を提示してくれたりします。
4Gamer:
ゲーム時間は8〜10時間ほどとのことですが,わりと大きな世界を感じさせるマップもトレイラーで紹介されていますね。
Mesa氏:
世界観を作り込むという観点ですね。でも小さな開発チームですので,なぜ人間が滅んだのかといった部分にまでは踏み込めていません。もちろん,この作品はオープンワールドではないので自由に移動できるというわけではないですが,人間文明が滅亡して以降の世界を表現しようと努めています。
バッタやスラッグなど5種類の小動物種族のシタデルをめぐって,その世界を堪能してほしいですね。中でもユニークなのはサカナ種族で,彼らは水の外では生きていけませんから,プレイヤーの前には機械化された外殻で陸に上がってくる彼らに会えるでしょう。ちょっとエヴァンゲリオンの影響を受けている部分かもしれません(笑)。
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4Gamer:
それは楽しみです。本作のサウンドについても教えてください。
Mesa氏:
うちのレベルデザイナーが作曲も担当しているのですが,レベルの1つにエレクトロニックギターの橋があることからも分かるように,ヘビーメタルやロック音楽に随分と傾倒しているんです。ですから,「Clid the Snail」でも,彼はそれぞれのレベルや主要キャラクターに合わせたテーマソングを,エレクトロニックギターやアコースティックギターを中心にして30曲ほど作り上げました。
4Gamer:
「Clid the Snail」のテーマは何ですか?
Mesa氏:
ゲームとしては,ツインスティックシューターから連想されるアーケードシューターとは異なり,ストーリーやパズルのためにときおり立ち止まったり,あるいは見過ごしがちなゲーム世界の風景に目を向けてほしいと思います。
ストーリーとしては,我々は誰にでも,ときおり「自分はグループや社会の中に入れていない」というような疎外感を感じることがあると思います。クリッドもそうして自分の種族から出ることになったキャラクターですが,アラストルの仲間たちもそれぞれが同じ境遇であり,心を打ち解ける仲間と共に自分の居場所を見つけていくことになります。
4Gamer:
デモのクライマックスは,バッタのシタデルを火炎放射器で破壊するネズミの“スカー”(Skar)が登場しますが,あれはどういうシチュエーションなのでしょう。
Mesa氏:
スカーも,言うなればアウトキャストな存在であり,クリッドのモチベーションとしては,バンブージュースを楽しみにやってきたのに,スカーに壊されたことにキレて戦いを挑むのです。その後,アリスターというグループのメンバーである“ヘールシー”(Healsy)に咎められ,言うなればスカーの代行としてクリッド自身がアリスターのメンバーになるのです。
当初,スカーを倒してしまったことに怒るメンバーもおり,クリッドが最初からアラストルに望まれて加わったわけでもないというのも,ストーリーの一部なわけです。
4Gamer:
ゲームの世界観にこだわりも感じられますね。
Mesa氏:
はい。Unity 3Dエンジンを使っていますが,ゲームプレイは違うとしても,自分たちにとっては「Diablo」や「Pillar of Eternity」のような作品だと考え,独自の世界観になるよう努力しました。
従来のツインスティックシューターとは異なる,スローなペースのアクションですが,それだけに,より多くのプレイヤーに意外性を楽しんでいただければと思います。
4Gamer:
ありがとうございました。
「Clid the Snail」は,PlayStation 4のタイムエクスクルーシブタイトルとして今夏中にリリースされる予定で,PC版がその後に発売されるほか,現時点ではPlayStation 5への対応も計画中とのこと。基本的には,ゲーム中のキャラクターたちは“ギブリッシュ”などと言われる“小動物語”を話すだけだが,その字幕やインタフェースは日本語化が進められている。
サクっとプレイするツインスティックシューターの醍醐味に,ストーリー性を加味したWeird Beluga Studioの処女作について,続報も楽しみにしておきたいところだ。
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