2021年10月17日,Xbox Game Studios傘下のMojang Studiosは,マインクラフトファンのためのオンラインイベント「Minecraft Live」を開催し,来月にローンチから10周年を迎える「Minecraft」や,2020年にリリースされた「Minecraft Dungeons」のアップデート情報を明らかにした。
本稿では,イベント開催前に行われたプレス向けブリーフィングをもとに発表内容をまとめてみよう。
Minecraftは,スウェーデンのゲーム開発者である“Notch(ノッチ)”ことMarkus Persson(マルクス・ペルソン)氏が,たった1人でJava言語を利用して制作したサンドボックスゲームだ。2009年に開発途中のバージョンの販売を始め,徐々にファンを獲得していき,2011年11月18日(北米時間)にバージョン1.0となる「アドベンチャー・アップデート」を公開した。
2014年9月には,Microsoftが開発スタジオのMojang(当時)およびMinecraftの知的財産を25億ドルで買収し,Microsoft Studios(当時)に編入。2017年にはC++言語による「Pocket Edition / Windows 10 Edition」などを統合する「Bedrock Edition」が公開された。同年には中国でも正式ローンチを果たし,この10年にわたって世界中のゲーマーに愛されている。
その人気ぶりが衰える様子はなく,Mojang Studiosのストックホルムスタジオをけん引するUlrika Höjgård(ウルリカ・ホイガード)氏によると,2021年8月の月間プレイヤー数は1億4000万人を超えたとのこと。また,全体の2/3のプレイヤーがマーケットプレイスを利用しており,ファンメイドのMODコンテンツの販売総額は3億5000万ドルにのぼり,2020年にはYouTubeにおいて2010億ビューを達成して単体IPの1位に輝いている。
Minecraft Live 2021
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Minecraftのアップデート
・PC版がXbox Games Passに登場。ランチャーはJavaとBedrockが統合
PC版Minecraftは11月2日より,MSが展開するサブスクリプションサービスのXbox Game Passのライブラリに加わる。これはBedrock Editionだけでなく,Java Editionもバンドルされたものとなり,1つのMicrosoft アカウントでログインできるランチャーに統合される形で,プレイヤーは好きなバージョンをプレイできる。Bedrock Editionは引き続き,コンシューマおよびモバイル版とのクロスプレイが可能だ。
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・「Caves & Cliffs: Part II」はマップにさらなる高低差を生み出す
Minecraft向けに年内リリースが予定されているアップデート「v1.18」の名称が「Caves & Cliffs: Part II」だ。2021年6月の「v1.17」から,さらに洞窟や岸壁の要素を重点的に強化し,新たなワールド生成システムによって世界を拡張するものになるという。より高い山,そこに形成される崖,そしてより低い地点に伸びる洞窟が加わる。
ゲームディレクターのAgnes Larsson(アグネス・ラルソン)氏によると,β版のテストプレイをしているプレイヤーからは「次世代Minecraftのようだ」と称賛されているとのこと。地形の高低差が多くのプレイヤーに刺激を与え,さらにクリエイティブな世界を作り出していくことに期待を寄せている。
もちろん,これまでにプレイヤーが作り込んできた世界をムダにしない形で,ワールド生成システムは世界を拡張する。例えば,新たな巨大洞窟を既存の世界の下に広げるといったものになるようだ。これは「ブレンディング」と名付けられた機能だという。
ラルソン氏は「Minecraftは皆さんに信用していただけるゲームです。多くの愛と時間をかけて,ワールド生成システムを開発してきました」と述べた。鉱脈の量も増え,キャンドルのような新アイテムも加わるそうだ。
また,βテスターの間では噂話としてコミュニティを盛り上げていた「Seed Parity」について,Bedrock EditionとJava Editionでの共有が可能になることが公式にアナウンスされた。どちらかの世界で種を見つけると,そのワールドマップを別のEditionでも利用でき,かなりそっくりな世界が再現されるようだ。
・2022年のアップデート「The Wild Update」とは
2022年には「The Wild Update」が予定されている。ラルソン氏によると「2022年の早い時期にリリースする」とのことだ。
これは,世界の辺境に広がる原野をさらに美しくし,多くのバラエティを持つバイオームを増やすことにより,探索する楽しみを追加することが目的だという。高く成長した白樺の間から光が差し込み,地面には草花も生える明るい印象の「白樺の森」,樹木が生い茂る「マングローブの湿地帯」といったように,それぞれの環境に応じたフィーチャーを加えることで,あらゆる場所に興味深い景色が広がる。
