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ヒューストンに拠点を置くThirdAI(サードAI)という企業は、GPU(グラフィックス・プロセッシング・ユニット)のような特殊なハードウェアを必要とせずに深層学習技術を高速化するツールを構築している。同社はシード資金として600万ドル(約6億6000万円)を調達した。

Neotribe Ventures(ネオトライブ・ベンチャーズ)、Cervin Ventures(セルヴァン・ベンチャーズ)、Firebolt Ventures(ファイアボルト・ベンチャーズ)が共同で主導したこの出資は、従業員の増員とコンピューティングリソースへの投資に使用すると、Third AIの共同創業者でCEOを務めるAnshumali Shrivastava(アンシュマリ・シュリヴァスタヴァ)氏はTechCrunchに語った。

数学の素養があるシュリヴァスタヴァ氏は、もともと人工知能や機械学習に興味があり、特にAIをより効率的に開発する方法について再考していた。それはライス大学に在籍していた時に、AIでディープラーニング(深層学習)をどうやって実行するかについて検討したことがきっかけだった。そして2021年4月、同氏はライス大学の大学院生たちとThirdAIを起ち上げた。

ThirdAIの技術は「深層学習へのよりスマートなアプローチ」を目的に開発されたもので、大規模なニューラルネットワークを学習させる際に、アルゴリズムとソフトウェアの革新的な技術を用いて、汎用の中央処理装置(CPU)をGPUよりも高速に機能させることを目指していると、シュリヴァスタヴァ氏はいう。多くの企業は何年か前にCPUを放棄し、高解像度の画像や動画をより迅速に同時レンダリングできるGPUを用いるようになっている。しかし、GPUにはあまり多くのメモリが搭載されていないため、ユーザーがAIを開発しようとすると、ボトルネックになることが多いとシュリヴァスタヴァ氏は語る。

「深層学習の状況を見ると、技術の多くは1980年代から使われているものであり、市場の大部分、約80%がGPUを使用し、高価なハードウェアと高価なエンジニアに投資して、AIの魔法が起こるのを待っているのです」と、同氏は続けた。

シュリヴァスタヴァ氏と彼のチームは、将来的にAIがどのように開発されていく可能性が高いかを検討し、GPUに代わるコストを抑えた方法を生み出したいと考えた。彼らのアルゴリズム「サブリニア・ディープラーニング・エンジン(劣線形深層学習エンジン)」は、専用のアクセラレーション・ハードウェアを必要としないCPUをGPUの代わりに使用する。

Neotribeの創業者兼マネージングパートナーであるSwaroop “Kittu” Kolluri(スワループ・”キットゥ”・コルリ)氏は、この種の技術はまだ初期段階にあると述べている。現行のやり方は手間とコストと時間がかかる。例えば、より多くのメモリを必要とする言語モデルを実行している会社では問題が発生するだろうと、同氏は続けた。

「そこにThirdAIの出番があります。今までできなかったことが可能になるのです」と、コルリ氏は語る。「それが、我々が出資しようとした理由でもあります。コンピューティングだけでなく、メモリも含めて、ThirdAIの技術は誰でもそれができるようにします。ゲームチェンジャーになるでしょう。深層学習に関する技術がもっと洗練されるようになってくれば、可能性は無限に広がります」。

AIはすでに、ヘルスケアや地震データ処理など、最も困難な問題のいくつかを解決する能力を備えた段階にあるが、AIモデルの実行が気候変動に影響を与えるという問題もあると、同氏は指摘する。

「深層学習モデルを訓練することは、1人で5台の自動車を所有するよりもコストがかかります」と、シュリヴァスタヴァ氏は語る。「AIの拡大に向けて、我々はそういうことについても考える必要があります」。

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カテゴリー:人工知能・AI
タグ:ThirdAI人工知能深層学習資金調達機械学習

画像クレジット:Jeff Fitlow/Rice University

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(文:Christine Hall、翻訳:Hirokazu Kusakabe)