なかでも湿地帯には相当な力が入っているらしく,カエル,カエルの卵,そしてオタマジャクシが新たに追加される。従来のモブの赤ちゃんは体が小さいだけだったので,オタマジャクシからカエルになるという見た目が大きく変わる成長が登場することになる。
さらにバイオームの気温設定に合わせて,カエルの肌の色は白やオレンジ,茶色に変化する。こうした成長要素は一部の樹木にもあり,マングローブのむかごを別の水辺に植えると,やがて立派な木へと育つとのこと。
湿地帯を自作する場合には「泥」(Mud)のブロックが必要となり,これは「土」(Dirt)と「粘土」(Clay)から作り出せる。土ブロックにウォーターボトルで水を合わせると「泥」になり,これを「鍾乳石」(Dripstone)に通すことで粘土になるとのこと。泥の上を歩くと,プレイヤーキャラクターは多少沈み込むようだ。
湿地帯のフィーチャーに合わせて,チェスト付きのボートも新しく加わり,さらに多くのアイテムを運べるようになる。また,小さなブロックでホタルが表現され,これはカエルの好物となる。
なお,今回のイベント開催中のコミュニティの投票により,The Wild Updateには「Allay」というモブが追加されることが決定している。
・最深淵バイオーム「Deep Dark」が公開に
数年前から開発チームが存在を示唆していた,世界の最も深い部分となるバイオ―ム「Deep Dark」は,The Wild Updateの一部として公開される。Deep Darkには古代遺跡の名残りが広がり,新たに「スカルク」(Sculk。“隠れる”という意味を持つ)ブロックが存在する。真っ黒なテクスチャの中に,いくつかの青白い光を放つ斑点が見られる不気味な印象だ。
Deep Darkには,スカルクで構成される強敵モブ「ワーデン」(Warden)が巣食っている。光の届かない場所なので目はなく,プレイヤーキャラクターの足音や物音に反応するという。音を出さないように移動したり,矢を放って別の場所にワーデンの気を逸らしたりして,やり過ごすことができるようだ。
極めてパワフルなモブであり,直接対決は避けたほうが賢明らしく,ラルソン氏も「これまでになかった,ドキドキするスニークプレイを楽しむため」の要素であると述べた。胸のあたりの青白い光は鼓動を示しており,落ち着いているときはゆっくりと点滅しているが,何かに気づくと速度が上がり,怒り始めると点滅が増していくとのこと。これを確認しながら,ワーデンに対処するとよさそうだ。
Minecraft Dungeonsのアップデート
・新要素「シーズナルアドベンチャー」が登場
現在,Minecraft Dungeonsではハロウィンイベントが開催中だが,今年12月に定期イベント「シーズナルアドベンチャー」が始まることが発表された。これは,1週間ごとに更新されるウィークリーチャレンジを達成して,アドベンチャーポイントを溜めていくというもの。シーズンごとのポイント獲得状況がプレイヤーのランクとして加算される。
ただし,UXデザイナーのJohn-Philip Johanson(ジョン・フィリップ・ヨハンソン)氏は「プレイヤーの思うように楽しんでもらうのが狙い」と述べ,ランクを上げることだけが目的ではなく,各自のペースで楽しんでもらいたいという。
また,ポイントを溜めていくと特別な報酬を受けとれるようだ。その内容はキャラクタースキン,マント,ペット,エモート,そしてモブを倒した後やレベルアップ時に表示される“フレア”のバリエーションなど。ゲームプレイに直接関係しない“コスメティック”のアイテムだけでなく,エメラルドやゴールドなどを獲得することもできる。
なお,オプションとして,各シーズンのアドベンチャーパスを購入することで,より良いアイテムが手に入るとのこと。シーズンを途中で止めて,次のシーズンにアクセスした場合には,それまでの獲得ポイントを持ち越して利用することもできるという。
・シーズン1は「Cloudy Climb」。天空にそびえる塔を駆け上がれ
シングルプレイ専用となるシーズナルアドベンチャーでは,ハブを使ってチャレンジの達成状況や,無料アイテムとプレミアムアイテム(パス購入者向け)の情報を確認することになる。
最初のシーズンは「Cloudy Climb」と名付けられており,専用マップ「The Tower」が公開予定だ。何層ものダンジョンが重なるように存在し,その一つ一つを攻略しながら天空高くそびえる塔を登っていく。ダンジョンはテーマに沿って雰囲気が異なり,数分程度で攻略できるような広さになっているようだ。
なお,ヨハンソン氏によると,The Towerでは初期状態のプレイヤーキャラクター“タワーアバター”を使うことになり,ダンジョン内に点在するアイテムで装備を充実させていくとのこと。モブがアイテムをドロップすることはなく,特定の地点で入手するそうだ。
マップの構造はグローバルで同じものになっている。階層の数は明らかにされていないが,すべて攻略すれば良いアイテムを獲得でき,失敗したときはそれなりのアイテムになるだろう。また,2週間ごとにマップのリフレッシュを予定しているのとことだ。
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10年近く,大人から子供までに愛されているMinecraft。スピンオフのMinecraft Dungeonsと共に,今後もさらなる成長を続けていくだろう。Minecraftをしばらくプレイしていない人も,まだMinecraft Dungeonsを始めていない人も,アップデートを機にマイクラの世界に足を踏み入れてみてはいかがだろう。